104
金曜、無事家に戻った。
来週は鳥人コンテストの準備が追い込みになる事と、それが終ると直ぐに錬金術クラブの即売会、そして期末テストだ。
ドールハウスのお店シリーズもせっせと仕上げなくてはいけない。
まぁ、ドールハウスのあれこれを作るのは楽しいんだけどね。
でも、この週末、私の一番の関心事はそんな事ではない。
ふふふふ。
中華風白身魚の甘酢あんかけ!
これを食べたいのだ。
作りたい訳ではないが、食べたいのだ。
何でかは自分でも分からないが、時たま、前世や前々世で作ったり食べたりしたおかずが無性に食べたくなるんだよね。
木曜あたりから白身魚をカラッと揚げて、それに御酢がたっぶりの甘酢あんかけ、あああ、あれが食べたくてしょうがなくなったんだよね。
本当は、ミートボールと茄子の炒め煮も食べたいんだよね。
ケチャップとか入っていなくて、キューブのコンソメだけで味付けしたシンプルな奴。
あああ、シンプルと言えば、白菜とシーチキンのこれまたコンソメ味の煮物。
いやいや、セロリの葉っぱをちくわと煮た、おばあちゃんの薄ら醤油風味の煮物も食べたい。
あれってセロリを一株丸々買った時に持て余す葉を利用した料理だったけど、元々セロリが好きだからあの独特の味が好きなんだよね。
それと、白身魚の甘酢餡かけは中学の時に友達がとっても美味しいから騙されたと思って作ってみてって渡された調理カードにレシピが載ってたんだよね。
作ってみたら、本当に美味しくて、私も好きだったけど両親の方が「これ、旨いな」なんて言って、お母さんが私が友達から貰った調理カードをスッと持って行っちゃったんだよね。
あああ、どれもこれも前世で良く食べた料理だったり、何気ない日常の思い出に繋がっている料理だった。
和食も洋食も中華だって、どんな料理も美味しかったな。
嫌いな食材があんまりなくって、唯一嫌いだったのが酢味噌かな。
結婚してからは台所が汚れるのが嫌で、揚げ物なんかはスーパーの総菜で済ませてた時期があったから、中華はよく出来合いのモノも買ってたっけ。
中華繋がりで回鍋肉とか思い出しちゃったジャマイカ。
ああいうのは家で作ってたけど、たくさんキャベツを摂る事ができるし、ビタミン豊富な豚肉料理だったから、結構な頻度で作ってたっけ。
ああああ、それと北京ダック!
甜麵醬が良い仕事してるよね、あれ!
あああ、白髪ねぎいっぱいと一緒に包んで食べたい。
北京ダックの包む皮は薄いのじゃなくって、中国に旅行した時に村のおばあさんが裏庭で急遽作った様な肉厚のぼってりした皮のが今までで一番美味しかったかも~。
むむむむ。賄いを作るのは明日と明後日の昼と夜の4回。
さて、何時何を作ろう!!
白身魚の甘酢餡かけは明日のお昼に絶対だ。
これは譲れない!
もうお口が白身魚の甘酢餡かけしか受け付けない状態だ。
彩よく玉ねぎだけじゃなくって赤黄緑のパプリカを入れないとね。
じゅるり。
夜はあっさり系がいいよね。ミートボールと茄子かな?
そろそろ市場でも茄子が出始める頃だよね。
秋ナスは嫁に食わすなとか言うけど、夏の茄子も美味しいよね。
夏のカレーに入ったゴロゴロした茄子、うまうま~。
変わった所ではスペインの日本料理屋さんで食べた事のある、すき焼きに入っていた茄子。
最初、「???」ってなったけど、一口食べたら「うんまぁ~」になっちゃったもんね。
ん?待てよ。
この週末、これだけ前世の食事に拘ってるのって、前世の夫とのことを思い出したからかな?
怒りとか悲しみが継続せず、食欲に代わってしまった?
ぶふぉぉ~!
私ってそんなに食いしん坊だったっけ?
でも、この週末は前世の料理のオンパレードだね。
それも家で食べるおばんざいが主だ。
うん、心の赴くままに料理するぞ~!
これでディアナ様の件や、前世の夫の件を忘れられるなら万々歳!
これって調理セラピーとでも名付けようかな?
いやいや、作りたいんじゃなくて、食べたいんだから、食事セラピーか。
なんてツラツラ考えて、マンマに市場で買って来てもらう食材のリストをせっせと書き出す。
デザートも和風にしちゃう?
それともコーヒーゼリーとかもいいよね。
あ、しろ〇まの様なアイスも良いかも?
あれ、前世でも大好きだったんだよね。
他のアイスよりちょっぴり高かったから、ご褒美的な感じで買ったりしてたよね。
冷静になってみると、アイスなので高いと言っても豪華な料理程じゃなかったのにね。
何か良い事がある時、「あっ!あれ買って帰ろう」的な位置にあったんだよね、私の中では。
買うって思ったら、コンビニスイーツのわらび餅や他のスイーツが頭をよぎった。
これはコンビニスイーツをシリーズで呼び出してもいいよね。
ふわふわクリームのロールケーキとか、抹茶のプリンとか、どら焼きとか、フォンダンショコラも食べた~い。
色々考えて寝て起きたら土曜の朝。
ふふふふ。
スキル総・動・員!!
白身魚の甘酢餡かけやお味噌汁、白米、お新香、デザートはコンビニスイーツで思い出せる奴全部!
作れる物は作って、その他は躊躇なくスキルで呼び出しだ!
ポン・デ・リン〇みたいなのから、キャラメルナッツタルトまで、もう思い付く限りスキルで呼び出しました!
お店のみんなにはお食事も大好評だったけど、山盛りのスイーツに歓声が上がった。
どれもビニールの袋に入っているので、私のスキルで呼び出したのがバレバレだけれど、今更だよね。
ここで働くみんなは私のスキル知ってるものね。
誰か一人くらい余所で私のスキルの事いいふらす人が出るかと思ったら、一人もそんな人はいなかったので、良い意味でビックリしてたんだよね。
孤児院から引き受けた子たちなんて大人になり立てで、うっかり外で言っちゃうって事があるかと思ってたんだけど、父さんが彼ら子供が入社する度に「バレちゃうと、ウチでしか食べれない美味しい賄いを食べれなくなるんだぞ。食材もこの国では手に入らない物が多いから、スキルでないと呼び出せないんだからな。絶対外で言うんじゃないぞ」と初日に脅しているらしい。
チョコレートとかケーキとか、和菓子とか、彼らが大好きなお菓子類が他では食べられないのだから、私のスキルについてはお口にチャーックがちゃんと出来ているのが素晴らしい!
胃袋はがっちり掴んだぜぇ。
なんて思っていたら、私ったら高級ホテル用に研修に来ていた調理人の存在がすっぽり頭から抜けておりました。
スティーブ伯父さんがダンテスさんと相談して現在受け入れていた2名の調理人が目を真ん丸にしてコンビニスイーツを凝視しておりました・・・・。
あちゃー。
でも、大公様からのお達しで、ここで見聞きした事は外ではしゃべってはならないって契約を結んでいるから、大丈夫・・・・だよね?




