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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
天色の章 <前半>
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 ふぅ~。やっとドッジボール大会も終わったね。

 怪我人も出なかったし、盛り上がったしで大成功だった。

 一区切りついた事もあるし、私達は当面はドールハウス作りに励まないとね。

 即売会ももう2週間後に迫っているしね。


 放課後になって錬金術クラブの方へ出ると、大方の小物も出来上がっており、今は木箱に詰める作業を人海作戦でやっていたんだけど、ふと勇者様がこうおっしゃった。

「ねぇ、この木箱なんだけど、いろんな大きさがあるよね。統一感を出すためにマークを考えて焼き印を押してみたら?」


 この意見には全員一致で賛成で、早速デザインを考える事になった。

 小さい箱もあるから焼き印は小さい方が良いよねということで、小さな円の中にこちらの文字でMR FBAと5人の頭文字をデザインした物になった。

 読み方はミスター・フバだ。


「何か実際に人の名前みたいで結構いいネ!」とか、「どっかのおっさんが出て来そうだな」なんて意見もあったけど、最終的にはこれに落ち着いたのだ。


 焼き印の紋章が決まると、ランビットが「報告があるんだけど。漸く、このドールハウスとその小物や馬車の特許が取れたよ。でね、この焼き印のマークも登録した方が良いと思うんだけど、どうかな?」と言い出したので、これも登録することで一致した。

 しかしこれは錬金術の特許よりも商標登録に近いと思うので、フェリーペが実家に戻った時に父親に聞いて手続きをしてくれると言うことになった。


 焼き印が推された木箱をパカっと開けた勇者様が良い笑顔で、「これ、自分が欲しいよね」と箱の中に綺麗に並べられたお皿とカトラリーのセットを指でなぞっている。

 うんうん、メグたん。私もそう思う。

 出来たら妹のエイファーの分まで欲しいよ。


「ならさぁ、展示即売会が終った後に、自分たちのを作ろうぜ。ランビット、今までの設計図は全部保管しているんだろう?」とフェリーペが尋ねると、ランビットが頷いた。

「そんなら、人手が必要な時は助け合うってことにすればやり易いんじゃないか?」なんてボブも賛成してくれたので、今手元にあるものは全部即売会で売る事になった。


 私とメグは見本として飾るドールハウスの飾り付けを始め、ボブが説明文入りの看板を作っている。


 大きくドールハウスと書かれた看板の下の方に『人形やこのドールハウスを使って遊ぶだけでなく、館の管理を子供に教えてみませんか?』と言う謳い文句が踊っている。

 その更に下には、色や素材の組み合わせでインテリアについての素養を幼い頃から学ばせましょうとか、どの部屋が何の役目を持っているのか学ばせましょうとか、更に小さな字で箇条書きされている。

 馬車は内装・外装を変更して遊べますとも書いてある。


「ねぇ、メグ。こっちの部屋はピンクとグレーで纏めたけど、今度は台所やっても良い?」

「おおおお!素敵いぃ。うんうん、台所やってね。私、お風呂場の方やってみるね」

「うんうん」

「この家の食器セットは何色で統一する?」

「青?空色?どっちがいいかなぁ」

「じゃあ、空色にしちゃう?」

「うん。じゃあカーテンとかは目に痛くない黄色とかもいいかもよ~」

「そっか。一旦付けてみるから、後で感想を聞かせて」

「いいよ~」なんて、楽しくやり取りしているだけなのに、どんどんと見本のドールハウスは出来上がって行く。


 私たちが作業しているテーブルの横を通るクラブのメンバーも皆一度は立ち止まって馬車かドールハウスのどちらか、或いは両方に見入り「おっ!それいいなぁ」と感心して行く。

 今までも私たちがチマチマと色んな物を作っていたのは見かけているはずだが、こうやってドールハウスの中を飾り付けてるのは初めて見たはずで、だからこその感想だと思う。


 フェリーペが残っている木箱に焼き印を押している横でランビットは馬車を2種類組み立てている。

 それを横目で見ながらフェリーペが「そっちのは内装を革にした方が良くないか?」なんて馬車に気を取られがちだ。


 看板を作り終えたボブは馬車の全種類が一目で分かる様な絵を描き始めた。

 馬車の方はドールハウスと違って使用者の自由度が限られている分、元々の車体のデザインで違いを出している所もあるので、全部の車種の絵を並べるっていうのは良い案だと思う。


「夏の即売会では、村全体を作れる様に市場とか鍛冶屋とか教会とかいろんなのを作ってみたいな」とランビットが言うので、その場で全員が「「「うん」」」と同意し、このままこの5人で夏の即売会も準備する事を即決した。


 私たち全員がこれはもう絶対売れるねと確信しつつ、それぞれのその日の作業を終えた。

 フェリーペたちも勇者様も、もちろん私も錬金術クラブの作業進展に満足しつつ、次の日はあややクラブの部室へ顔を出した。

 恐らく、今日あたりはドッジボール大会の反省会と、実行委員会の皆さんとの感謝の会合についてが議題になるかななんて思いながらドアを開けると、とても緊張した空気に迎えられた。

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