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「ところでリア、今週末ウチの工房に来てもらえないかな?時間はそちらに合わすから」
「ん?ボブが話があるの?それともボブパパ?」
「ウチのオヤジが今後の事で話し合いたいって」
「え?今後?じゃあ、ランビットも出席してもらわなくていいの?」
「あ、いや。今回は僕たちだけでよろしくって言ってたよ」
ランビットが将来何処で働くかについての話し合いなのかな?それとも別の話題?
あややクラブのキッチンで私が一人で調理している所に珍しくボブが来て週末の予定を合わせた。
ちょっと声を落としてるってことは周りに聞かせたいわけじゃないってことなのね。
まぁ、もしランビットをスイカズラ工房でも就職させたいと思っていたら、ウチで働いてもらうには一度ちゃんと話し合いをしないといけないので、この週末工房へ行くのは良いんだけど、これってダンテスさん案件じゃないのかな?
「ボブ、この週末、ボブん家の工房へ行くのは良いんだけど、もしかしてダンテスさんが一緒の方が良い感じ?」
「う~ん。ウチの工房がこれから大公様のホテルの仕事をどれくらい貰えるのかって言う話でもあるから、もし、都合が付くならダンテスさんも一緒の方が良いかも?」
「分かった。じゃあ、私はダンテスさんに合わせるから、まずメッセンジャーボーイにダンテスさんに私からの手紙を渡してもらうね、で、ダンテスさんから直にボブ父に返事してもらう事にするよ」
「うん、ありがとう」
私は、おやつをちゃっちゃと作って直ぐにダンテスさんに手紙を書いた。
メッセンジャーボーイを呼びつけるのは、あややクラブの前に立っている闇王様ん所の使用人に言付けて、使用人さんからメッセンジャーボーイさんに渡してもらう事にした。
実は賄賂として今日のおやつのジンジャークッキーを少し包んで渡したので、使用人さんはホクホク顔だった。
玄関前にはいつも二人立ってくれてるので、賄賂は二人ともに渡しておいた。
手紙を託したら直ぐにひよこクラブの面々が来た。
これから魔法障害物競争についての会議なのだ。
だから錬金術クラブで忙しいボブも来ているし、私もおやつを作り終わったとしてもメッセンジャーボーイの所へ行くわけにはいかなかったのだ。
「いらっしゃ~い」
「おじゃましま~す」
ワイワイガヤガヤひよこクラブの面々が作戦本部へ入り、適当に座ってくれた。
ボブが2階にいたみんなを呼んで来てくれている間に、私は勇者様やアドリエンヌ様の手を借りておやつを運んでいた。
「うわぁ、これ何のクッキーですか?」
「ジンジャークッキーよ」
「この色のついた飾りって何て言うんですか?」
「アイシングって言うのよ」
「お人形さんのボタンとか服の模様になってるんですね。何か可愛い」
「でしょう?」
まだ、私のおやつに慣れていないひよこクラブの面々は毎回おやつを見て、色んな感想を言ってくれる。
あややクラブのみんなはリクエストはするけれど、もうある程度私のおやつに慣れて来ているのか、あんまり驚いたり感想を言ってくれないので、ひよこクラブのみんなの反応が何か嬉しい。
全員が揃うまでお預け状態でひよこクラブと闇王様と一緒に作戦会議室で待っていると、程なくして2階のみんなが降りて来た。
「よし!皆揃ったな。では、会議を始めるぞ」
闇王様の一言で会議が開始した。
それと同時に皆おやつに手を出していた。
「新学期が始まったので、何時頃練習用のレーンを作るかを考えないといけないと言うのが今日のテーマだ。実際に造ってみると頭で考えていただけでは思いもよらない問題が出てきたりするから、作るのは早目の方が良いと思うんだが、皆の意見はどうか?」
全員が早めにレーンを作る事には賛成なのだが、実際に造るとなると部員で作るのか、それとも必要な属性の魔法を使える誰かを雇うのかという問題があった。
でも、闇王様は最初から誰かを雇う心算だったらしく、平民メンバーが自分たちで作るつもりだった事と正反対な発想だったため、メンバー間で少しズレた会話が続き、最終的に外部委託する事に決まった。
安全を考慮するなら学生の覚束ない魔法ではなく、ちゃんとした大人のプロに頼んだ方が、思ってもみない所が後になって崩れた等の不具合が起きないだろうと言う闇王様とセシリオ様の意見に、皆が右に倣えしたからだ。
だって、安全性の確保は大事だもん。
「それでアドルフォ様、それら魔術師を雇うお金は鳥人コンテストの時の利益からですか?」
「そうだ。学園側には既に申請してあるから心配するな」
フェリーペが心配そうに聞いたので、闇王様は安心させる様に答えていた。
しかし、鳥人コンテストってそんなに儲かったのかぁ・・・・。
私が思う様な事は他の子も考える訳で、ペペ君が「鳥人コンテストってそんなに儲かったんですか?」と闇王様に聞いちゃったんだけど、この子、結構怖い物知らずかな?少しウチの勇者様入ってる?
「ああ、飲食店等の出店料と、観客の入場料が可成りの金額になっているんだ。もちろん経費もそれなりに掛かっているけど、収益に比べたら微々たるもんだ」
「うわぁ。楽しくて皆が喜ぶ事をして、その上に大金を儲ける事ができるって夢の様ですね」
「ああ、ドッジボール大会は経費はあまり掛からない代わりに儲けもない。でも、鳥人コンテストは学生だけではなく王都の人間を巻き込んでの入場料だからな、それなりに儲けがあるんだ」
「僕、将来はこういうイベント関係の仕事に就きたいです」
おおおお!ペペ君、是非起業してイベント会社を作ってくれ~。
そうしたらウチのホテルでの催し物を任せるからぁぁ。
昨日、予約掲載の日付を間違ってアップしている事に気付き、急遽ストックしていた24話分、全部日付の変更をせねばならず、ヒーハー言いながら何とか訂正を終わらせました。
昨日、いつもの時間にアクセスして下さったのにアップできていなかったこと、心よりお詫び申し上げます。
引き続き、拙作をどうぞよろしくお願い致します。




