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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
天色の章 <前半>
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「あら、ミルコたちなの?お久し振り。いらっしゃい。どうぞこっちへ」と母さんが奥から出て来た。

「うわぁ、広いし綺麗だし、お日様燦燦だし、すごぉ~い」

 スリッパに履き替えたミルコが居間を見て大きな声を出した。


「ふわぁーーーん」

 エイファーが大きな声に驚いて泣き出した。

 赤ちゃんがいるとは聞いていたらしいが、ここに居るとは思ってなかったミルコはオロオロしちゃったみたい。


 母さんはニコニコ顔でエイファーを揺り籠から抱き上げ、まずミルコに「可愛いでしょう~」と赤ちゃんを見せ、ミルコの横にいるランディを見て「レティシア叔母さんよ。よく来てくれたわね。長い旅だったでしょう?」と膝を折ってランディの目の位置まで屈んだ。

「ミルコたちも昼飯に誘ったんだ」

「まぁ、良かったわ。一度はウチの料理も食べてもらいたかったから。じゃあ、手を洗いたいでしょう?洗面所はこっちよ」とミルコたちを連れて行った。


 大人たちが洗面所に行った後、「ランディの部屋はこっちよ。まず荷物を置くでしょ?」と私がランディの手を引っ張って客用寝室へ連れていった。


「うわぁ。広い。そして家具がとっても上等だ。お貴族様の部屋みたい」

「やだなぁ、ランディ。お貴族様程上等じゃないけど、ランディには心地よく過ごしてもらいたいから足りない物があったら言ってね」

「うおぉぉ、マジでスゴイ」

「そろそろ『麦畑の誓』のみんなも手を洗い終えたと思うから、洗面所に行って手を洗おう!」


「うわぁ。ここも広くて綺麗だ。これって鏡っていうヤツ?これって俺なのかな?あ、それ何て言う石?」

「大理石って言うのよ」

「これ、石鹸?すんごく良い匂い。やっぱりお貴族様の館みたいだぁ。俺は行った事はないけど、きっとお貴族様の館ってこんな感じなんだと思う!」

 ランディの興奮度合いを見て、微笑ましくなってしまった。

 お貴族様の館程ではないかもしれないが、確かに平民にしたら豪勢な家だと思うよ。


 居間に戻ると、母さんは昼食場所をサンルームにしたらしく、冬なのに花満開のサンルームのダイニングテーブルに布のテーブルクロスやナプキン、カトラリーを並べていた。

「母さん、手伝うね」と、グラス類を運ぶ。

 エイファーはお日様が直接当たるけど、大きな観葉植物のお陰でまだらに影になっている所に揺り籠が設置され、そこでスヤスヤ眠っている。

 さっきまでギャン泣きだったけど、母さんにあやされて落ちついたんだろう。

 私があやしても、父さんがあやしても泣き止まないんだけど、母さんやマルタ伯母さんがあやすと一発で大人しくなるんだよねぇ。

 こら、エイファー、姉さんを敬いなさいよぉ~。


 テーブルセッティングが終って皆に席に着いてもらうと、暖かいサンルームにみんなが感動したらしく、もう興奮が止まらない様子で、あれがすごい、いや、こっちもスゴイなんて会話が続いた。


 そんな時、玄関のチャイムが鳴った。

「お料理が来たみたいだ」と父さんが扉を開けに行ったら、サブリナが料理を運んで来てくれた。

「トム兄さんの所の長女だよ」と父さんが紹介すると、そっけなく軽く頭を下げたサブリナはとっとと下に降りて行った。

 恐らくだけど、3階まで階段を通って8人分の料理を運ばされるのが嫌なんだと思う。

 サブリナもサマンサも働く事自体はあまり好きじゃなさそうなんだよね。

 だから孤児院の奉仕活動もいい加減なんだよね。


 最初はアミューズなんだけど、スモークサーモンが綺麗に円形になる様に並べられたお皿の真ん中にエビとキュウリの角切りをマヨネーズで和えた物がこんもりした可愛いお皿だ。

 味の決め手は薄く切られた玉ねぎなんだよね。

「ん!これ、とっても美味しい。王都で魚介類を食べれるなんて思ってなかったよ」とキャンディが大きな目を更に大きくして幸せそうに食べている。


 ランディは無言であっと言う間にたいらげているので、気に入ってもらえたんだと思う。


 続いてのサラダは玉ねぎとシーチキンのサラダだ。

 ポン酢と鰹節を混ぜたドレッシングで食べるのが好きなんだよね~。

 もちろん店ではたくさんの種類のドレッシングが用意されているんだけどね。


「サラダはドレッシングが4種類あるから、ちょっとずつ全部の味を確かめてみると面白いかも」と母さんに言われて、みんな素直に4種類全部を試して満足そうだ。


 続いてキノコのポタージュ。これは王城の晩餐会でも出したのと同じ料理だ。

 それを言うと、「え?ギジェルモん所の食堂って王城で正式な晩餐会の料理を作ったの?」とドローレスがびっくりし、サバドなんて父さんを尊敬の眼差しで見つめてたよ。


「それにしてもスゴイ数の料理が出るんだね。これは食堂で出しているのと全く同じ料理なの?」とのミルコの質問に父さんは頷いて答えた。

「後、メインの料理とデザートでコースメニューっていうのにしているんだ。全てのお客様はメインの料理だけリストの中から選んでもらってるんだよ。その方が調理場の仕事も少なくて済むからね」


 普段、客席に出すのより可成り大きめの肉と魚の塩釜焼きが来た。

 もちろん私が木槌で塩は割ったんだけど、みんな驚いた顔をしていたな。

 白い大きな繭みたいなものが来たと思ったら、木槌で割られて、中から大きな肉の塊や大きな魚の丸焼きが入ってるんだものね。


「最初はお肉とお魚、両方とも少量ずつお出しします。お代わりは自由ですので、どんどんお代わりしてくださいね」とみんなのお皿に形良く盛り付けると、思い思いに食べ始め、お代わりもしっかりしてくれ、お肉もお魚も全部売り切れた。


「おっ!デザートが来た様だ」と父さんが言うと、サブリナが重たそうにトレイに載せられたいろんなデザートを持って来た。


 色とりどりのデザートはケーキもフルーツもどれも美味しそうで、ワクワクしちゃう。

 テーブルの真ん中にトレイを置いて、各自で好きそうな物を取ってもらう事にしたら、あっという間になくなってしまった。


「ふぃ~。もう、お腹いっぱいだよ。どれもとっても美味しかった」

「うん、うまかった!」

「どのお皿も綺麗に盛り付けられていて絵画みたいだった」

「今まで食べた事のない料理ばっかりで、本当に美味しかった。誘ってくれてありがとう」と『麦畑の誓』の面々には大好評だったみたいだ。


「美味しかった・・・・。ウチの店とは全然違う料理で、お貴族様の料理っぽかった。すごいなぁ」とランディは『熊のまどろみ亭』と比較していたみたいだ。

「ウチは食事しか出さないし、旅行者ではなくて王都にずっと住んでいる人たち相手だから『熊のまどろみ亭』とはお客様の求める物が違うんだ。『熊のまどろみ亭』の料理やパイとか、王都でも可成り有名だぞ。これだけ離れた所でも評判ってすごいことなんだぞ。誇りに思って良いと思うぞ」と父さんがランディの頭を撫でた。


「うん、私たちも仕事であっちこっちの町や村に行くけど、ポンタ村へ行ったら『熊のまどろみ亭』でパイを買うのを忘れるなって言うのはあっちこっちで聞くよ」とミルコも言ったものだから、ランディも少し元気になった様だ。

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