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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
天色の章 <前半>
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 皇子たちのイベントはクラブ立ち上げからそんなに日を置かず開催された。

 結局、あややクラブからは誰も出場しなかった。

 ただ見学まで参加しないとなるとボイコットを疑われるので、痛くもない腹を探られない様にと、全員がそれぞれの属性の講堂で決闘を見守る事になった。


「只今より、第一回魔法決闘大会を開催致します!」というサムエル皇子の開会宣言が学園内の敷地一杯に拡声器を通して流れた。

 ディアナ様なのか他の女生徒なのかは知らないけれど、続いてルールの説明が同じく拡声器を通して行われた。

 その間観客も選手もただその場で説明を聞いている事になり、目と耳、両方で聞く説明の方が分かりやすいのに、この前のウチのドッジボールの実演をしながらの説明はヒントにならなかったんだなと残念に思った。


「各属性の講堂では同じ属性の選手同士で決闘が行われます。審判は各属性の先生方にお願いしております。各講堂の全ての試合が終わった時、審判をしていた先生から総評を頂く事になっておりますので、楽しみにご観覧下さい。それでははじめ!」


 今度は各講堂の内にしか届かない拡声器を使って誰と誰の決闘なのかアナウンスがあった。

「第一試合。1年生フォルマル家の長男、ドノルス。4年生カルカツア家次男、ポルタ。用意、はじめ!」

 あややクラブの面々は火魔法は闇王様、フェリーペ、勇者様、風魔法はセシリオ様とボブ、土魔法がアドリエンヌ様、水魔法は闇王様しかいないのだが、やっぱりと言うかお約束というか、闇王様は勇者様とのご観覧を希望されたのでフェリーペというコブがついてはいるが火魔法講堂で観覧とのこと。

 そうなるとどの属性にも合わない私と魔力を持っていないランビットでウチの誰も観覧しない水魔法を担当する事にした。


 参加者は事前に希望した者の中からの勝ち抜け戦らしい。

 らしいというのは、ルールや試合の進め方についての細かなアナウンスが無い事に由来している。

 私が考えるアナウンスとは、まずこれがどういった大会なのか、誰にでも分かる様に説明し、それから大会を楽しんでもらうというスタンスなのだけれど、この魔法決闘大会については審判が誰かについての説明はあっても、どんな条件なら勝利となるのかの説明が抜けているのだ。


 つまり審判を行う先生の胸先三寸で試合の勝敗が決まってしまう可能性だって含んでいるのだ。

 後、入園したばかりの1年生と、既に色々魔法について学んでいる4年生を対戦させるというのがどうにも・・・・。

 対戦相手の選び方一つとっても、くじ引きだったのか、イベントクラブの方で勝手に選んだのか、選手が対戦相手を選べるのかなど、一切説明がないのだ。

 見ていると、先生か誰かが各選手の前に出した防御魔法が霧散した段階で、攻撃した方を勝利としている様に見受けられる。


 防御壁があれば、範囲攻撃魔法でない限り相手に怪我を負わせる事はないだろう。

 そういう意味では良く考えられているとも思う。

 同じ人が出した防御壁だとして、同じ強度だとどうやって証明するんだろう?


 私の後ろの席の子も「ねぇ、このイベント、どうやったら勝ちになるの?あ~あ、1年生が4年生に敵う訳ないのにね」なんて言っている。

 私が思う様な事は皆も思うんだね。


 選手がくり出している魔法が何と言う魔法なのか分からない時もあるし、解説もないので、水属性でない私にはよく分からないけど、水属性の生徒だったら分かるのかもしれない。


 私から見たら穴だらけのイベントなんだけど、男子生徒を中心に盛り上がってはいるのだ。

 元々娯楽に飢えているし、こういう勝敗を決めるイベントが好きなんだろう。


 面白かったのは、各試合の前に必ず応援団?応援人?が出て来て、三々七拍子をするのだ。

 これはもうウチの学園では応援の代名詞になってるね、三々七拍子。


 水魔法の第三試合は、4年生の男子同士の戦いなのだが、力が拮抗しているのか、決着がなかなかつかない。

 どうやってこの試合を納めるのかなと思ってみていたら30分経っても、40分経っても終わらないのだ。

 お互いに魔力の温存を図っているのか、なかなか次の魔法を撃たない。


 結局はダラダラと思い出した様に魔法攻撃を継続している退屈な決闘を見る事になったのだが、突然バーンという爆音が聞こえて来た。


 この講堂ではなく、他の3つの講堂のどれかの様だ。

 何人かの学生は「「「キャー」」」という声を上げて腰を浮かせたけど、間違ってもこの講堂ではないので急いで逃げなくても良いと思う。

 でも、魔法で決闘を行っているのだ。

 魔法が暴走した事だって考えられるし、火魔法なら火事、風なら強風が流れ込んで建物を押しつぶすという事も想定できるので、押し合いへし合いにならない様に学生を誘導して避難させる必要はあると思う。

 しかし拡声器からはうんともすんとも言って来ない。


 水魔法のマデレーン先生も一瞬体を固くしたが、「みなさん、落ち着いて下さい。この講堂では何も起こっておりません。どこで何があったのかを確認してまいります。皆さんは最前列の人から順番に講堂の外へ出て下さい。その時落ちついて誰も怪我をしない様にお願いします。一旦外に出た人から学食の方へ移動して下さい。後ほど、学食の中で点呼を取ります。良いですね。では最前列の人から出てください」と、生徒を誘導しはじめた。


 音の大きさから学食の方で何かが起こったのでは無いと判断したのだろう。

 また、この講堂では何も起こっていないと言うことを明言してくれたので、生徒たちは比較的落ち着いて講堂の外に出ている様だ。

 しかし、何が起こったのだろうか?

 私はランビットと一緒にゆっくりと水魔法講堂から出た。

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