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大公館から馬車を出してもらい、帰宅して、自室に戻ると、今度は別の悩みが私の頭の中を巡った。
そう、ズバリ、ロジスティックだ。
各ホテルで食材をどの様に入手するか。
元々、運輸の発達していないこの世界、自然と地産地消になるのはしょうがない。
そうでない物は既に各ホテルの敷地内に建設中の温室の中で育てれば良いだけだが、醤油や味噌、みりん等私のスキルでしか呼び出せない食材は各ホテルへ運搬しなければならない。
私が、各ホテルを順番に視察監督して回れば良いのだろうけど、そんなずっと移動ばっかりな生活は嫌だ。
となると、錬金術で冷蔵車や冷凍車を作り、馬に引かせるしかないのだろうか?
だって醤油とかを運ぶんなら、魚のある所から無い所に運んじゃえば一石二鳥じゃん?
ストレージのスキル持ちを雇って移動してもらう?
本当は鉄道とか作れば良いのだろうけど、それだと貴族所有の土地を売ってもらわなければならない。
どれだけの金額になる事か・・・・。
貴族には派閥があるらしいから、途中で別派閥の領主の土地を通らなければならない場合、最悪土地を売ってもらえずめちゃくちゃ遠回りになったりするかもしれない。
もし、必要な土地を全部手に入れる事が出来たとして、街道沿いであっても人が住んでない土地が延々と広がる、つまりポツンポツンと村が点在する様な土地で、動物や魔物が行きかい、それが原因で線路に物が落ちていたりしても気付かなかったりすると脱線なんて事もありえる。
ヨーロッパの田舎なんて、未だに鹿が轢かれた~、熊が轢かれた~。半日、電車は来ませんなんて事が地球でもあるのだ、こっちの世界ならもっと頻繁にそういう事が起こるだろう。
電車がちゃんと動くには、メンテナンスが必要なのだ。
私の宿題は宿屋であって、運搬ではない。
肉や野菜、そして可能であれば魚などを各ホテルの近隣で調達。
これはもう既定路線だ。
だって、そうでなければ高級ホテルだけ建てられて、面倒臭い貴族がウロウロする状態になるのに、そのホテルを建てられた村やその周辺には旨味が無い事になるからね、地産地消は外せない条件だと思う。
やっぱり馬に引かせる馬車タイプしかないかな。
ただ、馬車は舗装されていない街道を走るのだ。
それの何が問題なのかと言うと、雨期がある事だ。
雨が降った後、馬車が通ると深い轍が出来る。
馬車も1台ではない。
何台も通ればそれだけ深い轍になるし、車輪が通る所が少しズレると轍の数も多くなり、より凸凹した道になる。
スプリングが未熟な馬車、その上に平ではない道、荷物がどうなるかは火を見るよりも明らか。
う~む。
雨期は私が各ホテルへ行き、その場でスキルで呼び出すとか、ストレージで運ぶしかないかぁ。
これも今度ダンテスさんに相談しなくては。
後、冷蔵車も冷凍車もサスペンションを利かせないと、中身がはねて割れたりするものも出てくるかもしれない。
ランビットとかボブに相談してみよう。
この世界のサスペンション、どんな形なのか。
言い換えればどの様に改良できるかだ。
昼間は建築中のホテルの事で忙しくしていたり、ウチの店で研修しているコックさんたちに色々教えていたりと時間が足りないのだけれど、こうやって寝る前に自室に戻ると、他の事を色々と考えてしまうんだよね。
例えば、ホテル内にどんな感じのコンビニを作りたいかとか、それにはフェリーペにどうやって相談すればこちらの意図が伝わるか。
ミニエステサロンやカジノのスタッフを何時頃からどうやって研修させれば良いかとか・・・・。
こういうの考えるのは楽しいっちゃ楽しんだけど、それよりも肩に伸し掛かって来る責任の方が重くてちょっとシンドイ。
ダンテスさんがいなければ、二進も三進もいかないだろうけれど、ありがたい事に大公様が派遣して下さっているのでとても助かっている。
資金も心配がいらない状態だしね。
マイナス面だけを見ない様にしないとだね。
よっし、じゃあ、コンビニでは何を売るか。
バスロープにバスタオル、ハンドタオルにスリッパは絶対に必要でしょ?
こっちの世界ではそういう物は旅人が持参するのだ。
でも、持参し忘れた人用に置いておきたいし、ウチのエンブレムの入ったバスロープだと少しくらいプレミア感付かないかな?
簡単な飲み物や食べ物も置いておきたいよね。
特に、移動中に食べれる様なサンドイッチとかパイとかね。
エステで使うコスメも少しだけ置いておくのも良いかも?
シャンプーやボディソープが置いてあるだけで便利だと思う。
歯ブラシも開発しようかな?
だってこっちのって木のさきっぽをボアボアに割いた物を歯ブラシとして使ってるんだもん。
これはボブたちに相談だね。
ミニコンビニだからこれくらいでいいかな?
小さな物を入れる事ができるカバンとかもいいかも?
靴下とか下着もある程度揃っているといいかも?
いやいや、お貴族様ならメイドがちゃんと揃えているかぁ・・・・。
後はお客様からの要望をあっちこっちのホテルで拾って、徐々に品を厳選するのが一番かもね。
カジノの方の研修はどうしよう?
ルーレットの入るモリスン村に関しては、あそこのホテルの工事が終ったら、すぐにルーレット台を搬入して、あそこで研修かなぁ。
プロのディーラーは球を投げ入れる時、大体の当りを付けられるとか言うしね。
あ、体重を掛ければ床が少し沈み込む様になっているなんて話も聞いた事あるけど、眉に唾を付けながら聞いた話だし、第一こっちの技術水準では床にそんな細工が出来ないと思うからこれは却下だね。
後、トランプのディーラーは練習あるのみ?
チップは偽物を作られない工夫が必要だなぁ。




