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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
天色の章 <前半>
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 今日は父さんが城へ呼ばれているので、私たちは子供だけで王都観光はできないという事もあり、ランディは午前中家で良い子っこする事になっている。


 スティーブ伯父さんもトム伯父さんも自分たちの家をランディに見せたくて仕方が無いみたい。

 例のパーテーションを動かして居間を二つに分けたり、自分たちの部屋の収納なんかを見せたいみたい。

 従兄たちは今の所お互いに無関心を貫いているので、私に対しても、ランディに対しても、彼ら同士でも交流はほぼゼロだ。

 サブリナたちの姉妹間は五月蠅いくらいの口喧嘩は日常的なんだけどね。

 パンクなんて私やサブリナたちとは話をしないくせに、孤児院へ奉仕活動に行く時は孤児たちと良く喋るんだよね。

 何なんだろうねぇ。

 ランディの滞在中、せめて親戚の大人とだけでも交流があるのは良かったと言えるのかもね。

 

 父さんは先日の晩餐会に関してのお礼の言葉と先日の豚肉騒動の解明に呼ばれたらしい。

 今夜の夕食の時にでも皆に説明してくれるだろう。

 そう思っていたら、お昼の賄いの時間には父さんが帰って来たので、賄いを食べながら事の顛末を聞く事になった。


 ランディは豚肉事件の事を知らないので、私から簡単に説明して、その後は父さんの独り舞台となった。

「宰相様が既に城内での取り調べを終えていて、調理長が意図的に情報を隠蔽したと判明してたから、その内容の確認だけされたので直ぐに戻って来れたんだ」

 サブリナは一見興味がなさそうに聞いていたのに「調理長はどうなったの?」という質問が彼女の口から出た。

 そうだよね。当然、そういう質問は出るよね。


「首になったそうだよ。後、少し根に持つタイプらしいので、店の外に出る時は1人で外に出ないとか、注意をする様に」

「うわぁぁぁ、面倒臭い」

「これっ!要らない事を言うんじゃないよ」とマルタ伯母さんの拳骨がサブリナの頭の上に落ちた。


「みんなには迷惑を掛けるけど、ウチの敷地の中であれば、門の所の警備を潜らない限り安全だと思う。マンマたちには顎鬚の30代くらいの茶髪の平民には気を付けてくれ。不安だったら、城へ行った事のある雑用係を呼んで確かめてもらって構わないぞ」

「「はいっ」」


「後、料理に関しては宰相様からお褒めの言葉を頂いた。トマムたちが作ってくれたカクテルもすごく評判が良かったらしい。もちろん料理もデザートも諸手を挙げて褒めそやされたぞ」

「「「やったーーー!!」」」雑用係をしてくれた子たちが嬉しそうな声を上げた。


「おお!お前たちも良く動いてくれた。豚肉問題があっても、みんなのスピーディな対応で事なきを得る事が出来た。本当にありがとう。これからは晩餐会の影響で客が増え、更に予約を取る事が難しいとクレームが出るかもしれないが、ホール担当のみんなも、引き続き頑張ってくれ」

「そのクレームは開店当時からずっと続いてますよぉ」と言うフェイ伯母さんのニヤっとした顔を見て、みんなが笑った。


 褒められる事しかなかったので、みんな気分良く賄いを食べて昼の営業に突入だ。


 午前中に伯父さんたちの部屋や居間を見たランディは、非常に驚いていて「こんなにすんごい家に住めるってすごいなぁ。スティーブ伯父さんたちは独立する事が出来ても、ここに住めるなら独立したくなくなるだろうなぁ。それくらいすごいよ。住みやすそうだ」としきりに感心していたけど、午後からは店の営業状態も見て見たいとこのことで、貴族の多いホールは無理だから、皿洗い等を手伝ってくれる事になった。

 ランディが調理場にいるのなら、私も遠慮せず調理の補助を出来る。


 客の数が『熊のまどろみ亭』とは違うので、その分裏方の仕事も多くなる。

「こんなにお客様が来るとは思ってなかったよ。コース料理だっけ?一人の客が使う皿の量も半端ないのな」

 昼の営業が終るとランディは疲れてしまった様でお昼寝をしてもらう事になった。

 そうなると私は1人になったので、大公様の宿題に手を付けなくっちゃ。

 ランディがお昼寝から目が覚めたらちょっとプレゼンでもして、宿屋の息子としての意見を聞かせてもらおう。

 そう思って、今までの内容の見直しと、簡単なプレゼン用の資料を作ってみた。


 その作業を見ていた母さんが「私もそのプレゼン?ってのを一緒に見て見たいわ」と言って来たので、ランディが起きて来た時に父さんも呼んで3人と寝ているエイファーの前でプレゼンすることになった。


「これは大公様から頂いた宿題です。お題は貴族や裕福な商人が泊まれる宿屋を作る事。その時、その宿屋にはウチのレストランと同じレベルのレストランを作る様にって言われています。では、こちらをご覧ください」と、先ほど書いた紙を見せた。

 そういう風に小道具を使って説明を進めて行くと、ランディから困惑した声が上がった。

「ここの食堂の様なのがある宿屋なら絶対に流行るよ。しかもお金持ちしか使わない宿なら、お金にも困らないしね。でも・・・・それってそんなすごい宿屋を将来、ポンタ村にも造る可能性はあるの?」


「ん?今の所ないよ」

「でも、未来の事は分からないんじゃ・・・・?」と、不安そうな顔をしている。

「どうしたの?」

「家の客がそっちへ流れちゃうんじゃないかと思ったんだ」

 そうか、同業他社ではある訳だ。


「ランディ。あのね、顧客層って言葉知ってる?」

 そう聞くと、ランディだけじゃなく父さんたちまで頭の上にクエスチョンマークを浮かべている様な顔だ。


「お店によってお客様の層が違うのよ。例えば洋服屋さん。平民は、多くが中古品を買うでしょ?でもお貴族様のドレスは仕立て屋が貴族の館まで出向いて採寸するでしょ?だから同じ服というモノを売っていても、お店によってはお客が違うし、お客が違えば売り方も変わってくるんだよ。で、大公様の宿はお貴族様とお金持ちの商人に泊まってもらってお食事をしてもらう事。『熊のまどろみ亭』の宿泊は平民、お食事は平民とお貴族様だよね?」

「うん」

「とすると、被っている所は貴族の食事の部分だけだから、もしポンタ村に大公様の宿を作るとしても宿泊と朝食だけにして、お昼や夜のお食事は『熊のまどろみ亭』で摂ってもらう様にしてもいいんだし、やり方は色々あると思うから心配しないで。どっちにしてもポンタ村に建てる予定はないし、もしポンタ村やその近くに建てるとしたら、まずマノロ伯父さんに相談するよ」

「そっかぁ」とランディはまだ少し心配そうな顔をしていた。

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