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お寿司大作戦!
そう、大作戦だ。
この世界の人と一緒には生の魚は食べれないと思う。
いや、用意はできるよ。
安全な魚。
もちろん私のスキルで呼び出すんだけどね。
ああ、烏賊、甘えび、ウニ、鮭、そして納豆軍艦!
今直ぐにでも食べたい!
クルクル回ろうが昔ながらの職人さんの作ってくれるお寿司だろうが、兎に角握り鮨が食べたい。
後、家族や友達とワイワイ言いながら食べる手巻き寿司も食べたい!
さて、この世界の人は生の肉、卵、魚を食べる文化は無い。
ひと昔前の欧米人の様に、「あなたたち、本当に生の魚を食べるの?大丈夫なの?」って感じになる事請け合いだ。
面白いのは当時の欧米人の口から「おいしいの?」っていう質問が出ない事だ。
彼らからしたら、『食べる=死』って言うイメージで、味が良かろうが悪かろうが、食べたら死ぬんだから、味は関係ないって事なんだろうねぇ。
そう言えば、生卵もとても忌避してたよね。
日本の卵産業の様に、全ての卵の殻を洗わないからなんだけどね。
日本の養鶏業者さんには本当に頭が下がるよ。
ああ、そう言えば、卵の味は鶏に何を与えるかで決まるって聞いた事がある。
この世界の卵も美味しいけど、本当に美味しい濃厚な、黄身を箸で摘み上げても割れない卵が食べたくなった!
卵焼き、出し巻き、厚焼き、フレンチオムレツ、卵の方のトルティージャ、ふわっふわのパンケーキ三段重ねが食べたくなって来た。
トルティージャってスペインだとジャガイモと玉ねぎの入った分厚いオムレツなんだけど、中南米に行くとトウモロコシの粉や小麦粉で焼いた丸いパンの様な物になっちゃうんだよね。
同じスペイン語圏なのに、同じ単語でどうしてこんな違うモノを指しちゃう事になったんだろうなぁ?
そう言えば茶わん蒸しも大好きだけど、あれは濃厚な卵で作りたいと思った事は一回も無いな~。
まぁ、出汁で割るしね。
天ぷらの衣も、冷蔵庫で冷やした卵と水に小麦粉を混ぜて作るけど、あの時も濃厚な卵って思った事はないなぁ。
味の濃い卵料理って卵そのものの味を食べたい時だから、やっぱり卵焼きとかオムレツになるよね。
よっし!初志貫徹だ。
スキルで握り鮨を呼び出して、濃厚卵ですり身のエビたっぷりの寿司屋の卵焼きや日本酒がたっぷりと入った臭みの無いアサリの味噌汁、海産物と大好きなぎんなん入りの茶わん蒸しを作る!
今夜の賄いはコレだね。
もちろん、店の皆には握り鮨じゃなくお結びか炊き込みご飯を・・・・うっ!炊き込みご飯!
炊き込みご飯も食べた~い。
ヤバイ!全部を一度には食べ切れない。
これは今夜はお結びだけにして、来週末の賄いで炊き込みご飯だな。
キノコがいいかなぁ~
鮭がいいかな~
栗ご飯?
松茸!
鶏肉と油揚げ、人参、ゴボウの入ったホッカホカの炊き込みご飯。
あああ、炊き込みご飯もいろいろと食べたい!
グリンピースごはんだって、あああ、ご飯と言えばサツマイモ入りの茶粥も食べたい!
ほんっとうにヤバイ!
最近食べたいものが多すぎる!!!
もう秋から冬になりそうなのに、食欲だけは秋だ!
秋、サンマ!
あああああ!頭の中が食べ物の連鎖で苦しい!
苦しいよぉ。
全部を一度に食べられない・・・・。
そう言えばこの世界、秋刀魚はまだ見た事ないなぁ。
大公様の精鋭の一人、漁師のペドロ先輩に秋刀魚について訊いてみないとだね。
よし、初志貫徹!
今夜はお結び(私だけ握り鮨)、茶わん蒸し、赤出汁のアサリ汁、寿司屋の卵焼き!
もうブレないぞっ!
握り鮨はもちろん100%スキルで呼び出し。
ストレージで時間による劣化を防ぐ。
アサリ、卵、茶わん蒸しの材料、海苔とか米、全部スキルで呼び出しましたっ!
スキルで呼び出した海老を山芋と一緒に混ぜ、スキルでミキサーに掛けた状態にしちゃう。
ふっわふわの卵焼きを弱火で焼いて、網に載せた炭も使って上面もこんがり。
寿司屋の卵焼きを作っていたら、海老真薯も食べたくなっちゃった。
これも来週末だね。くくくく。
すり身繋がりで揚げたてさつま揚げもいいかも!
あっつあつで揚げたばかりで湯気が立ってるやつ。
こりゃもう絶対美味しいよね。
そして何より塩!
お結びの決め手は塩なのだよ!!!
塩が美味しくなければお結びは美味しくないのだ(当社比)。
もちろんスキルで呼び出しだよ。
塩の精製技術がこの世界と現代日本では全然違うんだもん。
お結びの具・・・・ツナマヨは絶対!
鮭、絶対!
たらこ、うん、これも絶対!
オカカもいいね。
天むす!!!!やばい、天むす食べたい。
でも、握り鮨がぁぁぁ。
ということで、私の寿司下駄にはちょんと天むすが一つ載っている。
ふぉふぉふぉふぉ。
一件落着。
現代日本でも有名なお店の雲丹軍艦。
スキルで呼び出し、ストレージにすぐに入れたので鮮度抜群。
みんなで揃って夜の賄い。
自分だけ鮨でごめんよぉ。欲しい人が居ればすぐにスキルで出すからねぇ~。
ん?希望者、ゼロ。流石に生魚は勇気がいる?ふ~ん。
ああ、雲丹が口の中でとろける~♪
久し振りというか、こちらの世界で初めて食べる生の鮭、うまうま~。
自分だけ御鮨食べてごめんねと思いつつ周りを見回すと、結局、皆お結びは好きみたいで、競争する様に食べてくれた。
赤出汁は慣れていなくて好き嫌いが分かれたけど、茶わん蒸しと寿司屋の卵焼きは大好評!
特に茶わん蒸しは作り方を教えてとマルタ伯母さんがシツコク聞いて来た。
蒸すのはスが入らない様にしないといけないので慣れが必要だけど、茶わん蒸しそのものは分量が分かっていて、卵液をちゃんと漉すなどの手間を惜しまなければそこそこ美味しい物は作れるので、ちゃっちゃと教えてあげた。
ナスカも横にピタっと張り付いて、作り方をメモってたのが印象的。
今、研修で来ている2人の調理人は全然食い付いて来なかった。
なんでかなぁ~と思ってみてたら、今習ってる料理だけでいっぱいいっぱいみたいだ。
そうだよね、ウチの料理は他の料理店とは全く違う調理方法の物が多いものね。
前もってこれだけは教えないとということで、シチューや塩釜焼きは教えてもらっているんだけど、ケーキ類はまだまだ習得しているとは言えないレベルらしい。
ウチの高級ホテルなら、ケーキくらいは出せないとだからね。
これから猛特訓してもらわないとだ!ニヤリ。




