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ホテルの中身を考えるのはとっても楽しくて文字数が増えまくりました。
本日は少し長めです。
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モリスン村は隣が放牧業の盛んなヤマルダ村なのだが、モリスン村辺りまで放牧地が続いている。
ただ、家畜独特の臭いがしない様に、モリスン村の建物がある所から見える部分は放牧禁止となっている。
もちろん、高級ホテル フローリストガーデン モリスン店の周りにも放牧地は無い。
ウチのホテルの敷地は広いから、元々のモリスン村から見えない部分も少しだけあったので、その部分に関しては放牧地を買い上げたからね。
臭いの問題は無い。
でもその分、荒野が広がっている様に見えるので殺風景なのだ。
もちろん、ウチのホテルの敷地内には広い庭園があるので大丈夫なのだが、それにしてもナイトル村の様に湖がある訳でもないので、その分建物の内装を豪華にしてみたのだ。
床にはカーペットが敷き詰めてあるし、上の階に上がってカジノへ入ると、天井がイギリスのカーディフ城の天井装飾の様に金ぴか!とってもゴージャスなのだ。
あれだね、パ〇ンコの電飾の様に派手な方が射幸心を煽っちゃう気がするんだよね。
私としては最初、高級ホテルのイメージはドイツのシュヴェリーン城の天井画の様な、どっちかっていうと優雅な天井装飾をイメージしていたんだけど、うん、カジノならデ・フピテル工房が提案してきたこっちのデザインの方がしっくり来るね。
さすが餅は餅屋、デザインとかは美術工房の方が何倍も上手だね。
本館から庭園に出た所にはウッドデッキを設置し、そこにお洒落な魔石で点灯できる街灯を何本か立て、外で飲めるようにバーを設置している。
そのすぐ横には足湯の様に座って足を水に浸ける事ができるミニプールみたいな物を造り、そこに水がある事でちょっと良い感じのムードが演出できると思う。
客室はスイートタイプが殆どで、一部スイートだけでは入りきらないメイドたちが泊まれるツインルームもある程度は造ってある。
御者は厩舎の上で寝てもらうので本館の裏側になり、庭園の奥にある別の建物が社員寮になるのだ。
まぁ、社員寮は、ホテルからは庭木が邪魔をして見えない様に工夫してあるけどね。
ホテルの本館で必要なガラス、御者が泊まる部屋や社員寮の窓ガラス、温室のガラスまでスキルでじゃんじゃん呼び出す。
正直言って可成りの魔力を消費する。
午前中に到着してから結構な数を呼び出しているけど、午後からもまた呼び出さないと追いつかない。
一度昼寝をして魔力を回復もさせたいし夕方まで掛かりそうと言うことで、モリスン村の既存の宿に部屋を取った。
本来は同業他社になるのだろうけど、客層が違うのでそこまで競合はしないだろう。
でも、1軒だけ今まで貴族を泊めて来た宿屋があるので、そことどうやって良い関係を構築するかが問題なんだよね。
ダンテスさんが言うには、カジノの客で一杯になるので、普通に移動をする貴族はウチのホテルでは収納できない可能性があるとのこと。
そういう場合には、今まで通りモリスン村にある貴族も泊まれる宿屋に泊まり、食事だけはウチのホテルでって事になりそうだとのこと。
まぁ、それなら既存の宿の売り上げをかすめ取る事にはならないのかな?
どっちにしても開業してみるまではどんな状況になるか分からないので、今から心配してもしょうがないかもしれない。
でもね、他の業者の仕事を無理矢理奪うのは出来たら避けたいんだよね。
こんな辺鄙な田舎では、仕事もそんなに無いだろうから売上げを奪っちゃうのはちょっとね・・・・。
結局、私のスキルでガラス呼び出しは夜まで掛かり、ヘロヘロになって宿で寝て、翌朝は早い時間に出発と相成った。
私は半分寝ぼけ眼だったけど、馬車のスプリングが地球程良くないので体を思いっきり揺さぶられる事と同じなので、数分馬車で移動するとすぐに目が覚めた。
ガルフィールドさんは車窓から外を眺めながらも、ダンテスさんにカジノについてしきりに質問をしていたのが印象的だった。
ヤンデーノまでの街道は道があまり整備されていないので、揺れがいつもより酷い。
なのでこの区間は他の区間よりも、より切実に鉄道が欲しいのだ。
そんな事を話したりしながら数日を掛けて移動していたら、前方にヤンデーノの街の城壁が見えて来た。
ここで工事しているホテルも可成り工事が進んでいた。
モリスン村の工事にかかっていた作業員は、今ナイトル村へ順次移動していると聞いていたけれど、ヤンデーノの方にも来ているのかとダンテスさんに聞いたら、ヤンデーノはタイルなど普通では使わない建材を多用しているので、それらの建材を使い慣れた大工たちを使っているので別チームなのだそうだ。
ヤンデーノのホテル、中庭が凄い事に!
この世界にしたら珍しい5階建ての建物。
ロの字の建物で、正面玄関の両脇には申し訳程度の庭があるのみ。
正面玄関で降りる為に馬車で入るU字路はウチの他のホテルと比べても極端に短い。
メインの宿泊棟の直ぐ横に馬車の駐車場があり、その中に馬房とその上の階は御者の寝泊まりの為のスペースとなっている。
メインの建物の裏に馬房を作れなかったのは城壁内で買い入れた土地が狭いからで、馬房をホテルの裏に造ってしまえば、馬車をそこまで誘導する道まで造らねばならず、そんなスペースが取れなかったのだ。
まぁ狭いと言っても田舎の土地が余っている所のホテルと比べてというだけであり、普通の宿屋に比べればその敷地は相当な広さなんだけどね、金持ち用のホテルって無駄にスペースが必要なんだよ。
一旦建物の中に入ると、正面に豪勢な幾何学模様のタイルが貼り付けられた壁を背にしたレセプションがあり、その横にはパティオへと続く大きな一枚ガラスの扉が入る予定。
もちろんガラスはこれから私がスキルで呼び出すので、そのスペースはぽっかり空いてるんだけどね。
パティオのキラキラしさが、その一枚ガラスを通してしっかり客の視線に入る様に設計してあるのだ。
パティオでガラスが使われるのは、客室の窓ガラスと、出入りの為の大きな一枚ガラスの扉2箇所だけだ。
パティオの腰の高さまでのタイルや、床のモザイクの多彩色がガラス扉の手前からチラ見出来てなんとも言えず綺麗だ。
実は4階にある空中庭園の強度に問題があり、建物内側のロの字に開いた空間に十字路の様に渡してある通路の真ん真ん中を小さな広場の様にして、そこに円形の噴水を設えた。
その真下に地球のゴシック様式の教会の様に太い円柱形の柱を作って支える事にしたのだ。
4階の空中庭園は他のホテルの噴水と違い、噴水のバックとしての彫像ではなく、噴水の中に彫像を設置し、噴き出た水はその太く長い円柱を伝って1階まで落としているのだ。
小さな滝とも言えない僅かな水量なのだが、涼し気に見えるので怪我の功名だ。
冬の間は、円柱に水を這わす事はしないが、それ以外の季節は水は流しっぱなしにする予定。
1階にはロビーがあり、カードルームがある。
2階から4階までが客室で、5階が食堂だ。
食堂の壁は腰から上の高さから天井までが大きな強化ガラスになっている。
もちろんロの字全体を1枚のガラスでと言う訳にはいかないので、ところどころ柱で区切ってあるし、厨房には普通の大きさの窓しか付けていない。
それでも建物の3面の殆どはガラス張りで、レストランに入ると同時に眼下に広がる港町の風景を楽しめる様になっている。
ゴージャスでしょ?




