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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
翡翠色の章 <後半>
356/554

24

 翌日朝一でスイカズラ工房へ。


「ねぇ、ボブ。このボウルを素材として、この設計図の様なチップを作りたいんだけど、できるかな?」

「ん?この色のまま素材として使いたいってこと?」

「うん、ここの色指定の部分をこのボウルで、それ以外の所を金属で作りたいんだけど・・・・」

「ふむ。このボウル?軽い素材だね。僕、見た事ないや」

「うん。新しい素材なの。でもね、この形でしか作れないから、これを素材に別の物が作れるかどうか知りたいんだ」

「う~ん、ちょっと待って、オヤジに聞いてくる」


 暫くして戻って来たボブによると、このままでも素材として使えるけど、小さく粉砕した方が良いとのこと。

 で、試しに黄色のボウルで作ってみてもらったら、表面にもかなりの金属部分があるため、手に持った時に結構重たく感じる。

 これではちょっと使い辛いよね。

 だって、カジノで賭けをする人たちはチップを何枚も手に持って移動するんだもん。

 これは黄色一色だけでなくデザインをちょっとだけ複雑化させ黒と灰色のプラスチックも使って作ってみようかな?と思い、スキルで呼び出した黒いボウルと灰色ボウルを手提げかばんの中から、さもそのかばんから取り出した様にしてボブに渡した。


 恰好良いシャープなデザインで艶やかで色鮮やかなチップが出来ただけれど、これだと軽すぎるのだ。


「ねぇ、リア、何か納得いってない感じ?」

「うん」

「何が不満なの?」

「重さぁ~」

「どうしたいの?」

「少しだけ重たくしたいの。色の鮮やかさはこのままでだけどね」

「なら、外から見えない内側に金属を入れたらいいんじゃないの?」

「!!」


 早速、まず鉄で小さな塊を作り手に載せ重さを量り丁度良い大きさを探る。

 鉄の塊の大きさが決まったらそれに合わせて設計図を描き直す。

 そうしたら、メダルの中心部が明るいグレーで黒字で100と書いてあり、中心部の切り替えから外側が鮮やかな黄色でところどころに黒とグレーで放射線状に模様が入った高級そうなチップが出来上がった。

 重さもしっくり手に馴染むかんじ。

 5枚幼児の手で持ってもそんなに重たくないが、風が吹いても飛ばされないくらいには重い。


「これーーー!ボブ、これだよ、これっ!」

 ふふふふとニヒルに笑った後、ボブは「なら、良かったよ。で、これウチに何枚発注してくれるの?」と将来、このスイカズラ工房を引き継ぐ後継ぎとして、早々に商売の話に持って行くあたり、お主も悪よのぉ~なんて思っちゃった。


 結局、黄色が100のチップで1万枚、赤が50のチップで3万枚、緑が10のチックで10万枚の発注となった。

 日を改めてボウルを納品するのは面倒なので馬車に戻り、せっせとスキルでカラフルボウルを呼び出し、木箱に入れ納品致しました~。

 流石に工房でそれをやっちゃぁ目立つので、大公様から回してもらっていた馬車があって本当に助かりましたっ。


 これでチップ問題は終わりだね。

 明日から各ホテルの工事現場へ行くので、旅の用意もあるし、今日は大人しく家に帰ろう・・・・。

 工房を出ようとするとボブ父が走って来て、「この色鮮やかな素材をウチでも他の物に使いたいので卸して欲しい」と言われたけど、それをしてしまうと偽チップ防止にならなくなるので、大公様の名前を出して丁寧にお断りしちゃいました。

 しかし、この世界の人にとってもプラスティックって魅力的な素材に見えるのねん。


 翌朝、フローリストガーデン光の門の所にダンテスさんと王都に来たばっかりの頃お世話になったメイドのカトリーヌ、大公様の精鋭ガルフィールドさんが乗った大公様の馬車が来た。

「おはようございます。どうぞよろしくお願いします」

「お願いしまーす」

 父さんが馬車の中の面々に恐縮しった様子で挨拶をしたので、私はわざと元気いっぱい挨拶してみた。

 ダンテスさんたちはクスクス笑った後に、ちゃんと挨拶を返してくれた。

 ガルフィールドさんが同席しているのは、もちろん鉄道の下見を兼ねている。


「レールだがこんな感じでいいかどうか確認を頼む」

 王都内を馬車が走り出すと、ガルフィールドさんが試作した15センツくらいに切られたレールの一部を私の前にズイっと差し出した。

 ツルッツルだ。

 これならその上を走る客車等がスイスイ進む事だろう。


「はい、これで大丈夫です。後は、同じ精度の物を同じ寸法でどれくらい用意できるかと、このレールの凹んだところに引掛ける形の車輪を作る必要があります」

「ああ。でも、レールが大丈夫と分かったから、少し気分が楽になったよ」

「後、私は詳しくはないのですが鉄だと暑い日と寒い日、場合によっては1日の間の気温変化で鉄の大きさが変わると思うのですが、レールは野ざらしになるのでその辺の対応もしないといけないのではないでしょうか?」

「!」


 ダンテスさんとガルフィールドさんが顔を見合わせ仰天した表情のまま固まっている間に、私たちの馬車は王都の北門を通り過ぎた。

「ガルフィールドさん、門の外に出たので地形の確認をお願いしま~す」

「あ?あああ・・・・。しかし、お前・・・・鉄の収縮を知っているって、最近の学園ではそんな事も教えるんだなぁ」

 いやぁ、もちろん地球で得た知識だけれど、そんな事はお口にチャーック。


 ガルフィールドさんが馬車の窓から外を見ながら、「アウレリア、さっき鉄の収縮について言ってたけれど、レールとしてはどういう対処方法があるんだ?」とやっぱり鉄の膨張が気になるみたいで、車窓から外の地形を確認しながら聞いて来た。

 まぁ、地形を見ると言っても測量している訳では無いので、障害物の有無とか取り立てて急な坂等がないかを見てるだけだと思うけどね。


「私も良く分からないけれど、レールとレールの間をほんの少し離して敷設したら、鉄が膨張、つまり大きくなっても縦に伸びしろがあるのでレールが曲がらないで済むと思います」

「ほほう。でも、レールとレールの間が開いていたら鉄道だっけ?列車だっけ?それが脱線するんじゃないのか?」

「間というのが1センツくらいなら車輪の運動に惰性が付いていると思うので、脱線する所まではいかないと思いますよ。まぁ、その辺は実験して確かめないとですけどね」

「惰性?」

「はい、今まで動いていたものが同じ動きを同じ方向へ同じ力で動き続ける事です」

「ほほう。最近の学園ではそんな高度な事を教えているのか・・・・」


 ガルフィールドさんが再びえらく感心してくれたけれど、これは前世の知識で学園とは全然関係ない。

 でも、面倒なのでこれも敢えて訂正はしないでおこう。

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― 新着の感想 ―
くぼんだところに引っかける車輪というのは誤解でしょう。 くぼみは関係なく、つばがついているだけです
線路は曲がる時の内外輪差が課題で、 そのための車輪の形とか色々ノウハウがあるんだけど、そこまでは踏み込まない形かな
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