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「一応、これだけ障害物の候補が挙がった訳だし、スタッフとして必要な魔法属性が何なのかを考え、障害物の配置について話し合いたいと思う」
「アドルフォ様。少しよろしいでしょか?」
「ん?アウレリア、何だ?」
「障害物の配置の前に、障害物の数、種類について話す必要があるかと思います」
「なんで?全部をやるんじゃないのか?」
「これはタイムを競う競技です。で、同じ競技を何組ものチームがする訳です。1回毎の競技が長いと、見ている方は疲れちゃうし、飽きちゃうと思います。なので、1回の競技で順調にいけばどれくらいの時間で終える事が出来るのかをまず考える必要があり、そこから逆算して、各障害物候補のクリア必要時間とそれぞれの障害物に付くスタッフの属性について考える必要があると思います。言ってしまえば、1つのチームが5~10分以上かかる様では、見る方は疲れてしまいます」
「でも、同時に2レーン、つまり2組で競ってもらうんだから、5分で2チームも済ませられるぞ」
「はい、2レーン並べて競わせたら1度に2チームずつ消化できます。それだけでなく、比べる対象がある方が競技を面白く見れると言う事と、競技をする方も、他のチームの進み具合をたとえ1組だけであっても肌で感じる事が出来るので、焦ってみたり、余裕を感じたりと言った状況を生み出します。それが観客にドラマを見せてくれる訳です」
「ドラマ?」
「言うなれば感情を生むとでも言いましょうか。焦ってるチームを見ると、呆れてしまったり、応援したり、一緒にドキドキしたりと見る側に何等かの気持ちを産む下地が出来ます。もちろん、余裕を持って競技しているチームがあれば、一緒に安心したり、自分の事の様に得意に感じたり、反対に失敗しろー!と思う事もある訳です。そういう風に感情を持つ事で、観客が競技をする者と一体感を得る事が出来、それがイベントの成功に繋がります」
「すごい!アウレリア先輩、すごい!アナウンスだけでもすごいのに、イベントって言うモノを理解してるんですねぇ」
ぺぺ君が何かとっても感動しているよ。
でもね、立場を変えて見てみれば、それに気づく君が凄いんだよ、ペペ君。
「オレから見たらペペもイベントについて詳しいというか、すごいカンを持ってると思うんだ」
「私もそう思います」と、闇王様の意見に被せてペペ君を褒めると、残りのメンバー全員も頷いていた。
「いやぁ、僕なんかまだまだです。鳥人コンテストの時は、あややクラブさんがファンファーレ?アレを作曲して、音楽クラブに演奏させたのを見て、音楽の効果に気付いただけだし、スタッフの皆さんが原始人の仮装をしていたのを見て、仮装の大事さ面白さに気付けたんです。最初は全て、あややクラブのみなさんのアイデアから発しています」
「ということは、殆どがリアのアイデアからだな」
なんてフェリーペがボソっと言うものだから、ペペ君の私を見る目がキラキラしてるよ。
「よし!話をテーマに戻すぞ。アウレリアが考えるには、2レーン同時に競技するがこちらのコースの設計は順調に行けば1回につき5分で終わる様な設計をするということだな」
「はい。そして、その後は障害物準備するスタッフの必要な属性、クリア想定時間、似た障害物を排除という観点から分けて、その後、どの障害物を採用し、どんな配置にするか考える必要性があると思います」
「よし、分かった。後、アウレリア、このイベントで思う事があれば、今の内に全部ぶっちゃけてくれ。今は人数も増えたからアイデアも意見も増えて良い反面、意見統一に時間が掛かる。だから、お前が思っている事を最初に全部言ってくれ」
闇王様のコメントにみんなが頷いている。
よっし、なら、ドンドン言っちゃうよぉ~。
「まず、錬金術で大きな時計を2つ作ります。秒針もついた物にしてもらえたら嬉しいです。観客席のどこからでもレーン1と2、それぞれのチームのゴールまでの時間を一目見て分かる様にします。だから、この時計は時間を見るというよりも、ボタンを1回押したら0時に戻る様にして、もう一回ボタンを押すと、針が動く様に設計して欲しいです。1回の試技が終ると、別のボタンで良いので0時の所に長針短針両方ともが戻る様にして欲しいです」
そう言うと、ランビットが頷いている。
もう作りたくなったみたいでちょっとウズウズしてるっぽい。
「2つのレーンは全く同じ障害物を同じ大きさ、深さ、順番で配置する必要があります。今回は撮影は難しいと思うので、レーンの内1箇所、面白い画像が撮れそうな所へ両レーンに1台ずつ画像保存機を設置します。スクリーンはチーム紹介の時と、各チームの競技が終った時投影できる画像があれば投影するという感じになります」
後、何を言っておけば良いかな?
「あ、MC、つまりアナウンスは1名いれば良いですが、拡声器は他に2つ、そしてその拡声器を使ってインタビューする人が必要です」
「インタビュー?」
「現場でゴール直後とかに、本人たちに気持ちとかを聞くんです。例えば、残念でしたね~。どこが敗因だと思いましたか?とか、5分ジャストでのゴールですが、優勝を狙えると思っていますか?とか、どの障害物が一番楽でしたか?とか、反対に難しかったですか?とか聞くんですよ」
「ほほう。それがさっきお前が言っていた感情を生むにも繋がるのだな」
「アドルフォ様、そうです。そうなんです。彼らがどんな事を思ったのか、感じたのかを観客と分かち合うんです。その為に、インタビューをする人が必要になります」
私の思い付きをランビットが必死に板書してくれていた。




