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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
天色の章 <前半>
233/553

26

 球技だと普通なのに、それ以外の運動は苦手なのかも?

 ダンスをまともに踊れなかったのが、実は相当堪えているんだよね。

 しょんぼりへにょんだ。


 そこで!器械体操全般が苦手なのか、ダンスだけなのかを見極めないとっ!と週末になるのをずっと待っていたのだ。

 だって、学園にはマットなんてないもんね。

 家に戻った時にベッドのマットを床に降ろしてもらってでんぐり返りをしてみたかったのだ。


「父さん、ベッドのマットを床に降ろして欲しいの」

「え?マットを?日干ししたいのか?」

「あ、日干しもしたいけど、今回はマットの上で運動したいけど、ベッドの上だとベッドから落ちて怪我をするかもしれないので、一旦床に降ろして欲しいの」


 父さんにはマットを使って運動って?って感じでちゃんと理解してもらえなかった様だけど、必死で頼んだらちゃんと床に降ろしてもらえた。

 寮の私の部屋と同じで、実家は土足厳禁なので床に物を置いても比較的汚れたりしないのだ。

 最初、父さんたちはこちらの大半の人と同じで靴を履いたまま生活するのが普通だったけど、フローリストガーデンの上の階に住む様になった時、滅茶苦茶お願いして何とか3階だけ土足厳禁にしてもらったのだ。

 今では掃除が簡単だし、足を休めてる感が半端ないので両親共気に入ってくれているみたいだ。


「どうやって床のマットで運動するんだい?」

 父さんは不思議そうな顔をして、寝間着のズボンを履いた私を見ている。

 妊娠後期で滅多に下に降りない母さんも、何が始まるのかとワクワクしながら父さんの横に立っている。


「でんぐり返りっていう運動なの」

 徐にマットの端で両手をついて、勢いを付けてくるりんと回った。

 いや、くるりんと回ったつもりだった。

 最初の勢いは足が倒立の位置になったあたりで、体が一瞬止まって、無意識に腹筋を使い、同時に手でマットをなんとか押して漸く回ったが、コロンとマットから落ちてしまった。

 つまり、真直ぐに回る事が出来ず、途中で回る勢いが失速して、無理やり回ろうとして体がズレ、とうとうマットから落ちてしまった。


 ふわぁぁ。ダンスだけじゃなくって球技以外はやっぱり苦手なのかな?この体。


 母さんは私の様子が可愛かったのか「あら、アヒルさんみたいね」と大いにウケている。

 愛おしそうな瞳で見つめられているのは分かっているんだけど、恥ずかしいという気持ちの方が先だった。

 もし他の子供が一生懸命でんぐり返りをしようとして、コテンとぎこちなくマットから落ちてしまうと、初めてのお使い的な可愛さがさく裂して微笑んでしまう事まちがいなしなんだけど、自我がちゃんとある自分がその対象って結構キツイよぉ。


「なんかお前の小さな頃を彷彿とさせるな」なんて父さんが母さんに言ったもんだから、「えええ?私はちゃんと何でもできましたよ」と反論されてしまっている。

 母さんの強い口調に焦った父さんが「父さんもやってみよう。これって健康に良いんだよな?ここに両手をついて、勢いを付けて回ればいいのか?」と言ってでんぐり返りをしようとしている。

「・・・・うん」

 父さんは簡単にぐるんと回った。


「あ、途中で勢いを殺して止まるのを忘れていた」

 いやいや父さん、勢いを止めなくていいから。

 ちなみにマットから落ちなくていいんだよぉ。


 私は10回以上でんぐり返りにチャレンジしてみたけど、見事に毎回マットから転げ落ちた。

 うん、すっぱり、きっぱり諦めた!

 私に器械体操もダンスも無理だ。

 なんでだぁあ?

 前世では出来ていたのに。

 綺麗な顔とスタイルを母さんから貰ったけど、漏れなく運動音痴スキルも付いて来ていたとは・・・・。

 と、母さんが本当に運動音痴かどうかは知らないが・・・・。


「おっ!これ肩こりが取れる?」なんて父さんはまだでんぐり返りをしている。

 もういいよ。好きなだけマットで運動してね。

 但し、後でちゃんとマットをベッドに戻して置いて下さいね。


 マットは無視して、母さんの膨らんだお腹に手を当てさせてもらう。

「ね、今蹴ったね」

「うん!蹴ったね」

 初めての体験だった。

 前々世では結婚する前に亡くなって、前世では結婚はしていたけど子供はいなかった。

 どちらの世界でも兄弟姉妹はいなかったので、身内が妊娠した経験もなかったのだ。

 友達が妊娠してもお腹を触らせてもらう事もなかったなぁと思いつつ、更に母さんのお腹を撫でる。


「妹かな?弟かな?」

「どっちでしょうね。アウレリアはどっちが欲しいの?」

「どっちでも嬉しいよ」

 そう答えると母さんが嬉しそうだ。

「お姉さんになるから、妹でも弟でも優しくしてあげてね」

「うん!」


「父さんもどっちでもうれしいぞ」

 よいしょとマットをベッドへ戻しながら、父さんも会話に入って来た。

「はぁ、しかし、この運動、体の色んな所が伸びて気持ちいいな」

 そんな事を言われるとアレを教えたくなってしまった。

 アレだよアレ。

 日本国民が小学生の時、必ず覚えるアレ。

 夏休みには近所の小学生たちが集まってやる体操の事だ。


「♪チャンチャカチャーン、チャンチャカチャーン、チャチャチャチャチャンチャカチャーン」

 例の曲を歌いながら両腕を振り上げると、父さんも真似をする。

 第一の深呼吸まで行くと、「おおおお!こっちの方が肩こりが治る」と目をめいいっぱい見開いた父さんに、もう一度とリクエスト頂きました。

 はい、よろこんで~とばかりに、もう一度やったけど、もうこれ以上はやるのも歌うのも無理!

 ということで一旦お開きに。


「しかしアウレリアは変わった事を知っているね。学園で習うのかな?」

 なんていう両親の会話を背中で聞きながら、ベッドに納まったマットにベッドメイクをした。


 はぁぁぁ。運動音痴。

 悲しい・・・・。

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― 新着の感想 ―
母上も運痴ですかww 正しく遺伝しているんですね そういや、うちは音痴の家系です
揚げ時間だったり、料理ってタイミングが重要だったりするみたいだし、運動音痴はともかくリズム感が悪いのはよろしくないのでは。魔法で対策できるのかな。
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