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前出の章に既にシャンデリアが出て来ていたのに、本話ではシャンデリアがこの世界には無いと書いており矛盾が生じましたので、こちらの方を訂正させて頂きます。
結構うっかり事故があるなぁと至極反省しております。
「こりゃぁ、たまげた!」
ガルフィールドさんはあんぐりと口を開けて、建設途中の豪華なホテルを見て呟いた。
「うわぁぁ、すごい!」
思わず私も呟いてしまった。
だって、こちらの世界には錬金術だの魔法だのがあるせいか、工事の速度が異様に早いんだもの。
モリスン村の高級ホテルは可成り工事が終盤に近付いていて、今までここで作業していた大工さんの多くは既にナイトル村へ移動しており、そこで工事作業員たちの宿舎を建てたり、ホテルそのものの基礎工事に入っているとダンテスさんが説明してくれた。
建物も可成り出来ているにも関わらず、窓ガラスの部分だけ何も入っていなかったり、内装に手を入れている最中なので工事中と言う印象を受ける割には工事の人の数が少ない様に見えた。
造園の方は、形は割と直ぐに出来るみたいだけど、草木が育つのに時間が掛かるから、まだ植えられている植物に花が咲いたりはしてないし、葉っぱが青々としているという感じでは無い。
木の幹だって完成された庭の絵より、若干細い感じに見える。
オープンまでには育って丁度良い感じになるのかと思っていたら、「アウレリア、木って言うのは本当に時間が掛かるんだよ。オープンから5年くらいで漸く落ち着いた庭園になると思っといた方がいいぞ」と父さんに言われた。
私の『食材育成』スキルを使ってみようかと思ったら、「アウレリア、それって食べられる実が生らない木とかは対象外になったりしないか?」と父さんに言われ、その可能性がある事は排除できないので躊躇してしまう。
「私のスキルと樹齢を計算して樹木を買っているので、あの木は予定より早いけど、こっちは遅いってなると不揃いな庭になるから、一括して育成促進できないのなら何もしない方がかえって良い」と父さんに言われてしまえば、スキルを使うなんて出来なくなっちゃった。
庭に関してはプロの父さんがそう言うのなら、しょうがない。
「でも、ちゃんとオープン時から貧弱には見えない様に頑張るからな」とも言ってくれたので、庭の草木に関しては父さんにお任せだ。
モリスン村はカジノと肉や乳製品がメインで、景色がメインになる訳ではないので、大きな一枚ガラスは食堂くらいだが、カジノのステンドグラスや客室の窓ガラスもスキルで呼び出す事になっている。
もちろんモリスン村で提供する食材を育てるための広大な温室分のガラスや従業員寮の窓ガラスも必要だ。
ステンドグラスの方は、土台となるガラスだけ私が提供するのだが、それをカットし色を付け、間に金属を這わせハンダ付け状態にするのはボブん所のスイカズラ錬金術工房にお願いしている。
下絵は絵画工房にお願いしたのでそれを元にスイカズラ工房で設計図を引き、スイカズラ工房の職人が錬金術の装置と設計図を現場に持参してナイトル村の宿に泊まりこんで仕上げてくれる事になっている。
色の浅黒い背の低い職人は、以前に何度かスイカズラ工房を見学させてもらった時に会った事のある人で、向こうも私の事を覚えてくれていたのだろう、私を見掛けると軽く会釈してくれる。
もちろん私も会釈で応える。
「スイカズラ工房のアッシュと申しやす。今回はウチの工房にこんな大きな仕事を回して下さって、ありがとうございやす」とダンテスさんに挨拶していた。
まぁ、施工主は大公様だし、こんな幼女が現場で指揮を執るとは思わないから、父さんよりも身なりの良いダンテスさんへ必然的に挨拶しちゃうよね。
彼には他にもカジノの色んなモノを作ってもらう事になるので、しばらくナイトル村から動けないはずだ。
そうだ!カジノや食堂の気取ったランプやシャンデリアの絵と設計図を持って来ているので、忘れずに渡さないとだね。
ランプの設計図の方はランビットがアルバイトしてくれたよ。
ボブに頼もうかとも思ったんだけど、お土産用のクッキー缶造りもしてもらってるし、チップ造りのお手伝いもしてもらってる。
その他にも錬金術クラブの部長としてアレコレやらなければならない事があるみたいだったので、ランビットにこの仕事を振ったんだけど、お小遣いが貰えると喜んでくれたよ。
カジノって豪華なイメージなので、天井にはシャンデリアって私の中では決まってるんだよね。
だから錬金術で土台を作って、それにガラスがいっぱい付けて贅沢なシャンデリアを作る事は決定事項なのだ。
でも、こちらのガラスは濁りが多少入ってしまうので、ガラスパーツは私のスキルで綺麗で透明なガラスを呼び出した物になる。
こんな風に考えたら、食器類も入れてしまうとガラス製品を多用するホテルになりそうで、イコール、私のスキルで呼び出さなければならないモノが多いって事かぁ・・・・。
まぁ、ガラス食器は開店直前に造るので、今回は呼び出さないけどね。
何にせよ、5軒分だもんね。
ヤンデーノのパティオ、ガラスを多用するのではなく、タイルにしたのは我ながらナイスだ。
だって、タイルは私のスキル使わなくても調達できるもんねぇ~。
エコだよ、エコ!
魔力節約!
仕事は少ない方がありがたい~。
建物そのものが可成り出来上がっていたので取り敢えず入口から中へ入ると、広いスペースの奥にレセプションのデスクが既に据え付けてあるんだけれど、その上が吹き抜けになっていて太陽の光が燦々と入っている。
もちろん、この吹き抜けの大きな空洞にもガラスを嵌めないといけないので、私のスキルで大きな一枚ガラスを呼び出しますよ。
ってか、自分で設計しておきながら、この吹き抜けのガラス窓の事忘れてたよ・・・・。
やっぱり現場を見ないとダメだね。
しかし、何が圧巻かと言えば、レセプションの背にあたる壁には大きな壁画が・・・・。
エル・グレコ風な絵画がなんとも高尚な雰囲気を醸し出している。
「ダンテスさん、この吹き抜けにもシャンデリアを吊るしましょう。できたら、そのシャンデリアの高さも調整できる様にしたいです」
「おお!いいですね。ではそのシャンデリア分のガラスもお願いしますね。シャンデリアそのものはカジノの方を組み立てる工房に一緒に頼んでおきます」と、ダンテスさんがカジノ用シャンデリアの小さなガラスパーツの入った箱をスイカズラ工房のアッシュさんに渡していた。
実は時間短縮の為に王都に居る時からちょくちょくスキルで呼び出し溜めていたいのだ。
しまった!言い出しっぺは自分だけれど、仕事量を増やし自分で自分の首を絞めた事に思わず肩がガクっと落ちてしまった・・・・。
「はぁ~」と相変わらず意味不明な溜息を吐き出しているガルフィールドさん、「フローリストガーデン 光でさえ、とてつもなく豪華だと思っていたが、こりゃ桁違いだな。お貴族様しか泊まれないんじゃないか?」なんて元から顧客が貴族である事を知らなかったのか方向違いな意見を言っていた。
「こちらの高級宿は、ガルフィールド様がおっしゃる様に貴族を顧客として建てる様、大公様からアウレリア様に出された宿題なのです」とダンテスさんが説明していたよ。
H様、ありがとうございます。大変助かりました。
これからも本作をどうぞよろしくお願い申し上げます。




