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 体調不良でベッドにいるはずの私が、庭でごそごそしている事がバレてはいけないので、土鍋は調理具ストレージに保管し、部屋へ戻った。


 そして今度は念のためベッドに入ってから、さっきと同じ土鍋を思い浮かべた。

 そう、材料無しでの調理具製作でどれくらい体の中から例のものが吸い取られるかを試してみるのだ。

 『作る!』

 まったく同じ土鍋が出来たが、体から吸い出された量はさっきの比ではないくらい多かった。

 昨日の様に気を失う程ではないが、結構体が怠い。


 しかたがないのでベッドに横になると、王都にいる両親の事を思い出した。

 中身は大人でも、体にひっぱられているらしいこの精神は、とても可愛がってくれた両親、特に母さんの面影を懐かしんでしまう。

 あまり話さないけど、常に見守ってくれており、過保護なくらいまで大事にしてくれていた母さん。

 普段は寂しくなるから考えない様にしていたのだけれど、普段働いている時間にぽっかりと体が空いてしまったら、もう考えるのをやめる事はできなくなった。

 じんわりと目じりが濡れて来た。

 モンテベルデ家の事情が変わらなければ、成人するまで両親に会えないかもしれない・・・・。

 ベッドの中で考える事はネガティブな事ばかり。


 いやいや、泣いてもどうにもならないのだ。

 こんな時には寝るに限ると、スキルで呼び出した土鍋をストレージに保管し、昼寝を決め込んだ。


 昼食の時間なのだろう、ランディが新しい水とポリッジの様な物を持って来てくれた。

 熱い内が美味しかろうと起こしてくれた。

「調子はどう?」

「うん。もう大丈夫。心配掛けてごめんね」

「それはいいけど、もっと気を付けないとダメだよ」とめっちゃ心配してくれていた。


 お昼ご飯を食べてテーブルに座ったままうつらうつらしてたら、伯母さんが食器を下げに来た。

「まだ疲れが取れてないのかい?」

「あ、ごめんなさい。食器を下げずに眠りかけてました」

「いいんだよ。今日一日はゆっくり休んで頂戴。ランディからお前が泣いていた様だって聞いたよ。こんなに幼いのに急に親元を離れなくちゃいけなくて心細かったよね」

 答える事が出来ず、無言で頭を横に振ったけど、伯母さんの目から憐憫の情は抜けなかった。

 ここは話題を変えた方がいいよね。


「あのぉ・・・・お店の方をお手伝いしなくて良いなら、今日は裏庭の畑をちょっとお手伝いしても良いですか?」

「ん?水やりとか雑草取りかい?」

「はい」

「そりゃあ、助かるからお願いしたいけど、体調と良く相談するんだよ」

「はい」


 ふふふふふ。やったーーー!

 実は畑にどうやって行こうか悩んでたのだ。

 サブスキルの一つ『食材育成』を検証してみたいのだ。

 普段は野菜の下拵えとか皿洗いとかで忙しいし、体力も持ってかれるので、今がチャァァァンスだ。


 畑と呼ぶには可愛らしい面積しかないけど、ハーブ各種が植わっているので料理人の目で見ると宝の山だ。

 にんにくとかローズマリー、ミントが植わっていた。

 ただ世話をしている伯母さんも宿の掃除や客の対応、食堂の給仕と忙しいので、雑草取りまでは出来ていない。

 だから、大葉はこの畑の真横に自生して畑の栄養をチューチューと吸い上げていたのか。

 とても立派に育っている。

 大葉はあってもバジルはない。


 ところで、『食材育成』って何をするんだろう。

 植物だけなのか、動物も対象なの?

 まずはこの畑で植物の方を試してみたいな。

 ここで成功したら、フェリシアん()の家畜で『食材育成』を試させてもらおう。

 動物にも有効ならめっちゃ使えるスキルだと思う。

 まぁ、取り敢えずは植物からだと畑に集中した。


 植物を育てるのに大事なのは、土の栄養、太陽、水、防虫、雑草除去、土地改良剤散布とかかな?

 種とか苗の生命力も関係するだろうし、育てる物に合った気候かどうかっていうのもあるよね。

 多少、元々の最適な環境からズレていても、『食材育成』スキルを使ったらぐんぐん伸びるかな?


 とりあえず土の改良を頭に思い浮かべて畑の土を触りつつ『植物が育ちやすい土になれ!』と願った。

 何の変化も起こらなかったと思ったら、よく見ると土の色が少しだけ黒っぽくなった気がする。

 触ってみると土が団子状になってて、フカフカなのにしっとりと柔らかい土になっていた。

 そしてお約束の体の中から例のブツが引き摺り出された感もあった。

 でも、分量は極少量だ。

 う~~ん。本当に土地改良されたのか分からんけど、ブツも消費したし、土も少しではあったけど変化はあったから成功したんだと思う。


 次に井戸脇の盥に溜めてあった水を柄杓で汲んで畑に撒く。

 『ぐんぐん育て』と思いながら撒いた。

 すると、目に見えてハーブたちが伸びた。

 おおおおお!これは分かり易い。

 そして例のブツも体内から吸い出された。

 今回も少量だった。


 水を撒くだけで早く育つなら、このスキルはとても有用だ。

 ショウガとかアサツキとか、いろんなハーブを育ててみたい。

 苗とか種とか集められたらいいなぁ。

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― 新着の感想 ―
 『例のブツ』呼ばわりはやめぃ(笑)
なかなかに迂闊だなw 目に見える証拠は鬼門だが、さてはてどうなるか
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