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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
天色の章 <前半>
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晩餐会場にて(帝国宰相のひとりごと)

 オルダル国ってこれ程文化水準が高かったじゃろうか?

 食前酒に至っては鮮やかな色とりどりのカクテルと言ったかな?様々なお酒が用意されている事にも驚いたが、更にそれぞれのカップにフルーツや塩を使って装飾まで施されておったのだ。

 加えてカップが高価なガラス製の上に、カクテルに合わせてデザインの違う物が用意されておったのぉ。

 しかも、分厚いガラスや曇った緑のガラスではなく、透き通った無色のガラスというのは珍しい。

 この技術は凄い!

 しかもどのグラスも紫のラインが効果的に入っておった。

 このラインはどうやって入れたのか。

 吹きガラスでどうやって?

 それとも我が国が知らない新しい製造技術がこの国にはあるのだろうか?


 薔薇の花を模した皿は華麗の一言。

 色も鮮やか。味も良い。

 しかもあの皿に絵を描いたかの様な黒いヤツを付けると、更に違った味が楽しめる。

 一皿で魚と肉、両方を楽しめる一品だったのぉ。

 どうやったのか分からないが、冷めても美味しい肉というのは初めてじゃった。

 

 サラダも彩良く、胸にもたれない爽やかな一品で、フレッシュなチーズというモノを生まれて初めて食べたわい。

 チーズは臭くて固くて塩辛い物だと思っておった。

 まぁ、あの味に慣れてしまうと、あの臭さもまた美味しく感じれる様にはなるのじゃがな。

 しかし、トマトに重ねられておったチーズは匂いがあまりしなかったのぉ。

 弾力もあり、とても美味しく頂いたぞ。


 そしてあのスープ!

 滑らかでコクがあって、舌触りが良い。そして何より熱々だったのぉ。

 なんでも色んなキノコで作ったらしいが、野菜も肉も欠片も入っていないのに、肉もキノコもその他の野菜の味までしっかり味わえるスープだった。

 ドロっとしている所が今までのスープとは全然違ったのぉ。

 最初は、ドロっとしているからこそ手を付けづらかったのじゃが、かの国の宰相が嬉しそうに口に含んでいたので、思いっきり良く口に入れてみれば、美味いのなんの。ふぉふぉふぉ。


 メインの料理も、生クリームと言ったか?

 牛の乳の様な物で軽く煮込んであったが、元々焼いた肉なのであろう、歯ざわりは焼いた肉の物に近く、コクがあり、何より美しい一皿じゃった。

 キノコと豆が形良く並べられて、見るからに美味しそうであったのぉ。


 デザート!これも初めて食べる物じゃった。

 滑らかなくちどけ。チーズで作った菓子と言われたけど、チーズ独特の臭みもなく、甘く美味しい菓子じゃった。

 しかも土台の部分はサクサクでちょっと香ばしくて、その上のチーズの部分の甘味と丁度良い塩梅じゃった。

 はぁ~、とっても美味しかったのぉ。


 昨日の晩餐のメニューはどこの国でも出てくる普通のメニューじゃったのに、正式な晩餐会となると出てくる料理がこれ程までに違うのか・・・・。

 こんな水準の文化を持っているのなら、ウチの皇太子の留学先として候補国の一つに組み込めるな。

 少し前のオルダル国は中堅と言うだけの特に魅力のある国ではなかった。

 他の小規模国との違いはそれ程なかったしな。

 何があったんだろうのぉ?


 ウチの帝国は皇后が生んだ3人の皇女と側室たちが生んでいる皇子たちがおる。

 このオルダル国と違い、ウチの国は女性だからと言って位を継げないということはない。

 順当にいけば皇女の一人が女帝となるはずなのだが・・・・。

 現皇后は外国の王女の出で、側室は4人いるが、第三皇子の母親はウチの国の貴族の出だ。


 他国出身の皇后の子より、ウチの貴族の子の方が何かと国が纏まりやすいし、外国の紐が付いてない皇帝というのは理想的じゃしのぉ。

 万が一、皇女たちに何かがあって側室の子が帝位を継ぐ事になれば、バックにどれだけの力があるのかと、他国にどれくらの伝手があるかが重要になる。

 これはあくまで伝手であって、紐であってはいかんのじゃがのぉ。


 そういう事を考えると、儂が推している第三皇子をこの国に留学させるのも良案かもしれんのぉ。

 これ程の文化を作り上げている国なら、その中心人物達と懇意にする事によって帝国での文化の発信者の地位も築けるかもしれん。

 うん、留学は良い案かもしれんのぉ。


 この国には第三皇子の母の妹が嫁いだ貴族家がおったな。

 あそこには皇子と同じくらいの女の子がいたはず。

 となれば、学園内でも何かあったら頼れる者がおるということじゃ。

 よし、この国へ留学させよう。

 

 ならば、ウチの皇太子が留学するかもとこの国の宰相に一言言っておくかぁ。


「実は現在、ウチの第三皇子の留学先をいくつか検討しておりましてな、貴国の学園も候補として考えておるのじゃが、海外の王族や皇族の受入はどうなっておりますかな?」


「留学ですか・・・・。もちろん、受入は可能でございますが、ウチの国は可成り幼い内に入園し、4年間のみの学習になります。卒園の後は仕事に就いたり、研究所や各種ギルドに所属して更に知識を深めるという他国とはちょっと違った教育制度ですが、その辺りの違いは大丈夫ですか?」


 そうか!ウチの国だと学校は7歳からで飛び級ありの5年の就学。その後は大学が3年ある。オルダル国とは違う制度だったなぁ・・・・。

 その違いをどうするか。

 年齢的には入園しても問題ないくらいの年だが、帰国してから大学へ入学するまで複数年、間が空くなぁ。


 でも、待てよ・・・・。

 大学までの数年は第三国へ留学すれば、そこでの知己を得る事だってできるな。

 これはアリじゃな。


「問題ないはずじゃ。今ウチの第三皇子は7歳になるので、こちらの学園に入園するのに問題は無いはず。卒園の後は、我が国の大学へ通えば良いだけじゃな。まぁ一度、国に戻ってから本人や周りの者と話してみんと何とも言えんが、もし、留学したいとなったらよろしく頼みますぞ」と聞いてみたら、かなり良い感触の返事を得る事ができた。

 よし、帰国後すぐに留学を提案してみよう。


 しかし、本当にいつの間にここまでの料理の水準、ひいては文化の水準が高くなったのか。

 この国に放たれている情報提供者からは料理についての情報はなかったはず・・・・。


 最近あった情報というと、昨年新しいスタイルのレストランが出来たというレポートがあったくらいじゃったか・・・・。

 この情報がこの晩餐会の料理と関係しているのだろうかのぉ?

 でも、そのレポートには大きな庭園付きで、都会にあっても自然を楽しみながら食事が出来るって書いてあっただけで、特筆した内容ではなかったはずじゃが・・・・。

 何か色々書いてあったかもしれんが、王都にある1軒のお店の情報等そこまで大事ではないから中身はあまり覚えておらんなぁ・・・・。


 それにしても、この晩餐会に出席している王室の者や貴族たちのいでたちは数年前とあまり変わっていない様に思う。特出すべきは料理のみかのぉ。

 でも、食事の時に音楽を奏でるというのは今までは無かった習慣じゃな。

 会話の邪魔をしないくらいの音量で、心地の良い旋律を聞きながら食事をするというのはウチの国でも取り入れたいのぉ。


 ふむ、この国について色々判断するためには、まだまだ情報のピースが足りんのぉ。

 よし、情報提供者にもっと情報を提供させようかのぉ。


 そうだ!留学先をオルダル国にするのならば、皇太子の側近としてウチの城の調理長の息子を付けるか・・・・。

 うん、この料理の技術を得る事ができたら、将来ウチの国にとっても大きく役に立つだろうしな。


 ああ、それにしても美味しかったのぉ。

 もっと食べたかったなぁ。

 ゲプゥ。

 おや、儂とした事が腹いっぱいに食べてしまった。ふぉふぉふぉふぉ。

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― 新着の感想 ―
卑劣な妨害はあったが、それに負ける事なく、任務完遂 しかし、この料理長、正気なんですかね? 他国の、しかも格上の国の重鎮を迎える会合に、料理人の嫌がらせとは……下手をしなくても、首と胴が離れることにな…
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