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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
翡翠色の章<前半>
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7

 モリスン村の次はまずヤンデーノの町を視察して、そのままモリスン村を経由することなく、海岸脇を走る田舎道を西に移動してモンテベルデーノの町へ行く事にした。


 途中の街道はヤンデーノに近づくに従い細くなり、小さな岩等がゴロゴロ転がっている場所もあった。

 通行量はまぁまぁあると思うんだけど、あまり馬車での行き来がないのかな?

 街道がこの状態なら、人やモノの行き来がなくて宿屋商売はあまり有望じゃないかもしれない。

 そんな思いを抱きながら馬車に揺られていた。


 でも、遠くから見たヤンデーノは城壁に囲まれた結構大きな港町だった。

「街道の整備がいい加減だったので、旅をする人は少ないと思っていたのに、町は可成り大きいですね」

「陸路の行き来は確かに少ないですが、港町なので海路の移動が多いのですよ。モンテベルデーノの方が街道の整備が整っているのと、陸路より海路の方が移動が楽で速いので、ヤンデーノへ行く人はまずモンテベルデーノに出る人が多いんです」


 はぁ、ダンテスさんは何でも良く調べてるなぁ。

 特に大公様の精鋭とは呼ばれてないけど、そう呼ばれても不思議じゃないくらい仕事が出来る。

 今回、交通量の少ないモリスン村とヤンデーノの間の街道を馬車で北上したのには、この事情を私に体感させたかったらしい。

 だって、ホテル内の食堂の食材なんかは馬車で輸送する事もあるのだからと・・・・。


 城壁を潜ると海に向けて緩やかな下り坂になった町が眼下に広がり、お日様をキラキラと反射している海がドーンと目に入って来る。

 大公様御用達の宿は海辺にあったけど、私は陸路側から見た町を見下ろせる高台にホテルを建ててもいいなって思った。

 それくらいこの港町のチマチマした背の低い小さなたくさんの建物は異国情緒を醸し出す風景に思えたのだ。

 恐らく、全ての建物が朱色の瓦屋根で葺かれ、建物の壁が目も眩しい白色というのが前世で訪れたスペインやギリシャの漁村を思い起こさせるからだろう。

 国内に居ながらにして異国情緒、うん、日本で言う長崎とか横浜な感じだね。


 港町だけあって魚介類が豊富。

 北の港なので、美味しい昆布が採れるのではないかと少ない滞在日数の間に駆けずり回ったら、案の定、昆布はあった。

 そう、ある事はあったが、誰も食べていないのだ。

 それは干して使うんですよと心の中では思ったけど、誰も利用していない資源なら安く手に入るし、ホテルを作る時についでに昆布工場も作っちゃえば、ホテルやフローリストガーデンで料理に使えるからね。

 出汁は料理の命だもん。

 ああ、それで言えば早くシイタケに代わるモノを見つけて、栽培して干ししいたけも定期的に入手できる様にしたい。

 今はスキルで呼び出しているけど、高級ホテルはチェーン店なので数が多い事と、各ホテル間に距離があるので、私がスキルで呼び出すとなると頻繁に呼び出さなくちゃいけなくなるから、どこかで栽培してもらえると楽だ。

 そうか、生しいたけをスキルで呼び出して、榾木で育ててもらい、更には乾燥させればいいのか。

 よっし、昆布もだけど干しシイタケもどこかで育てる様にしよう。

 鰹節は菌が要るのと手間がかかるので、スキルで呼び出すのが早いけど、干ししいたけや昆布あたりは小さな工場を作れば済む話なので、俄然やる気が出てきましたよ。へへへ。


 城壁で囲まれた町なので、大きな建物を追加で建てるのは結構難しい。

 庭園を諦めればなんとかというくらいの広さしか確保できない。

 海の傍なので庭園と言っても塩害に合うかもしれず、父さんには中庭だけの方が良いかも?と言われた。

 なら、ここは空中庭園や中庭で対応しようかな~。

 上から見てㇿの字になる建物にして、内側をパティオにしてもいいし、上の階の方にはㇿの字のところに渡り廊下を作り、1階のパティオに差し込む陽射しを邪魔しない様に設計すれば、その渡り廊下も空中庭園っぽく出来るかもだしね。


 私の高級ホテルとフローリストガーデン 光は、同じ調味料を使って調理する事になるので、ホテル間の流通を確保しないといけないけど、それなら調味料と一緒にモリスン村の肉なんかも運べば、魚介類が多いこの地方に美味しい肉料理を出すレストランとして名を馳せるかもしれない。

 うん、いいね。

 それにフルーツはフリアン伯父さんの所の温室から運ぶ事になるものね。

 流通をどうやってシステム化するか、そっちもダンテスさんを交えて話し合わないとだね。

 分量は少しで良いから品揃えは豊富にしたいもん。


 結局、この町では高級ホテルを建てられそうな高台の土地を大公様のお名前で即購入した。

 だって考えたり待ってる間に他の誰かに購入されてより小さな敷地になるのを避けたいものね。

 流石に城壁の外へホテルを建てたいとは思わないしね。


 ダンテスさんは私と父さんの視察の合間に、ここでの大工さんたちや資材を扱っている商店や卸業者を一通り当たってくれたみたい。

 うぉぉぉ!仕事の出来る男は違うねぇ。


 私なんて自分が食べたいからって昆布工場の方に力を入れて、その為に漁師たちへの聞き込みに時間を割いて、ホテルはちょっと放置気味にしてすみませんでしたーー!


 そんな反省をしながら、一路船でモンテベルデーノへ移動する事になった。

 馬車も船に乗せてもらうので、大きな船になった。

 帆船って生まれて初めて乗ったかも?

 船足は遅いけど、風情はたぁっぷり。

 あ、船と言えば、ゴンスンデも港が近くにあるし、3つの都市の間は船で物流確保も可能性としてはあるのね。

 う~ん、これは真剣に物流について考えないとだね。


 さてさて、明日にはヘルマン様の御実家が領地運営しているモンテベルデーノ入りだ。

 ヘルマン様いるかな?

 領地で奥様と領地経営を学んでるハズだもんね。

 ああ、今から楽しみだよ。

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