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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
天色の章 <前半>
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 週明け、フェリーペがどんなファブリックを持って来てくれるのか楽しみでしょうがなかった。

 ランビットもあややクラブに期間限定とは言え、入室でき、みんなでワイワイと楽しい時間を過ごせるので、放課後をとても楽しみにしてくれているみたいだ。


 月曜は錬金術クラブの活動の日なので、5人でいそいそと移動する。

 本当ならフェリーペが持って来てくれたファブリックを元に、どれをカーテンに仕立てるか、テーブルクロスやナプキン、クッションにするかの意見交換とかをしたいんだけど、それはあややクラブの部室内でないと、個人用の物と錬金術クラブの夏の販売用の物とが交ざってしまうので、明日まで諦める事に。

 もちろん、教室でちらっと布は見せてもらったよ。

 だって、手元にあるのにお預けなんてできないもん。


 今日は夏の即売会に向けてドールハウスシリーズの何を作ろうかと5人で話し合ってた時に、セシリオ様が錬金術クラブの部室まで顔を出された。

 どんな馬車にするか待てずに相談に来られたのかなとも思ったけど、顔色が悪い。


 オスカル部長に小声で何か話しかけてる。

 オスカル先輩が頷くと、セシリオ様が真直ぐに私たちのところに来て、小声で「すまない。錬金術クラブの部長には許可を取ったのでウチの部室の方へ急ぎ来て欲しい」と頼まれた。

 こんな事は今まで一度もなかったので、ランビットを除く4人でセシリオ様の後ろからゾロゾロとついて行く形であややクラブの部室まで移動した。


 そこには憔悴したアドリエンヌ様がいた。

 闇王様はどう声を掛けていいか分からないみたいで、黙って隣の席に座って居たが、セシリオ様に続いて私たちが入って来たのを見て立ち上がり「よく来てくれた。まぁ、座ってくれ」と作戦会議室の席を指さした。


「この週末、アドリエンヌは親から叱責を受けたそうだ」

「え?それってテラスの事でですか?」

 流石勇者様、すぐにそれを思い浮かべたということは、アドリエンヌ様をずっと心配してたんだね。


「残念ながらそうだ。アドリエンヌ、自分で説明してごらん」

 闇王様に促され、ポツリポツリとアドリエンヌ様が説明を始めた。

「週末に帰宅しゅると、花いじりの事がお父しゃまに伝わっていてとっても怒られましたの。で、花いじりではなく、花の研究をしゅるために押し花を作ったり、花について図書館で調べたりした事を伝えまちた。で、お父しゃまはしょれを確認しゅるべく、アドルフォ様の御実家へも問合しぇましたの。アドルフォしゃまは私の言う通りだし、花のしぇ話は専用の使用人がいましゅってちゃんと言ってくれましたの。でも、念のためって言って、今日の午後、使いの者が私がちゅくった押し花を取りに来ましゅの」


 押し花は作ってあるんだから慌てる必要は無いのでは?と思ったのは私だけかしら。

「問題は、うしゅい花はちゃんと押し花になっているんだけど、肉厚の花はまだ乾ききっていましぇんの。それにうしゅい花だけだと数がしゅくなくて・・・・」


「ということだ。お前ら、何か良い案はないか?後1時間くらいしたら使いの者が来るそうだ」

 みんなで深刻な顔をして唸っているけど、そんなに難しい事じゃないんじゃないかな?

 ボブなんてアドリエンヌ様をかばいたいあまり、顔が怖くなってるよ。

 ボブだけじゃなく、皆、ディアナ様には怒りしか感じないよね。

 アドリエンヌ様を追い詰める事でどんな利が彼女にあるのか理解できないよ。


「あのぉ・・・・」

「なんだ、アウレリア。良い案があるのか?」

「良い案かどうかは知りませんが、元々押し花は最近始めた事にすれば良いのでは?花いじりは専用の使用人がやっている前提ですよね?ならアドリエンヌ様が押し花を始めたのは数か月前で、押し花の種類を増やし始めたのもここ最近で、肉厚の花はまだ押し花になる途中だといって、それも渡してしまえばいいのでは?ウチの店で採集した肉厚の花だけは時系列がおかしくなるので省いちゃえば尚良いかもしれません。それか、風魔法か水魔法で物を乾燥する事ができるのなら、その手も使えるのでは?」


「「「おおおお!!」」」

「相変わらず、お前の発想は柔軟だな。よし!ウチには風魔法はセシリオとボブがいたな。水魔法はオレだけか?なら、乾燥できるか試してみよう。まだ押し花にしていない花をテラスから3本切って来てくれ」


 美男子が片手に花を持って佇んでいる様は絵になる。

 まぁ、ボブは美男子ではないが不細工でもないから、良しとしよう。へへへへ。

 3人共が肉厚の花を片手に、ウンウン言いながら魔法を行使している。


「水魔法なら、中の水分だけを抽出するイメージですかね。風魔法なら暖かい風を満遍なく当てて時間を掛けて乾燥させるイメージでしょうか?」

 地球の知識を元に、それぞれ必要とされる魔法のイメージを伝えると、皆感心した様に頷いてくれた。


 結論から言うと、どの魔法でも乾燥することは叶わなかった。

 ということで、押し花は最近思い付いて庭で花を切っていたところを、ディアナに見られて誤解されたという線で行く事にした。

 ウチの店で採集した肉厚の花だけ除いて、後は一纏めにして使者が来るのを全員で待ち受けた。


 使者は大人しそうなおじさんで、アドリエンヌ様と面識はあるが、普段から接する様な役職でもなく、遠慮がちに押し花を受け取るとさささっと帰って行った。


「今日は錬金術クラブの日なのに呼び出してすまなかったな」という闇王様の言葉に、メンバーの一大事だったので集まるのは当然と返した私たちにアドリエンヌ様が感謝の眼差しを向けてくれた。

 折角、部室に来たので、簡単に作れるさつまいものシュガーバター焼きを作ってみんなで食べた。

 ほっこり、そして熱々、控えめに入っている砂糖よりもさつまいもそのものの甘味を堪能でき、お腹も膨れるすぐれものだ。

 もちろんお茶はアドリエンヌ様が淹れてくれたよ。


「それにしてもあのディアナって人は要注意ですね。まさか本当にカサノッサ家に御注進するとは思いませんでしたよ」と言ったセシリオ様の言葉が私たちの上に重くのしかかった。

 今後は第三皇子とディアナをどうやって避けるかに力を注がないとだね。

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― 新着の感想 ―
押し花の案が最初に出た時に主人公が料理スキルの乾燥魔法で乾燥させて製作月日誤魔化す流れなんだとばかり思ってた てか押し花で誤魔化すのは先生含めて誰が考えても何も問題ない解決法だって書いてあったような。…
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