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レーンの設計は結局セシリオ様とボブ、ランビット、ペペ君の4人が雁首揃えて長時間話し合って描き上げてくれた。
私の方はダンテスさんからお返事を貰って土曜の午前中にスイカズラ工房へ行く事になった。
行きも帰りも大公様ん所の馬車を出してもらえるとのことで、移動の足も用意してもらってありがたいことだ。
最近、授業の合間、教室棟の廊下が賑やかだ。
特に女生徒たちが数人ずつで固まって話しており何事かと思っていたら、マリベルとナナの会話で理由が判明した。
イベントクラブ開催のダンスパーティの内容が廊下に貼り出されたらしい。
全校生徒対象でダンスパーティが開催されるらしい。
学食を会場とし、服装は制服またはダンスパーティに相応しい物をと決められており、婚約者が学園外に居る場合は参加可能だが、それ以外の参加者は学園生徒に限るという内容だった。
会場を学食にしたのは講堂だと狭いし、入園式などを開催した大広間は何とか全生徒が中に入る事が出来たとしても人数に比べスペースが狭いのでダンスは出来なくなる。
そこで一番広い場所ということで学食が会場となったらしい。
イベントクラブに所属しているマリベルが自慢げに言うには、当日のダンスミュージックは学園の音楽クラブが担当するらしい。
ということは音楽クラブの面々はダンスができないのでは?と思ったのだけれど、あややクラブと違ってクラブ費は一律学園から各クラブへ支給される年間活動費しかないので、苦肉の策で低料金で音楽クラブをお願いしたみたいだ。
食べ物はなく飲み物だけ販売する形にするそうだ。
「私は黄色のドレスを今作ってもらっているのよ。金色と深緑のリボンが印象的なのよ~」と嬉しそうに廊下で話しているマリベル。
何故、彼女だけでなくたくさんの女学生が廊下にいるのか・・・・。
どうやらダンスパーティのパートナー探しの一環らしい。
女の子から誘うより、男子から誘って欲しいという女ごころの表れなんだとか・・・・。
「ねぇ、リアはどんなドレスにするの?」
「そういうメグはどうするの?」
「う~ん、今から用意して間に合うかなぁと思って・・・・」
自慢じゃないけど、私達二人はお裁縫は下手なんだよね。
「裁縫クラブの人たちはもういっぱい仕事を請けてるでしょうしねぇ・・・・」
「だよねぇ。リアの言うゴスロリで参加する?」
「う~ん、あれは踊るのに向いてるかなぁ?ってか、私ダンスは苦手だから踊る気はないんだけどね」
「あはははは。うん、リアは踊りが苦手だからねぇ、さもありなんだよ」と勇者様がニヤリと悪い笑顔を浮かべた。
どうせ私は運痴ちゃんですよと頬を膨らましたら、そこを勇者様の人差し指で突かれてしまった。
正直言ってダンスが苦手な私にとってはダンスパーティはあまり楽しみでは無いんだけど、勇者様はやっぱり女の子、王子様の様なキラキラしい男子にエスコートされて王女様の様な服を着て踊りたいという夢がある様だった。
ドレスをどうするか・・・・今考えても発注出来る所がなさそうでどうしょうも無いけど、今考えなければどうにもならない。
でも、すぐにこれはと言う答えが見つからないまま、あややクラブの部室へ。
私にとってはダンスパーティより今日初めて作ってみようと思っているマシュマロの方が気に掛かっているのだ。
マシュマロは材料さえあれば作るのが難しいお菓子では無い。
しかも、出来上がった物を炙ればトロロンとして美味しくなる。
そこにチョコまで混ぜちゃった暁には、もう頬っぺたオチオチの美味し~いおやつが出来るはず!
ふふふふ♪
マシュマロ、頑張って作ろう!
部室に入ると先にアドリエンヌ様が来ていた。
それ自体は珍しい事では無いのだけれど、2階のテラスではなく1階のダイニングテーブルに座って誰かを待っている様子が珍しかった。
もしかしてダンスパーティで闇王様にエスコートしてもらいたいとかで彼が部室に来るのを待っているのかな?
「あっ!」
私たち二人を見て、アドリエンヌ様が笑顔を浮かべた。
「「こんにちは~」」
「ごきげんよう」
「誰かを待ってるんですか?」
おい!勇者様、相変わらず君は直情的だなぁ・・・・。
「ええ、あなたたち二人を待ってたのよ」
「え?私達を?」
勇者様、心底驚いたみたいだけど、私もめっちゃ驚いた。
アドリエンヌ様が私達を待っていたって、お腹でも空いちゃったのかな?
「しょう。今度のダンスパーチィ、あなたたちもうドレシュは作ったの?」
「いえ、今それで頭を悩ましてたんです。アドリエンヌ様は作られたんですか?」
「いえ、私もこれからでしゅ。で、できたら3人でおしょろいのドレシュを作りたいなぁって・・・・」
「おおお!いいですね。3人でお揃い!嬉しいです」
「でも、アドリエンヌ様、王都のドレスメーカーはどこももう注文をいっぱい抱えていて、さっきメグとも話していたんですけど今からの発注は請けてもらえないんじゃないかなって」
「大丈夫でしゅわ。ウチのお針子たちに縫わせるので」
「「おおおお!」」
高位お貴族様ともなると、自分の家の中にお針子さんがいるのかっ!
三人で雁首揃えて、どんなドレスにするか話し合っている最中、いろんな話題に触れていて分かったんだけれど、お針子と言うよりはプロ並みに裁縫の上手なメイドさんって言うのが正解みたい。
それにしても、そういう人が常に身近にいるって便利だよね。
さて、どんなドレスにしますかね?




