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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
天色の章 <前半>
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「「「すごぉぉい」」」

 昨日の昼間に見た白い建物で円形の柱が飾りの様に建物の外に並べられているこの建物。

 夜の暗闇の中に煌々と明かりが点けられ、お貴族様が多いのだろう、豪奢なドレスを着た貴婦人を優男っぽい人たちがエスコートしながら入口に消えて行く。

 私たち一行も白い階段を上がって入口へ向かう。


「王都に来てから夫婦で外出するのは初めてだよねぇ」というマルタ伯母さんの一言にトム伯父さんは肩を竦めている。

「そうだよねぇ。家もそうだよ」とフェイ伯母さんの一言に、今度はスティーブ伯父さんの肩が若干狭くなった様だ。

 週1の休みの夜は伯父さんたちはたまぁ~に外に飲みに行くみたいだけど、伯母さんたちは基本家にいるしね。


 今夜はエイファーを産んだばかりの母さんが家に残り、伯父さん夫婦2組と父さん、ランディと私の7人で観劇なのだ。

 演目は良く知らないんだけど、劇団がある事すら知らなかったので、この世界で生まれて初めて劇を見る事が出来るので気分の高揚が止まらない。

 それはランディも同じみたいで、体がソワソワと動いちゃうみたいだ。

 つまり大人しく椅子に座って劇を見れないんじゃないかなぁ。


 広い入口の両脇には人がそれぞれ立ち、切符をもいでいる。

 父さんが差し出した切符を一気にもいで、手で中へ入る様に促された。


「「「うわぁ」」」

 天井には大きなシャンデリアが4つもあり、会場へ繋がる扉が6つある様だ。

 私たちの切符の半券を内扉の前に立っているスタッフに見せると、一番左側の内扉を示され、私たちは1階の中頃の席に着いた。


「スゴイ!何階建てなんだ?」

 トム伯父さんの感想に、ランディも大きな口を開けて上を見ながら階数を数えているみたい。

「上の階は全部お貴族様の席なの?」

「いいや、一番上は天井桟敷と言って1階の切符も買えない貧乏な人たちが見る席があるらしいぞ」

 スティーブ伯父さん夫婦は仲良く二人だけで会話している。

「それにしても廊下のシャンデリアもすごかったが、会場の天井画やシャンデリアもすごいなぁ」と父さんも口を開けたまま天井の方を見ている。

 みんな、スゴイしか語彙力がない様で、何度もスゴイを連発していた。


「それにしてもアウレリア、今日のお洋服はとっても素敵ね。お貴族様みたいに見えるわよ」

「マルタ伯母さん、ありがとう。私の服は観劇する為に、父さんがランディの服と一緒に買ってくれたの。マルタ伯母さんもフェイ伯母さんも、とっても綺麗。色味も良いけど、生地が綺麗なドレープを描いてて、伯母さん達こそお貴族様みたい」

「うんうん。ランディもその服だといつもより男前になってるよ」

「ありがとう、マルタ伯母さん」

 照れたのか、ランディの顔がちょっと赤くなった。


 ランディも真新しい服と靴で、最初は遠慮していたけど、一度着てみると見栄えも良く、着心地も良いので、嬉しさが先に来ている様だ。


 そんな感じで親戚一同でワイワイしていると、オーケストラが「ジャーン♪」と音を奏でた。

「ただいまより『ユリの谷の2人』を上演致します。燈を落としますのでお気をつけください」

 アナウンスのおじさんが舞台の上に立ち、大きな声で発表すると直ぐに舞台脇に捌け、同時に幕が上がり、オーケストラが本格的に演奏を始めた。


 この世界での演劇はオペラと普通の演劇が混ざった様な物だった。

 音楽はどちらかと言うと添え物という感が強い印象なのだが、主人公が嬉しくてたまらない場面では演奏に合わせて楽しそうに歌ったりする。

 でも、怒りの場面などではあまり効果音やBGMとしては力を発揮していない様に思った。

 恐らく耳に心地よい曲しか演奏をしないのだろう。

 せめて効果音くらいは付けてもいい気がするんだけどねぇ。


 でも、ストーリーは恋物語の割りには政治色が散りばめられていたり、経済の話が少し入っていたり、外国人まで出てくる国際的なエピソードがあり、結構大がかりな世界観の下進んで行った。


 最後は悲恋で終わり、多くの女性が泣いていて、エスコートの男性たちはここぞとばかりにお連れの女性の世話を焼いていた。


 前世振りにエンターテイメントを堪能できて、ただひたすら楽しかった。

「すっげぇ。王都、すっげぇ」とこれは我が一族の特徴なのか、少ないボキャブラリーでランディも楽しんだ事を仕切りにアピールしてくれた。


「お洋服もとても素敵だったわねぇ」

「ええ、本当に。どこで仕立ててるんでしょうかねぇ」

 ザ伯母さんズは女優たちの洋服も気になったみたい。


「アーノルドの『このユリの花を君にあげよう』という台詞、本当に素敵だった。マリアに君には未来があるし、自分の様に君を守る人がいつか出てくるよって意味でユリを渡すのがとってもロマンチック」とついつい見た劇について話すと、「あら、アウレリアはその年で良くアーノルドの言葉の意味が分かったわね。そうよね、自分はマリアと一緒に生きる事は出来ないけれど、心から彼女の事を心配している事がユリの花でよく伝わったわよね」とフェイ伯母さんも劇中の人物について熱く語ってくれた。

 今までマルタ伯母さんと比べると仕事のテリトリーが違うからか、フェイ伯母さんとはそこまで話をした事が無かったが、もしかしたら劇とか小説の話は、母さんやメグとかに比べてもフェイ伯母さんの方が気が合うかもしれない。

 新しい発見だった。


 ランディはキラキラしい劇場での体験にとても満足してくれたみたいで、王都滞在中、劇場の話は何度も繰り返された。

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