30
朝一番に畑の様子を見に行った。
昨日植えたイタリアンパセリは、既にぐんぐんとかなり育っている。
これは使えるね。
今度フェリシアの所へ行ったら家畜に使ってみよう。
こっそりとだけどね。
朝食後、すぐに野菜の下拵え作業に入った。
伯父さんは野菜の入った箱を中庭に運びながら「やっぱ、野菜の下拵えはもうお前に頼む方が綺麗だし、早く終わるな。助かってるぞ」とこちらが嬉しくなる様な事を言ってくれた。
私はコクンと頭を動かし、早速処理済み野菜を入れる箱を洗いにかかった。
伯父さんが調理場に戻ってからピーラーをストレージより取り出した。
ナイフは足元に転がして、誰かが近づいたらピーラーはストレージに入れて、ナイフは落とした事にするためだ。
その為に最初は野菜の処理ではなく、ストレージパネルを触らなくても狙ったストレージに保管できるかどうか試してみた。
結論から言うと、パネルを触らなくても保管したり呼び出したりできた。
ただ、結構時間が掛かった。
頭の中で画面の動きと同じ様に、まずスキルパネルを呼び出し、その中から『調理ストレージ』を選択し画面が変わってから、狙ったストレージの画面を思い浮かべ、そこから『保管!』と頭の中で願うのだ。
多くの手順があってパッと保管が出来ない。
むむむ。どうして一気に保管できないの?
何回も練習したのに。
目的の画面までの手順が多いんだよ。
一瞬でピーラーを収納できないと、人目が気になって使えないよね。
今後もナイフで作業するしかないかなぁ。
自分で作った調理器具の使い心地を知りたいんだけど・・・・。
ここは何としても一瞬でストレージを使える様になりたい。
野菜の下拵えもはじめないといけないので、ナイフで野菜の皮を剥きながら何か方法がないかと一生懸命考えていた。
考えている間に野菜の下拵えは終わってしまった。
ちぇっ!
早急にストレージを使いこなさないと宝の持ち腐れになってしまう。
伯父さんが処理した野菜の箱を全部調理場へ持って行くのにくっついて私も調理場へ入った。
今度はトマトの湯剥きだ。
昼に使うトマト全部の頭に十字の切目を入れ、一瞬だけ湯にくぐらし、捲れて来た皮をチュル~と剥く。
伯父さんは自分の作業をしながら、こっちの手元をガン見している。なんだろう?
「アウレリアがトマトの湯剥きをするのを見るのは楽しいなぁ。本当に簡単に皮剥きできるからな。トマトの実に傷もつけずに切目を入れるしな」
そういう事かぁ。
「昨日と一昨日は儂がやったんじゃが、いくつかのトマトの実にちょ~っとばかり傷がついてしもうた」と爺さんがおどけて言った。
私はニッコリとほほ笑んで、今度はじゃがいもを伯父さんの指示に従って賽の目や輪切りにしていく。
ふぅ、今日の午前中の下拵えが終ったぁ。
伯父さんから昼食のトレイを貰った。
いつもの様に調理場の隅っこに座って食べ始める。
宿の掃除が終わったランディが横に座った。
今度の学校についての話をしながら食べた昼食は、ニンニクが効いており、美味しかった。
こういう時にスキルについてみんなに聞いてみようかとも思ったのだが、やっぱり落ち着かない。
いつお客が来るか分からないからだ。
お昼の客が来るまでがスタッフの食事時間になるので、食べてる途中でもお客さんが来店すると、食事を途中で中断して対応する事になる。
で、そのお客さんの対応している時に、次から次に客が来てしまい、結局お昼は殆ど食べずに夜の仕込みになるなんて事も食堂あるあるなのだ。
まぁ、私は、昼食後は昼寝コースだから問題はないんだけどね。
給仕や調理を担当している伯父さん家族と爺さんは、たまぁに、昼食抜きみたいになっちゃうこともあるらしい。
やっぱりスキルについてはパルマン神父に聞いた方が良いかも知れない。
その方が落ち着いて質問できるだろう。
さて、昼食も食べ終わったので家の方へ戻って昼寝をさせてもらおう。




