表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
翡翠色の章<前半>
326/553

6

 ナイトル村を出てゴンスンデまでは大公様がいつも利用されている宿や食堂を貴族の立場で使わせてもらい、せっせと気付いた事をメモって行った。

 大公様とはゴンスンデで分かれ、私たちはトンボ返りでポンタ村まで戻り、そこから今度は北上し、モリスン村を目指した。

 その間も大公様が普段から使われている宿に泊まり、食堂で食事を摂った。


 こうして複数の宿を利用してみると、どこも部屋は広いし、家具もそこそこのモノを使っているが、ただ泊まるだけの施設だという事が良く分かる。

 後、特徴としてはお貴族様は自分に割り当てられたスイートルームで食事をし、御者は厩の上で寝泊まりし食事もそこで、お付きのメイド等でスイートの小部屋に入りきれない者は一般客用の客室等を使う事や、料理は材料は良いモノが使われるけれど、メニューと言う意味では一般の客とそれ程違わず食後のお茶とフルーツが追加されているくらい。

 つまりステーキならできるだけ上等な肉を提供されるが、煮込みはお貴族様専用ではないので一般客と同じモノになる事が多い様だった。


 部屋の掃除は行き届いている宿ばかりだが、食堂についてるトイレは夕方は汚くなっている。

 それは一般客も貴族も同じトイレを使うからみたい。

 朝一で掃除しても多くのお客が使えば当然汚れるものね。

 『熊のまどろみ亭』のトイレにあの時の大公様とそのお連れが喜んだのは、あそこが特別だったからなのねと今更ながら思う。

 自分が思い付いてやった事だけど、今更ながらに拍手したくなった。


 お風呂はバスタブがスイートの中にある。

 頼むとお店の店員が桶に入れたお湯を下の階から運んで来る。

 スイートは大抵3階にあるので、結構な重労働だが、宿としてもお風呂は結構な料金を取れるのでありがたいみたいだ。

 それに人件費ってめっちゃ安いから雇い主の方は使用人の苦労はあまり気にしないものね。

 だって雇い主がお湯を運ぶわけじゃないしね。


 さぁ、いよいよモリスン村の視察だ。

 今日のお昼には隣のヤマルダ村の食堂で食べた。

 この村は牧畜で有名で、肉や乳製品が美味しい事で有名なのだが、牧場が多くて動物とその排泄物独特の香ばしい匂いが風の向きによっては漂って来る事も結構頻繁だ。

 まぁ、野原が基本なのでずっとという訳ではないので、風向き次第なんだけれど、それでもお貴族様たちには我慢がならないみたい。

 お貴族様たちは乗馬も楽しむはずなので、こういう臭いにも慣れているんだと思うんだけどなぁ・・・・。

 まぁ、風向き次第で臭うから、貴族や大商人から宿泊施設はこの村ではなく近くの村でという要望が強かったというのは良く理解できた。

 

 モリスン村は新興の村で、ヤマルダで採れる食材を楽しむために客が食事をしたり、泊まる事を目的とした宿場村なのだ。

 この村からは大きな街道が3つ出ており、一つは私たちが今利用したポンタ村や王都と繋がる街道。

 もう一つはモンテベルデ伯爵の領地であり私たちの高級ホテルの建設候補地の一つであるモンテベルデーノの町と繋がっている街道。

 最後は、同じくホテル建設候補地のヤンデーノという街に繋がる街道だ。


 ヤンデーノもモンテベルデーノも今回の視察のルートの中に入っている。


 モリスン村の宿では夕食も朝食も乳製品が豊富に使われていた。

 スープには牛乳が味付けに使われているし、肉も大振りなモノがゴロゴロ入っていてこの地方の特徴をものすごく生かしているのが分かる。

 でも、惜しいかな・・・・チーズはあってもヨーグルトがないんだよね。

 朝食にヨーグルトが欲しかったかな。


 村自体は宿屋、食堂とパン屋のみで出来ており、一般家屋が殆ど無い。

 何故ならこれらの商業施設には持ち主の住まいも併設されているので、態々別個に建てていないって事だ。

 この村の子供たちはヤマルダの日曜学校に通っているし、役場もヤマルダのを利用しているそうだ。

 ダンテスさんから貰った事前の資料には人口が約千人と書かれていたが、これはヤマルダ村と併せてという事なのだろう。

 こういう事は来てみないと分からない事もあるっていう証拠だね。


 どっちにしても村長とは話をしたいが、ヤマルダ村に住んでいるみたいなのであっちへ行かないといけない。

 でも、今日の昼に居たヤマルダ村へ態々引き返すのは時間がもったいない。

 そこでヤマルダの村長とはヤンデーノかモンテベルデーノからの帰路で会合を持たせてもらう事になった。


 住民も少ないし、みんな宿屋か食堂を営んでいる者たちなので同業他社になるわけで、色々聞くのも憚られる気がしたんだよね。

 そこで建設予定地の見当だけを付ける事にして、さっさとモンテベルデーノへ移動する事にした。


 モリスン村は、街道が村の中心でさっき言った3本に分かれていて、それぞれの街道に沿って宿等がびっしり建っている。

 宿だけで7軒、食堂は4軒、パン屋が1軒、そして何故か鍛冶屋が1軒のみの村だ。


「どうして鍛冶屋があるんですか?」と念のためダンテスさんに聞いてみたところ、「馬車のメンテナンスが出来る様にしているみたいです。馬の蹄鉄とかの交換もありますしね」という回答が帰って来た。


 街道沿いに高級ホテルを建てても、広い庭を作る事を考えているので、街道のすぐ脇に作るメリットがウチの場合は無い。

 どちらかというと街道から奥まった所に作った方が高級感が出ると思う。

 そうダンテスさんに伝えると、小さな高台になっている所へ連れて行ってくれた。

 

 メインの街道から馬車で10分くらいの所だ。

 この高台にホテルを建てると周りをぐるっと見回せる事になる。

 景色は遠くの牧場と足元の宿屋群。

 特に見るモノはないけど、土地はゆったりしているのでここにカジノを併設する事は可能だろう。


 メインの街道から少し引っ込んでいると乗合馬車で行き来する客はウチのホテルまで移動する事が難しいかもしれないけど、既存の宿との共存を考えると自前の馬車を用意できない客は他の宿にって考えた方が揉めないかもしれない。


 そんな事をつらつらダンテスさんに話して見ると、大体そんな感じで大丈夫だろうと同意してくれた。

 高台の周りにどんな庭が作れそうかと父さんに聞いてみると、日当たりをみながら、街道からホテルの表側は狭い庭にして、裏側がお日様燦燦なので広い庭にした方が散策とかに向いた庭になるだろうと言う事だった。


 うん、ここも候補地で良いと思う。

 何より食材が豊富なのと、ポンタ村のフリアン伯父さんところの温室からいろんな食材を運んで来るのに街道の整備が整っているのがありがたいものね。


 よし!ここにもホテルを建てよう。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ