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「今年の新入部員獲得と、前半の即売会についての会議を始めたいと思います。誰か今年の新入生でウチのクラブに入ってくれそうな学生を知っている人はいますか?」
ボブが錬金術クラブの部長となってから初の本格的な会議だ。
2年生の中に1人手を挙げているのがいる。
2年生部員はたったの2人。タムタムとパリィだ。
どちらも魔力を持たないので、錬金術の装置を動かす時は先輩方に声を掛けて、お願いするという形で作りたい物を作って来た。
今年の新入部員に魔力持ちがいれば、先輩に頼むより後輩の方が頼みやすいはずなので、彼らにとっても嬉しいはずだ。
「パリィ、誰か心当たりが?」
「はい、部長。2人います。1人は僕の弟で、もう一人は女の子なんですが幼馴染の子が1人。弟は魔力持ちではありませんが、女の子の方は魔力持ちです」
「2人ともウチに入る気満々なのでしょうか?それとも説得が必要ですか?」
「弟は入る気満々なんですが、幼馴染の女の子が錬金術には興味があるけど男子部員が多いのではちょっと・・・・って感じなんです。でも、メグ先輩やアウレリア先輩もいらっしゃるので、女性部員から声を掛けてもらえれば入ってもらえると思っています」
「そうですか。メグもリアも説得にあたってもらえますか?」
「「もちろんです」」
「それではパリィ、メグたちと何時彼女に話をするか日時の相談をお願いしますね」
「分かりました」
私達の同年代では上級貴族と下級貴族の子が1名ずつ錬金術クラブには所属しているのだけれど、元々お貴族様が錬金術師を目指す事が無いので、彼らから誰かを推薦と言う事はあるまい。
彼ら2人が貴族ながらに錬金術が好きと言う事が特殊と言って良い中、同じ様なモノ好きがそうそうその辺に転がっているなんて事は滅多に無い。
そう思っていたら、下級貴族の方が「ウチの家が懇意にしている錬金術工房の跡取りが今年学園に入園して来ます。その子がウチのクラブへ入る気があるかどうかは知らないのですが、声掛けはしてもいいんじゃないかと思います」と言い出した。
「錬金術工房の跡取り・・・・北門錬金工房の事ですか?」
ボブも工房繋がりでそういう情報を得ているのかもしれない。
「そう、そこの後継ぎです」
「情報をありがとうございます。ウチの工房とも横の繋がりのある所なので、後で声掛けをしておきます」
そんなやり取りがあり、ボブとランビットが後でその工房の後継ぎへ声掛けをする事に決定した。
「みなさん、個別の声掛け以外にも今週はクラブ活動を決めないといけない1年生が多数あっちこっちの部室を見て回ります。極力人目を引く物を作る様にして下さい。あややクラブに所属している子たちはあっちのクラブもあるので出たり入ったりするでしょうけど、必ず1人は僕以外にも部室にいる様心掛けてください」
「「「はい!」」」
「では、続きまして今年前半の即売会についてです。今日は何を作るか決めると言う事ではありませんが、早めに決めて作り出す様心掛けて下さい。1台、錬金術の装置が故障しています。既に修理には出していますが、何時頃直って来るかはっきりとした日程が分からない状態です。1台装置が無いという状態なので早目早目に動いて、即売会で売る物が無いという事態は避ける様にお願いします。また、魔力持ちでない部員も数名いますので、魔力持ちの方から何かやる事はないかと声掛けをしてあげて下さい」
ボブがそう言うと、パリィとタムタムはほっとした顔になった。
私達の先輩部員たちがいなくなり、まだ新入生も入って来ていない今の段階で、ぐるっと見回すと魔力持ち6名、魔力を持たない部員が3名と、魔力のない部員の比率が例年に比べ高くなっているものね。
新入部員の中にも、パリィの弟さんが入ってくれれば、最低でも1名は魔力を持たない事になるし、もし新入部員が彼1人だったりすると、来年の錬金術クラブは魔力持ちがゼロってこともあり得る。
ボブの責任は重大だ。
部会が終った後、「部員獲得に良い手段ってないかなぁ?」とボブに耳元で囁かれ、飛びあがってしまった。
何で私にだけ聞くのかなぁ?
でも、それを横で見ていた勇者様が「ドールハウスを自分で作ろう!っていうのをやってみたら、女の子の部員もいっぱい増えるのでは?」なんてアイデアを出してくれた。
ボブも「それだ!馬車も作ろうってやると、男子部員も増えるかも?」と悪い笑顔を浮かべていた。
それで、錬金術クラブの部室の方でボブが、あややクラブの錬金術コーナーの方でランビットと私達が早めにドールハウスを作り、作り掛けでも良いから見本を錬金術クラブの部室に飾ってはどうか?という案も飛び出した。
あややクラブの部室をドールハウスにしたものがあややクラブには置いてあり、あれも見本として飾ってはどうかという意見がフェリーペから出たけど、あれは見本として飾れないと思う。
生徒たちのあややクラブの部室への好奇心はすごく高い。
実際に中を見た事のある人数がすごぉ~く少ないので、あれを飾っちゃうと皆新入生でなくてもそのドールハウスだけを見る為に錬金術クラブの部室へ殺到するだろうし、あややクラブとしても安全性の確保が難しくなると思うからダメダメだね。
それを説明するとフェリーペはシュンとなっていたけれど、元々ドールハウスの設計図は全部ランビットが保管してくれているのであややクラブのドールハウスを飾らなくても、そんなに時間を掛けずに部室に並べたいくらいの数のドールハウスはすぐにできるはず。
もちろん、私達も手伝うしね。
それに作った物は即売会で売れるし、まぁ、問題無いと思うよぉ~。
しかし、物静かなボブがやる時はやるって感じが新鮮だったぁ。
部長という地位が人を育てるのかもね。
ボブ、頑張れ~!
もちろん手伝うよー!




