フェリーペ君のひとりごと
父様はめったに店に顔を出さない。
でも今日は貴族の中でも上位貴族であるお三方がウチの店を訪問するということで、手ぐすね引いて待っていた様だった。
ウチの店の見学が終り、ボブんところのスイカズラ錬金術工房を見学して、徒歩でウチの店に戻ると、まだ父様が居た。
「皆様、無事にお帰りになったか?」
「はい」
「大公様の精鋭はあの金髪の女の子で間違いないか?」
「はい」
「うむ。あの子は出来たらウチの商店に引き入れたいが、どうも店舗見学の時、不満そうだったな」
「恐らく、ウチの店のシステムか装飾か品揃え、何かがアウレリアの基準に到達していなかったのだと思います」
父様と店で話す時は敬語で話す様に厳しく申し付けられているので、今も必死で敬語でしゃべろうとしているのだけれど、普段あまり敬語を使っていないので、自分がしゃべっているのが正しいかどうかとても不安だ。
「お前が所属するクラブ両方に一緒に入っていて、あのドールハウスは彼女の発案で間違いないな」
「はい」
「で、先ほどのアドルフォ様のクラブで行うイベントも彼女が考えているということで間違いないな」
「はい」
「クラッツオ家の長男は彼女を嫁にするとかそういう話は出ていないか?」
「俺が知る限りはそんな話聞いた事がないです。ただ、大公様の精鋭でなければウチの家に仕えて欲しかったのにとは良く言ってらっしゃいます」
アウレリアは以前から、闇王様はメグを好きそうだとか言っているけど、俺から見たら闇王様はお前を狙っている様にしか見えないんだけどな。
彼女はそれに気づいていないみたいだ。
それともリアが言うのが正しくて、俺が勝手にライバルって思ってるだけだろか?
平民とお貴族様でライバルもあったもんじゃないけどな。
まだ異性を好きになった事はないから、友達として好きなのは確実だとは思う。
異性として好きかどうかって言われると分からないけど、リアが他の男と付き合うって言ったらとっても苦しいと思う。まぁ、そういう事なんだと思う。
今はみんなでワイワイ騒ぐ方が楽しいが、つい最近成人した従兄の話だと、学園を卒業する間際から、みんな婚約だの、結婚だのの話で盛り上がるらしい。
俺たちにはまだ2年の猶予があると思っていたけれど、違うのだろうか?
とても綺麗な娘だ。
入園式の後、ホームルームで見惚れてしまった。
俺は綺麗なモノが好きだから、人形みたいに綺麗なリアは本当に好きだ。
でも、今は友達として一番近くでワイワイが楽しい。
いつも突拍子もない発想でいろんな事をやって、普通だったら経験できない事をいっぱい経験させてもらってるしな。
父様もいつもそういう人間は貴重だと俺に言ってる。
「学生の内から、しかもその年齢で、こんな王都中を巻き込む様なイベントを開催、そして成功。まぁ、催し物を企画運営させてもらえるっていうのは、今のお前では分からんだろうが、金を積んだだけでは得られない経験なんだぞ」と。
最初は父様の言ってる事があまり理解できなかったけれど、最近のイベントクラブを見ていて、ああ、この娘のすごさは外見だけじゃなく、その発想、そして運営能力だと俺にだって分かる様になって来た。
ちょっと前なら運営とか企画って言葉の意味すら知らなかったのにな。
あややクラブでリアが良く使う言葉だから、ウチのクラブの皆は自然と理解する様になったけどね。
でもリアのすごさはやっぱり外見もなんだよな。
フローリストガーデンへお呼ばれした時、リアの母親を見て『ああ、そっくり。大人になったらリアはこうなるんだ』と憧れの目で見てしまった。
リアはその能力もだが、外見がものすごく綺麗で可愛いのだ。
なんだっけ、メグと二人でゴスロリとかミリタリーだっけ?軍服ロリータ?ああいう服を着たら、絵画から飛び出して来た様に見えるんだよ。
メグは綺麗というよりは、可愛い娘だ。
だから二人並んでると、大抵の男子はどっちかに目が行ってしまう。
綺麗か可愛いか・・・・。
絶対、お貴族様クラスでもリアの事気にしている男子は結構いると思う。
イベントでアナウンスしてたり、入園してからずっと学年トップだから、容姿以外にも目立つ目立つ。
でも、あややクラブのお陰で闇王様の庇護下にあり、実社会では大公様の庇護下にあると思われているから、生半可なお貴族様では声も掛けられないって感じだろう。
俺は最初、リアが闇王様たちの傍にいるのは嫌だったけど、良い虫よけになってくれていると思う。
怪我の功名と言ったところか・・・・。
この夏休み、リアは父親と大公様と一緒に、あっちこっちへ旅をするらしい。
王都に帰ってくるのは、新学年度になるギリギリとか言ってた。
恐らくだけど、リアが言っていた高級宿のせいで、これから長期の休みに王都に居る事は稀になるんじゃないかな。
ああ、フローリストガーデンに呼んでくれないかなぁ。
あそこの料理は美味しいし、いつ行っても花が咲いててゆったりしているから落ち着くんだよね。
父様が言ってたけど、料金も高いが珍しい美味しい料理が楽しめるが、中々予約が取れないのが玉に瑕って。
ウチは上客との会食も偶にあるから、父様としてはあそこを使いたいらしい。
でも狙った日の予約解禁日に申し込んでも、3回に1回は予約が取れないってボヤいてた。
それにあそこは子供を連れて行く所ではないと、俺は父様と一緒にあの店へ行った事はない。
全部、リアの招待だ。
ああ、あそこの料理を食べたいなぁ。
デザートは部室で食べれるけど、食事は出してもらえないんだよなぁ。
3年生になった時、部室のトランプ大会を夜通しできる様に、料理してくれないかなぁ~。




