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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
翡翠色の章<前半>
325/554

5

 寂れた村の村長の家は、他の家よりは若干大きいがやはり寂れていた。

 それでも千人も人口があるのに寂れているって・・・・。

 村長の家の前に立ち、そんな事を考えていた。

 私、何でこの村を寂れているって思ったんだろう?


「ようこそいらっしゃいました。この村の村長のハマスと申します。大したものはありませんが、どうぞ中へ」

 腰の曲がった老人がこの村の村長だった。

 手入れはちゃんとされているんだけど古い家で、家具も漏れなく全て古い物だった。

 木のコップに入った水は、一度沸かして冷ましたもので、村長の奥さんの心遣いが窺える。


「この村に高級な宿を建てたいと考えていらっしゃると聞きました。ほんにありがたいことです」

「こちらの少女は年はまだ幼いのですが、大公様の精鋭の一人で、その横にいるのがこの子の父親になります。私は大公様の執事でダンテスと申します。高級ホテルは、大公様の支援で、こちらの少女が建設し運営します。ここからは、このアウレリア様が直に質問をされます。腹蔵なくお答えくださいね」

「かしこまりました」


「アウレリアと申します。ハマス村長、どうぞよろしくお願いします」

 笑顔で挨拶を交わし合い、いよいよ本題だ。


「この村は高級宿屋建設の候補地の一つです。まだ建設すると決めたわけではないのですが、湖の近くに建てられたらと思っています」

「なるほど」

「湖を宿の一部にするとなると、村の方々から反発がありませんか?」

「夏に小さな子供たちが泳ぐ事はありますが、この村には若者があまりいないので、子供の数も微々たるものです。5~6人といった所でしょうかね。そのくらいの子供が水遊びが出来る状態であれば、今となんら変わりがないので、問題はありません」

 

 ああ、寂れているという印象は、若者がいなかったからだ。

 千人という人口は村にしてみたら多い方なのに、全般的に建物も古く、若者もいない。

 そういう情報を無意識の内に受け取ってたんだなぁ。


「湖を宿だけで占有するつもりではないのですが、一部お客様の安全面を考えて囲い等を設置する事もあると思いますが、それでも大丈夫でしょうか?」

「はい。問題ないと思います」


「お客様は貴族や大商人などを考えています。宿を建てて蓋を開けてみないと実際のお客様がどの様な方々になるかの保証はできませんが、それについては如何お考えでしょうか?」

「村に宿泊される方がいらっしゃるのなら、村が発展すると私は思っています。ただ、懸念があるとすれば、貴族の方々がこの鄙びた田舎者たちに、王都の平民と同じ様な躾を望まれても対応できないということです。この村の領主さまはもう何年もここに顔を出されていません。徴税の役人は毎年来られますが、それはあくまで平民の方です。なので、村人は貴族への口の利き方も知らなければ、態度もわかりません」


「そうですか。分かりました。その辺は大公様とも相談して、村人に迷惑が掛からない様に何等かの対策を取れればと思っております。ただ、今の所、宿の建設そのものもお約束できませんし、その貴族への対策も必ずしも採れるとお約束はできない状態です。いずれにしても前向きに考えておりますので、もし、建設する事になったらよろしくお願い申し上げます」

「もちろんです」


「湖の近くに建てたいと思っているので、宿そのものも村からは少し離れた場所になるので、貴族がどのくらいの頻度で村の中を歩き回るかは私にも未知数なんですね。後、もし、宿を建てるとなると、村の人たちで宿で働きたいという希望者がいて、こちらの基準に合えば、働いてもらいたいと思っておりますが、村の外からも使用人を呼び寄せる事になります。村によそ者が住み着く事は問題ではないでしょうか?」

「犯罪歴のある人や乱暴な人は困りますが、ちゃんとした人であれば、特に若い人はこちらからお願いしたいくらいです」


「そうですが。最後にそちらから私たちへ何か質問等はありませんか?」

「そうですね・・・・。宿をこの村にするかどうか、何時頃分かりますかね?」

 落ち着いた目の村長さんにそう聞かれ、即答できない私はダンテスさんを振り返った。

「この夏の間に複数の村の視察をします。そして王都に帰ってからどこの村にするかを大公様を交えて話す予定です。アウレリア様は学園がございますので、学業に差しさわりの無いスケジュールで事を進める事になります。なので、遅くとも秋から冬の初めには結論が出ていると思います。結論が出たら、この村に建てるにしろ、建てないにしろ、必ずハマス村長にはお知らせ致します」

「お気遣い、ありがとうございます」


 それから少し四方山話をして、この村の一般的な村民の家を2軒見せてもらって視察が終った。

 どの家も古く、村長の家よりは小さいが、中年や年寄りたちが農業をしながらゆっくりした時間の中暮らしているのが見てとれた。

 スローライフやね!

 村長さんの落ち着きや、古いけど手入れをして大事に使っている家具等を見て、この村が好きになった。

 私の心の中ではこの村に高級ホテルをを建てる事が既に決定した。

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