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「保護者の皆さま、本日は当学園のドッジボール大会観覧の為、お忙しい中お越し頂きありがとうございます。試合は魔法授業用の4つの講堂に分かれて行われます。どの会場で何時、どこのチームが試合をするのか、また、終わった試合の結果は、4つの講堂の真ん中に設置されている掲示板をご覧下さい。生徒の皆さん、今日一日怪我の無い様に頑張って下さい」
錬金術で作られた拡声器でのアナウンスは、何故か私に任されてしまった。
こういう最初の所だけでも学園の先生にお願いしたかったよ。
「保護者の皆さまが各講堂の観覧席に着席されましたら、まずはドッジボール大会実行委員会のみなさんによるルール説明がございます。説明は最初の試合が始まる前の1回のみとなっておりますので、第一試合が始まる10:00までには何れかの講堂の観覧席へ移動願います。生徒の皆さまには事前に通達してある通り、観覧席ではなくコート周辺の所定の場所で観覧願います。応援団の皆さまは試合開始前のみ、コートの自チーム外側で演技をお願いします。それでは、後20分で第一試合が始まります。皆さま移動を開始下さいませ」
「アウレリアさんは、こういう案内をするのが上手だよね」と風魔法のフント先生が、拡声器のスイッチを切った私に話しかけて来た。
今回も準々決勝からはフント先生が解説をしてくれるので、横に待機してくれていたのだ。
フント先生お一人だとキツイと思われるので、セシリオ様も先生と一緒に解説をしてくれる予定だ。
拡声器は全部で4つ用意されており、私が今持っている物以外は、声が届く範囲を各講堂内に設定されている。
最初の案内は私が持っている拡声器を使って学園内の敷地全部に届ける様調整してあったので、今、私の真横でボブが火魔法の講堂用に声が届く範囲を変更してくれている。
ボブって錬金術に関しては本当に優秀なんだよね。
まぁ、それで言うと魔力はなくてもランビットも同じ様に優秀だし、私たちの年は錬金術の当たり年って言われてるんだよ。ふっふふふ~。
中央の掲示板に人だかりが出来ており、徐々に思い思いの講堂へ散って行く。
こんなに保護者が来るとは、全員がちゃんと4つの講堂の観覧席に納まるのかしら?
ルール説明は講堂内のコートを使って実行委員会のメンバーが少人数でデモンストレーションをしながら、拡声器を使って行う事になっている。
私の担当は火魔法の講堂なのだけれど、ルール説明のアナウンスは実行委員にお願いしているので、ゆっくりと講堂の方へ向かった。
上級生の委員を中心に何度も練習を重ねたルール説明だったので、本当にスムーズに進行していく。
実行委員会のみんな、優秀だよね。
ルール説明が終ると、2つあるコートの外側で順番に応援合戦が始まった。
応援が重ならない様に、各講堂の2つあるコートは、コートA、コートBとして周知し、コートAは10:30から試合開始となり、コートBは10:40からにズラしている。
三々七拍子は誰も私の様にリズムがズレている人はいなくて、手持ちのグッズの違いが見どころを作っており、試合が始まる前から会場の空気を可成り盛り上げてくれている。
娯楽が少ないものね。
応援すら娯楽になるんだよね。
演技するのも、見る方も、そして実は準備する方も道具作りの時から楽しいんだよね。
4年生の委員のおねいさんがそう言っていた。
保護者たちも身を乗り出して見ている人もいたりして、否が応にも会場の空気には熱が含まれている。
「ピピーっ!」
コートAの試合が始まった。
火魔法の講堂のアナウンスは、また私の担当に戻った。
「2年Cチームのゼッケン3番。コート外から中の味方に投げたーー!惜しい。スピードが足りなかった。対戦相手の3年Aチーム全員が、中からの攻撃する時にはボールの位置を把握していました。こういう外から中、あるいは中から外へ味方同士でボールのやり取りをしながらの攻撃はスピードで相手を翻弄しないとなかなか成功しません」
「あ、惜しい!今のはボールを敵チームに当てる事が出来たのですが、投げたゼッケン1番が投球後にラインを踏んでいました。だから無効ですね。投球後、姿勢が崩れるとラインを踏む事もあります。そうなるとその投球は無効になります」
と言う風に、まだルールに馴染んでいない保護者や1年生たちに分かる様に説明調のアナウンスを続けた。
お昼前には他の講堂でアナウンスを担当してくれていた複数の委員会の子たちが、代わる代わる火魔法の講堂まで来て、私のアナウンスを参考にするため聞いていたそうだ。
何か恥ずかしい・・・・。
大きな混乱もなく昼食の時間となっており、保護者たちも学園の学食を使うため、今日は生徒に限り寮の食堂でもランチが食べれる様になっている。
「リア、寮の方にする?」
「うん。保護者がいない方が落ち着くものね。メグもそれで良い?」なんて女子だけで決めても、フェリーペたちはちゃんとついて来てくれる。
いつもの席に座って魚料理を口に頬張る。
「今年は委員会のみんなの活躍の場が増えて、進行もスムーズで良い感じだよな」
フェリーペが今年の委員会担当なので、委員たちからの感想の声も直に届いて来ている様だ。
「1年の平民の委員。フェリーぺの事が好きみたい・・・・」
ぼそっとボブがぶっちゃけたので、フェリーペは顔を真っ赤にして「おまっ!何言っちゃってるの?そんな事ない!」と慌てぶりが凄かった。
「絶対、そんな事はないからな」と更に念を押してくる始末。
「本当は1人、いる・・・・」
ボブがまたぶっちゃっけているので、とうとうフェリーペは昼食をあまり食べずに会場の方へ戻って行った。
「リアは平気なの?」なんて勇者様が聞いて来た。
「ん?何で?平気も何もフェリーペの事だから、私関係ないよ」とツルンとした顔で応えると、ボブも勇者様も不思議そうな顔でこっちを見て来た。
前世と前々世の記憶がある私には、この学園のお子ちゃまたちは子供子供していて、恋愛の対象にはならないのだよ。ふぉふぉふぉふぉ。と、心の中で独り言ちた。




