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「みんな、昨晩はお疲れ様でした。アウレリアは期末試験があるので昨夜の内に学園の寮に帰りましたが、晩餐会の成功にとても喜んでいました。普段の営業で忙しいのに、この1か月半、晩餐会の為に昼のアイドルタイムや夜遅くまで練習したり、アイデアを出してくれて、本当にありがとう。心から感謝します。昨夜、お城の宰相様からも、あの帝国の宰相様が甚く料理を気に入られて、皇太子殿下の留学先としてウチの国を考えていらっしゃるというお言葉もあったそうです。これもそれも、兄さんたちをはじめ、ナスカや下働きの皆のお陰です。ありがとう!」
父さんが晩餐会の翌朝、営業が始まる前にみんなを集めてそう挨拶したらしい。
私は冬休みに入ってすぐに母さんから教えてもらったよ。
しかも、その2日後に妹が生まれたのだ。
ぎりぎり師走前にウチは店も家も色々と今までの生活を変える出来事のオンパレードだったのだ。
ただ残念な事に期末試験中だったので妹がこの世に生まれてくる瞬間に立ち会う事は出来なかった・・・・。あう。
無事、期末試験を首席で終わらせ、一度だけ新1年生のクラスとドッジボールの練習試合をし、家に戻って来たら、妹のエイファーが客用寝室に置いてあるベビーベッドに寝っ転がっていたのだ。
このベビーベッド、ボブの力作なのだけど、実は同じ物の縮小版がドールハウスの備品として作られていたのにはびっくり!
私が作ったベッドメリーはこちらの文化には無い様で、エイファーを訪ねて来てくれたスティーブ伯父さんたちもびっくりしてたよ。
「これ、何のためにあるんだ?」
「全部布で出来ているのね。なら、口に入れても安全ね」
「ん?音がするな。しかし派手だなぁ。赤に黄色に緑に青!鮮やかだぁ」
「くるくる回ってるね」
「父さん、家にも可愛い妹が欲しい」
「もう、いるでしょっ!」
「私はかわいいって言ったんだよ。うるさい妹じゃないよ」
最後の方はサブリナたちで、折角エイファーが大人しく寝ているのに横で五月蠅くして追い出されてたよ。
ベッドメリーと全然関係ない話になってたしね。
相変わらずだよねぇ。
晩餐会が終了し、ウチの店の名声は以前にも増して不動の物となった様で、元々取りづらかった予約が更に取りづらくなっており、週1日の定休日を撤廃してくれって声が高まったんだけどね。
私は頑として頭を縦に振らなかった。
父さんは店の皆と話して、その分給料を上げてくれるのなら定休日は無くても良いという意見が殆どだったらしいが、サブリナたちが定休日は絶対いる!と言い張ったらしい。
私も休みは絶対必要だと思うから、定休日はいると思うよ。
店の大規模な掃除をしたり、月1の棚卸とかも必要だし、何より働く人たちの健康のためにも週1での休みはあった方がいいよね。
さて、この冬休み、私はエイファーと出来るだけ一緒に居たい。
でも、大公様からの宿題も進めないといけないし、ドールハウスを即売会までに形にしないといけないしね。
春に向けて伯父さんたちが魚のポワレを問題無く調理できる様になっているかどうかの確認もしないといけない。
後、ここの所足が向いていなかった孤児院でのお手伝いもそろそろやりたい。
そして、この冬休みは一つ楽しみな事があるんだよね。
なんと!ランディが家に遊び来る予定なのだ。
父さんがね、私がお世話になったから、マノロ伯父さんところにお礼がしたいって思ってたらしく、『麦畑の誓』の面々に頼んで『熊のまどろみ亭』後継ぎのランディを王都へ連れて来てもらって、王都がどんな所なのか、そして貴族や大商人がお客であるウチの店を見る機会を設けたいと思ってたんだって。
もちろん、家のエイファーを紹介したいってのもあるんだけどね。
そうしたらマノロ伯父さんから「是非、頼む」って言われたんだって。
ランディが家に居る間は、エイファーは父さんたちの部屋で寝て、客用寝室はランディに使ってもらう予定。
ランディが来たらどこへ連れて行こうかな~。
一度くらいはフェリーペやボブたちにも遊びに来てもらおう。
そうしたら顔見知りだし、同じくらいの年だし。
あ、そうだ!
レストランで一緒に食事をして、お客様気分を味わってもらおう!!
ランディには市場も見て欲しいし、家の温室もランディなら中に入ってもらっていいし、あ、そうだ。お洋服も王都の方が流行のがあるから、誂えてもらおう。
もちろん、服は私がプレゼントにするつもり。
なら、靴も新しく買った方がいいかな?これは父さんに頼もうかなぁ~。
後、点心も食べて欲しいし、お土産に梅酒も持って帰ってもらおう。
あはははは。来る前から帰る時のお土産を考えるのって、ちょっと変かな?
さて、産後なのでベッドで休んでいる母さんとエイファーに会いに行こう!




