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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
翡翠色の章<前半>
329/544

9

 ヤマルダ村の村長さんは若くして牧畜業を営んでいる人だった。

 普通、村長っていうのは村でも高齢の人がなるものだと思っていたので、ちょっとびっくりしちゃった。


「ダンテスと申します。大公様の所で執事をさせて頂いております。こちらにおりますのは、大公様の精鋭の一人アウレリア様とその御父上のギジェルモ様です。今日はお時間を割いて頂き、ありがとうございます」

 ダンテスさんが王都の貴族にでも話し掛ける様な丁寧さで私たちを紹介したものだから、村長であるポールさんはちょっとダジダジになっていた。


「あ、儂はポールと言います。父が村長でしたが2年前に亡くなりまして、儂がそのまま村長の職を引き継ぎました。よろしくお願いします」

 若いのに儂とか言う人、初めて見たよ!


「で、この村ではなくモリスン村で新しい宿屋を作られる事を考えてるとのことでしたが、空いてる土地を購入してもらえば問題ないと思いますよ」

「あちらの村には宿屋が集まって互助会みたいなのを作ってらっしゃるんでしょうか?」

「互助会?」

「はい。同じ種類の店同士で情報を共有したり、何かあった時に助け合ったりする会です」

「う~ん、儂は聞いた事がないな。まぁ、モリスン村へ行って、宿で聞いてみたらどうですか?」


 うわぁゎ、この若い村長さん、モリスン村は放置してるみたい。

 ダンテスさんが控えていた使用人に何か小声で命令した様で、その男性の使用人は馬車に乗ってどこかへ行ったみたいだ。

 

「もう一つだけ聞かせて頂いていいでしょうか?」

 使用人の動きを片目で追いながらも、大事な事を確認しなくてはいけないので、子供である私から質問してみた。

「はい」

 村長は小さな子がこまっしゃくれた感じで色々聞いてきても、ちょっと引き気味になりながらも、バックに大公様がいてくれるのでちゃんと対応をしてくれるみたい。

「貴族向けの宿を考えているんですが、そうなるとこの辺りを貴族の馬車が行き来したり、こちらの村へ遊びに来られたりするかもしれませんが、問題は無いですか?」

「ん?今だってお貴族様の馬車はこの街道を行き来していると思うので、別に問題は無いと思いますよ」


 そうかぁ。

 高級ホテルが出来る事で旅をする貴族が増えるとは思っていないんだろうねぇ。

 カードゲームを楽しみにだけ、或いは料理を楽しみにわざわざモリスン村に貴族が来るとは思わないよね。

 まぁ、その辺は説明していないので、しょうがないかな?


 結局、ヤマルダ村では何の収穫もなく、面倒な村長のいないモリスン村にホテルを建てれば、ある意味好き勝手出来るからかえって良いかもと思いつつ、私たちは馬車を待った。

 戻って来た馬車には先ほどの使用人が乗っており、モリスン村には互助会は無い事を確かめてくれたみたいだ。

 ダンテスさんと一緒に、その使用人と御者を労い、王都へ馬車を走らせた。

 もちろん帰りも泊まる宿は行きと同じ宿だ。

 だって、それ以外、お貴族様が泊まれる宿がないんだもんね。


 長い馬車の旅も後2~3日で終わるって頃に、手持無沙汰もあり、ダンテスさんに色々質問することにした。

「ダンテスさん、貴族の方が馬車で旅をされるのってどんな時ですか?」

「そうですねぇ。まず、自分の領地と王都を行き来するのが一番多いですね。王都では社交界が盛んな時期と、多くの貴族が領地に戻る時期が凡そ決まっていますからね。その時の行き来ですね。ちなみに社交界が盛んになるのは、作物の収穫が終わった冬ですね。次に、友達や知り合い、そして親戚を訪ねるっていうのもありますね。その中には冠婚葬祭も含まれます。主に結婚は冬の社交シーズンに王都で開かれるのが一般的ですが、急いで結婚をしなければならないケースもあったりするので、例外的に地方で結婚式を挙げるケースもあります。こちらは数年に1度くらいの頻度が一般的ですね。最後に、他領の大きな街を見たり買い物したり、綺麗で有名な景色を楽しみたいって言う人も少数ではありますがいる事はいますね。でも、最後のグループは本当に少人数ですよ。買い物が目的なら、社交時期の王都へ行けば良いだけですしね。綺麗な景色を見たいと言う貴族はあまり貴族らしくない人が多いですね。だから、馬車とかではなく、少数の護衛と共に騎馬で身軽にあっちこっちへ行かれる感じでしょうかね」

 ほうほう、馬車ではなく騎馬でってことは、バイクでツーリングする様な感覚なのかな?

 しかし、急いで結婚しなくちゃいけないケースって出来ちゃった婚?

 まぁ、そうだとして幼い子供に詳細を伝えづらいよね。おほほほ。


「教えて下さり、ありがとうございます。では、ダンテスさん。私が考えている高級ホテルが出来ると、どんな貴族の方が利用されると思いますか?」

「そうですね。実際に出来てみないと分からない所はあるのですが、カジノやトランプルームがあるので、それが徐々に浸透すれば遊ぶ事を目的にホテルを利用される方も多く出てくるとは思います。後、そのホテルがある辺りの複数の領地の領主が小さな社交の場を村のホテルに求める事もあるかと存じます」


「それはどういう事でしょうか?」

「年頃の子がいる領主は、子供の伴侶を決めるために少なくない回数これはと思った候補者とその両親である他領の領主と会う事になります。普通は王都の社交シーズンに伴侶探しをします。殆どの貴族が王都に集まっているわけですからね。でも、子供を自分の領の近くに嫁がせる事ができれば、領同士の協力体制も成立しやすいでしょうし、何より結婚してからも子供やその孫の顔を頻繁に見る事ができるのですから大きな利点があります。で、わざわざ社交シーズンを待たなくても、自分たちの領の近くに高級ホテルがあれば、まぁ所謂お見合いや、若者を集めてのパーティも開きやすくなりますので出会いのチャンスも増えると言ったところでしょうか・・・・」


 なるほど!

「では、一定の利用客は望めると言う事ですね」

「もちろんです。フローリストガーデン 光の時も思いましたが、アウレリア様が考えていらっしゃる施設は、私共が考えていたものより数段高級でサービスも行き届いた施設になっておりますから、失敗は無いと思っております」


 う~ん、ダンテスさんの私への期待が結構重くて、ちょっと苦しい・・・・。

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