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 食材鑑定は既に何度か使っているから飛ばして、『調理具製作』を使ってみようと思う。

 ただ、どうすれば調理具を作る事が出来るのか分からない。

 野菜の下拵えの事を考えたらピーラーが欲しいのだけど、それには鉄、いや錆びない様にステンレスかな?そういうのが必要じゃないの?

 金属を扱うなら炉とかも必要になるのでは?

 もし炉があったとしても、私にはステンレスの配合なんて分かんない。

 ってことは調理具なんて作れないって事では?

 使えないスキルなのかな?


 このスキルを試してみたくても、手元にはステンレスどころか鉄もない。

 何か調理具を作る素材になるものはないかな。

 う~~ん。

 部屋を見回しながら考える。

 あっ!しゃもじ!あれは木製じゃん!

 急いで裏庭の一角に積み上げられている薪を一本取って来た。

 はぁはぁ。こっちの夜は暗いから、調理場から洩れる灯りを頼りに取って来たよ。


 ここではまだお米は見た事がないので、日本式のしゃもじではなく柄の長い木製のフライ返しを思い描きながらもう一度薪を手に取った。

 頭で木製フライ返しをしっかりとイメージして、『作れ!』と願ってみる。

 体から何かズルッと引き出される感じで手元の薪がフライ返しになった。

 薪だった時よりも遥かに黄色味が強い目の詰まった木目のフライ返しだ。

 木の種類が違うと思うのだが、すべすべの仕上がりで、何故か思った通りのフライ返しになっている。

 ムムムム!

 これって魔法の一種なの?

 さっき体からズルッと吸い出されたのはもしかして魔力とか?

 謎だ。

 

 魔力があれば材料がなくても作れるのかしら?

 材料を持ってない物を作ってみようかなぁなんて思いながら、フライ返しを『ストレージ』に入れ、何を作るか考えてみる。

 ステンレスの芽取り付きのY字型のピーラーが欲しいと思ったので、頭に思い浮かべて『作る!』と強く願った。

 体からごっそり何かが抜けて行き、私はそこで意識を失った。


 翌朝、いつまでも起きてこない私を心配して伯母さんが部屋まで様子を見に来てくれ、そこで床に転がって気を失ってる私を発見しびっくりしたらしい。

 そりゃそうだろう。前日までピンピンしていた幼子が、一夜明けたら床に倒れて気を失ってたんだから。


「昨日は初めての学校だったし、あっちの親戚の家にも行ったしで疲れちゃったのかもしれないねぇ。今日は1日ゆっくり休んで様子を見ようね」と私をベッドに入れ、飾り気のないナイトテーブルに水の入った陶器の水差しと木製のコップを置いて、「後でポリッジを作ってもらうから、それまで寝ていなさい」と私の頭を撫で、仕事に戻って行った。


 こうなるとお手伝いできなくてすみませんという気持ちと共に、スキル検証のための時間がもう1日取れたという思いが浮かんだのはある意味当然と言えるかもしれない。

 昨晩は気を失ったかもしれないが、今朝は頗る調子が良い。

 何から検証しようかと考えつつ眼差しを床に向けたら、壁際にピーラーが転がっていた。

 ベッドから降りて拾うと、私が昨夜思い浮かべた通りのステンレスのY字型ピーラーだった。

 しかも、私が使う所を想像しながらだったからか、サイズが子供の手にぴったりとはまる小型なのだ。

 おおおおおおおおおおお!これはすごい。


 何も無い所からでも調理道具を作り出す事ができるということじゃん。

 で、これは金属だからか、はたまた材料がなかったからか、体の中から引き出される物が大量に必要だったみたいだ。


 私はこっそり家から出て、庭の隅っこまで行きしゃがんだ。

 土を少し掘り起こして左手で上から押さえた。

 蓋つきの土鍋、それも一人サイズ。蓋と側面にはピンク色の梅の花を想像しながら『作れ!』と頭の中で願った。

 すると昨夜フライ返しを作ったのよりもやや多めに体の中から何かが抜けて行き、目の前には小ぶりで白地に梅の花が描かれた釉薬の土鍋が現れた。

 うぉーーー!やったね。

 しかも、昨夜は『作る!』と『作れ!』と二種類のキーワードでスキルを発動してみたが、問題はなかった。

 という事は、言葉は何でもよくて、作る物の詳細とデザインを細部まで考え、作る心算があれば作れるということだ。

 というか、昨晩と今日私がやったのはそういう事だと思うので、ほぼ間違いないと思う。

 もちろん作る度に体の中から抜けて行く何かが必要分あればということだろう。

 これは命つまり、寿命など、スキルを使う度に削られて困るものではないはずだ。

 でなければ他のスキル持ちたちがスキルを使うのを躊躇するはずだ。

 世の中、スキルを持つ事をこれだけ歓迎しているのだから、そういった類の物ではなくて、ラノベやゲームなどに良くあるMPと呼ばれるものではないかと見当を付けた。

 だって、昨日気絶する程持っていかれた何かが、一晩寝れば元通りなんだもの。

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