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「ウチのクラブで実施するとすれば・・・・俺ならカッコいい台、舞台を用意します」と張り切ってフェリーペが口火を切った。
「ん?舞台?」
闇王様もフェリーペの持つビジョンを共有できなかったのだろう。
不思議そうな顔をしている。
「えっとですね。細長い高さ70㎝くらいの台を着色して、その両端で戦ってもらい、多少動いてもいいんですが、台から落ちた時は負けとするなんてどうですかね?」
「おおお!それは面白そうだ。例えば、火魔法の決闘台は火を連想させる絵にするとかもありかもな」
闇王様もフェリーペが持つイメージが共有できたのか、それとも台から落ちても失格という案が気に入ったのか、結構食いついている。
「私なら属性毎に分けずに、属性関係なく決闘してもらう方法を選びますね。その方がいろんな駆け引きが見れて断然面白いのではないかなぁ」
「お!それもいいな」
セシリオ様の意見にもノリノリの御様子。
他の皆からはあまり意見が出て来ず、闇王様のギラギラする2つの目は、とうとうこっちを見据えている。
ううううううう。
また、私ぃ?
「あややクラブのお祭り少女、アウレリアはどんな案を持ってるんだ?」
ちょっ!闇王様、言い方!
それじゃあ、別の意味に取れるよ。
「おいおい、アディ、それはアウレリアさんが可哀そうになる言い方だよ」
「え?だってイベントってお祭りの事だろう?なら合ってるだろう?」
「いやぁ、まあ、それはそうなんだけど・・・・言い方がね」とかばってくれるセシリオ様に無言で頷いてしまったのはしょうがないよね。
「良いバケモンはダメって言われたから、別の言い方を考えたのに・・・・。とりあえずお前の案を披露してみろ」という闇王様からの命令?で、早口で捲し立てる様に案を披露した。
「まず、安全面から見て、私が考えるなら対人で魔法を競う事はやりません。的を作って離れた所から魔法を撃ち、その出来不出来を競わせます。的に当たれば良いのか、撃ち抜けば良いのか、倒せば良いのかは魔法の特性にもよるので、この方法なら属性別になると思います。でも、こういう単純な方法なら見てる方は退屈なので、数人のグループを作って参加してもらい、人工的に作った障害物をクリアしながら最初にゴールにたどり着いたグループを優勝とするなんて方が私は好きです」
「なに、それ!すごく面白そうだ」
闇王様だけでなく、ランビットまで目を輝かせてこっちを見ている。
もちろんフェリーペたちもだけど、セシリオ様は何か無言で納得って感じで頷いているよ。
「で、人工的な障害物ってどんなのを考えているんだ?」
「できるだけ全部の属性が揃わないとクリアできない様に複数用意すれば、自然と個人参加ではなくグループ参加になると思うので、例えば、土なら、大きな穴を掘っておいて、そこを通り抜けないと先に進めない様にすれば、土魔法で呼び出した土で埋め尽くさなくてはいけなくなるので、最低でも一人は土属性が必要になるだろうし、同じ感じで水がたっぷり入った所を潜り抜けないと先に進めない様にすれば、水魔法で水を移動させないと無理だろうし、障害物を燃やせないと・・・・って感じです。まぁ、何かを燃やす時は火事に注意ですけどね。どれも障害物は大きくて跨いだり、飛び越したり、よじ登ったり出来ない様な大きさにします」
「まじ、面白そうだな。やりたくなって来たなぁ」なんて闇王様が怖い事を言っています・・・・。
ここはやらない方向へ何とかして持って行かないと、自分の首を絞める事になるよ。
「あのぉ・・・・。イベントクラブが失敗した魔法を使ってのイベントは流石に角が立つし、それでやっぱりイベントはあややクラブだねってなると皇子がまたまたこちらのクラブに入りたいっておっしゃられるかもだし・・・・」
最後の皇子がこちらのクラブへ再度入部希望ってところで、闇王様の顔つきがシャキーンとなったので、彼も皇子が入部することだけは避けたいのだろう。
うん、この手は今後も使えるね!
「でも、アウレリアさんが言う大きな穴とか水槽とかって2年目からの競技はみんなどんな競技か分かるから良いけど、最初の年は何が出てくるのか分からないと怪我をする選手も出てくるのでは?」
セシリオ様が仕組みとか、物事の進め方に興味を持ってるのは知っているのでこの質問に驚きはしなかった。
驚きもしなかったので、つい「それは予め練習用も兼ねてコースを作って公開し、好きに練習してもらえば自分のチームにどんな属性が足りないかが分かるし、怪我をしない様に練習もできるので問題ないですよ。で、同じコースをイベントの時にそのまま使えば良いので別途コースを用意するという二度手間を省けます」と答えてしまった。
「でも、大きな穴を土で埋めたら、次に練習したいグループはどうするんですか?毎回、私たちか実行委員会の人が出された土を取り除くのですか?」
「いえ、使った人が使い終わったら自分で掃除してもらいます。掃除をちゃんとしないチームはイベントにも参加させませんって言えば問題無く使用してくれると思いますよ」
セシリオ様の笑みが黒い笑みになってニヤっと口の片方が持ち上がった。
それを見てしまった!と思ったけど後の祭り。
「アディ、このイベントやりましょう!今年がダメでも来年やりましょう。いや、今から構想を考えて来年やるならば、イベントクラブに対抗していると思われずに実施できると思います。どっちかっていうとドッジボール大会よりもこちらの魔法障害物競争の方が私としてはやりたいです」
「オレもこのイベントやってみたい。みんなはどう思う?」
私以外、みんなやる事に賛成の様で、全員が手を上げた。
あちゃ~。
「実施する時期に関しては学園側と相談してみるが、大体の障害物の案を決めてからの相談となるので、まずはみんなで考えよう」
「「「おおおーー!!」」」
フェリーペたち男子は片手を突きあげてやる気満々で叫んでたよ。トホホホ・・・・。
いつも『いいね!』や『☆』、誤字報告をありがとうございます。
漸く半月分のストックが出来、少し落ち着きました。
引き続き、拙作をよろしくお願い致します。




