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今日の打ち合わせは学園側との会場設営と安全確保の確認が主たるテーマだ。
イベントクラブからは第三皇子とディアナ様、他にも女学生2名がオブザーバーとして出席している。
夕方で誰もいない学食の一角にて打ち合わせが開かれた。
みんな心なしか、ディアナ様の方を見ない様にしている。
恐らく、不意に目が合った時、どんな顔をすれば良いのか分からないからだろう。
私もあれから冷静になったら、彼女が可哀そうな娘なんだとちゃんと思いやれるまでになった。
自分の前世と彼女の親の話は別物だものね。
こんな幼い子がこれまでどれだけ辛い思いをしたんだろうと思ったら、メグが言う様に可哀そうと思う。
だけど、本音を言えば、もう関わりたくない。
これに尽きる。
自分の事だけを考えている自分が嫌になるが、前世の嫌な記憶を目の前に突きつけられた様に感じるのだ。
もう、それがめちゃくちゃ嫌。
でも、私には直接関係無い話だし、ウチの部員に迷惑が掛からなければ問題ないんだし、打合せの方に気持ちを向けよう!
闇王様がドナルド先生に「会場設営はイベントの前日ですか?」と確認すると、そうだと言う回答が返って来た。
雨天の時は、次の日に、その日も雨なら翌週金曜にとのこと。
小雨程度なら、朝8時半までに開催について学園がアナウンスするとのこと。
「会場設営段階で、ウチのクラブが現場で確認しなければならない部分ってありますか?」
「そうだなぁ。今年も画像は投影するって話だったから、前日に一度投影したり、拡声器の調子を確かめておいた方が良いかもな。まぁ、それは当日の朝でも良いかもしれんが・・・・」
「確認に関しては工事の終了時間も関わって来るので、前日にするか、当日の早朝にするかは、工事の予定を教えて頂いてからになりますね。設営場所に関しては頂いた図面の通りで、昨年とほとんど同じ配置ということで間違いないですか?」
「そうだな。出店スペースと貴族の観覧席が少し広くなってるくらいかな」
「分かりました」
闇王様が着々と話を進めてくれるので、他のメンバーはあんまり口を出さなくて良いのが助かる。
「レスキュー隊も昨年度と同じと伺っていますが、それは現場で機体やパイロット引き上げの担当者が去年の経験者と言う事ですか?それとも引受先が同じって事ですか?」
ドナルド先生は一瞬考える為に黙り、しばらくしてから「すまん。そこの所は確認していない。昨年のボート屋に頼んでいるのは知っているが、実際に現場に来る者が同じかどうかは確認しておく」と答えた。
「はい、お願いします。違う人でも良いのですが、昨年担当した人から要領なんかをちゃんと伝授してもらっておく様にお願いして下さい」
「ああ、分かった」
細々とした点を確認した後、打ち合わせはお開きになった。
各自が持参した筆記用具等を手に手に、学食を出て、私たちは部室へ向かって歩き始めた。
すると、そこへ後ろから、「打合せは本当に勉強になります。一点確認させてもらってもいいですか?」と皇子が闇王様に問いかけた。
話を聞いてみると、前年度にやったイベントと比べ変更した点はないのか、あるとするとその変更案は学園側から出たのか、あややクラブ側なのかという質問だった。
「オレが知る限り、昨年度と違うのは収入を増やすための受入人数等くらいだと思う。ただし、手法については昨年度から既にあった手法だ。変更は学園側が考え、さっきの打ち合わせで初めて俺たちに情報を共有してくれた感じだ」
闇王様はいつも第三皇子の質問には出来るだけ端的に感情を交えず答えており、答えたくない時や答えられない時ははっきりそう言う。
それでも面倒なので、質問は書面でとお願いしているが、皇子も直接口頭で質問したいらしく、こういう機会は逃さない。
第三皇子は、オブザーバーとしての参加の時はあまりシツコイ質問はしてこない。
今日も私達の部室に到着するまで質問したり、話したりしているだけで、私たちが部室に入るのを邪魔したりはしない。
ディアナ様は今回、あまり口を開いていないので、目を合わせる事もなくほっとしたよ。
はぁ、来年はイベントクラブも2年目になる事だし、ウチのクラブのオブザーバーという位置は返上して欲しいものだ。
来年はドッジボール、鳥人コンテスト以外にも魔法障害物競争があるから、毎回オブザーバーとしてウロチョロされると五月蠅いんだよね、その存在自体が・・・・。
今日はもう何かぐったりしちゃって、おやつを作る元気が無い。
どうしようかなって思っていたら、アドリエンヌ様が「前にアウレリアに教えてもらったクレープを作ってみたい」と言ってくれたので、メグと三人で作る事にした。
クレープを焼く所までは2人にしてもらい、私はせっせといろんなフルーツを切って並べた。
勇者様が生クリームを泡立て、3人で思い思いのフルーツやシロップを挟んで形にしていく。
今日はおやつ作りが億劫だったのだけれど、女の子でワイワイ言いながら作るのは楽しくて、最初に感じていた億劫さは途中から跡形もなく消えていた。
鳥人コンテストの出場者は去年と同じチームで出場する選手も多く、昨年度の機体を撮影した画像板が思ったより少ない事から、今年は各チームのメンバー紹介の画像板だけでなく、機体の画像も撮らないとねなんて話題でおやつの時間を過ごし、すぐに解散になった。
お貴族様三人はクリサンテーモの寮へ、私たち五人は下々の寮へ。
闇王様たちと別れて、自分たちの寮へ移動中、何を思ったかふとフェリーペが言いだした。
「なぁ、クリサンテーモの寮の料理ってどんなんだろうな?一度食べてみたいと思わないか?」
以前、あややクラブを立ち上げる前に1回か2回、おやつはクリサンテーモで頂いた記憶がある。
お食事はどうだったかな?
あまり記憶にないということは、食べた事がないか、食べても記憶に残らない料理だった?
それともあの頃は闇王様たちに対し緊張していたので、食べるには食べたが何も覚えていないとか?
でも、改めてクリサンテーモの料理を食べたいなって言われると気になるジャマイカ。
これは、フェリーペを上手く煽って、闇王様にお願いしてもらうっきゃないね。
ぐふふふふ。
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