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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
天色の章 <前半>
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31

「今回の城への出張料理で心配しているのが、城側が用意してくれる食材なの」

「ん?城が用意するんだから最高級の物を用意してくれるんじゃないか?」

「父さん、お城の厨房の人にとって、自分たちじゃなくって城の外の人間が自分の職場に乗り込んで来るのってどんな感じだと思う?」

「あっ!」

「うん、恐らくだけど面白くないよね?」

「そうだな」

「もしかしたら足を引っ張られる事も考えておかないとダメだと思うんだ」

「そうだな。お前は、本当にすごいな。そんな事にまで頭が回るんだな」

 母さんも心配そうにこちらを見ている。


「かと言って晩餐会そのものが失敗すれば、調理場の責任者たちの首が物理的に飛んじゃうかもなので、あからさまな妨害はないとも思ってるんだ」

「ん?でもウチが調理を失敗しても城の調理場の責任者は責任を問われないんじゃないか?」

「その調理の失敗が食材の調達や保存の方法に起因する場合は、もちろん城側の責任が問われるよ」

「そうかぁ。それもそうだな」

「だから、ウチとしては保管してもらう食材の質とかをちゃんと事前に確認させてもらう事が大事だと思うんだ」

「なる程な。仕入れた時にウチの人間もチェックをしていれば、その間に劣化したら保管している側の責任という事になるな」

「う~ん。というか・・・・前もってウチの人間がチェックしていなくても、当日調理できないくらい劣化した食材を提供されたらそれだけで城側の責任ではあるんだけど、仕入れされた物の質を知っていれば、態と保管の手を抜いたのか、単なる事故とか、どういう風に足を引っ張りたいとかの予想はつくんじゃないかと思うの。後、仕入れ時と調理直前は食材鑑定スキルのある私をおいて他にちゃんと把握できる者はいないと思うの」

「そうだな。大公様が口を利いて下さるなら、お前も城へ入れそうだしな」

「うん。だから、学園は仕入れが始まる頃にも休みを貰って対応した方が良いと思うの」

「おお」

「それと、城とは別にウチの店でもある程度は食材を用意しておいた方が良いかしれないなって。ただ、安い食材ではないのに購入すると、当日使わなければ大きな損になるかもだけれど・・・・」

「それは心配するな。当日、人数分料理を提供できない方が問題だからな。前もって相談してもらって良かった。私ではそこまで頭が回らなかったよ」


 父さんは庭師だものね。料理の事は専門家ではないし、しょうがないよね。

 ベーコンとかスモークサーモンはウチでしか作れないので余分に作っておくこと、野菜なんかも温室をフル活用してできるだけ必要な野菜を作っておいてもらう事を決めて、父さんは店の方へ下りて行った。


「アウレリア、あなたは本当に頭が良いのね。スキルも人並み以上に持っているしね。何にしても、親が幼い子供を頼りにしてしまっていて本当に申し訳ないと思うけど、でもあなたが料理を楽しんでやってる事も分かるので、母さんたちはあなたが楽しんでいる内はこのままで良いと思っているのよ」と、頭を撫でられた。

「うん。楽しいよ。料理を作るのも、店も、とっても楽しい。最初は学園に行くよりもお店をやりたかったけど、友達が出来ていろいろと学園でも活動をしたりして、今ではとっても楽しいし、お店の方も父さんたちがしっかり守ってくれてるから安心できるし、今のこの形が最善なんだなって思ってる」

「そう」と、母さんは優しい目で、また私の頭を撫でた。


 お茶を出した時、お茶や食べ物で汚れない様に脇に避難されていたパッチワークを再び手にし、チクチクと針を動かし始めた母さんに黙って寄り添った。

 会話は無かったけど、とっても落ち着いた気持ちの良い時間だ。

 サンルームの中では春の花も咲いていて、色とりどり。

 それを見ながらアドリエンヌ様を思い出した。

 本当は部室にも小さなサンルームを作れば、アドリエンヌ様が大好きな薔薇を一年中咲かせる事も夢ではないんだけどね。

 温室やサンルームのガラスはスキルでなければ作れないので、流石に部室に作るのは難しいけどね。


 あややクラブに意識が向けばついついファティマ様の事を思い出した。

 忘れていたけど父さんに聞かなくちゃということで、私も下へおり、聞いてみた。

 父さんの所には何も話が来ていなかった様で、こちらからモンテベルデ家当主にお伺いを立てるのも平民としてはNGだとのこと。

 結局何も分からなかった。


 毎日の営業でたくさん料理を作っている上に、晩餐会メニューの練習でも料理を作りまくっている伯父さんたちの負担を軽減するために、今夜は私もお店の手伝いとして調理場へ入る事にした。


 新学年になってからはナスカたちがいた孤児院へはお手伝いに行く事ができてないのが気になるが、ザ孤児院ズはお手伝いに行っているみたいなので、父さんに言って食材だけは少し孤児院へ分けてもらおうとしたら、「少量だけど、それはずっとやっているから安心しなさい。それよりも孤児院がやってるホットドッグの出店の相談とかに乗ってあげなさい」って言われちゃった。


 色々、手抜かりなくやってる心算だったけど、あっちこっち抜け抜けだったことに気付かされた週末だった。

 それでも父さんが「お前の年でそれだけ出来たら驚異的なんだよ。心配せず、出来る事だけをやりなさい。何か抜けていても父さんたちでカバーできる所は父さんたちがする。でも、お前がちゃんと孤児院の事も気に掛ける優しい子であるのはとても嬉しいよ。これからが大変な時。一番重要なのは体調管理だぞ」と頭を撫でられた。

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― 新着の感想 ―
誤字をこのページで見つけたのですが、私では前後の文とうまく繋げた言葉に出来ないと思ったので、こちらから失礼致します。 〉〉晩餐会メニューの練習にかてて加えて毎日の営業で料理を作りまくっている伯父さん…
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