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「え?先生、何でここへ?昨日アドルフォ様が会合は別の場所でって言われてましたよね?」
フェリーペが部室の入口でガスペール先生に対応している。
その声には困惑の度合いが色濃く出ている。
「ここはあややクラブの部室で、部に所属している人は中へ入れる。これで合ってるか?」
ガスペール先生の方は飄々としている。
「はい・・・・」
「じゃあ、俺は中に入れるぞ」
「え?」
「今日からここの顧問だからな。じゃあ、中へ入るぞ」
「え?えええ???顧問?」
「そうだ。どこのクラブも顧問の先生が管理しているんだぞ。お前ら4人が在籍している錬金術の顧問も俺だがな。知らなかったのか?」
「え?先生、錬金術の部室に顔を出された事ないですよね?」
「当たり前だ。俺は錬金術なんて興味ないし、あそこではおやつは出ないからな」
そう言ってガスペール先生はずんずんと部室の中に入って来た。
「皆、良く聞いてくれ」
腐っても鯛。さすが先生なので大きな通る声で話すのに慣れている。
その声で呼びかけられて、作戦会議室にいた闇王様や階段下の図書スペースに入り込んでいたセシリオ様が顔を出した。
「今日から俺がこのクラブの顧問となった!」と言って悪い笑みを浮かべる中年男。
フェリーペが二階にいるであろうボブとアドリエンヌ様を呼びに階段の方へ行くと、「ああ、二階もあるのか。じゃあ、ちょっと二階も見せてもらうぞ」と言ってズンズン階段の方へ移動するガスペール先生。
いつものやる気の無さはどこへやら。
あの先生でも好奇心があるんだなぁなんて思ってたら、二階から「うほほほ~」っていう変な声が聞こえて来た。
みんなで二階に上がると、ガスペール先生は早速ソファーにドカっと姿勢を崩して座り、自分の家が如く寛いでいる。
「何なんでしゅの?」
アドリエンヌ様がテラスからソファスペースに入って来て、驚きの声を挙げた。
「丁度良い。皆座れ」
皆が大人しくソファやゲームチェア擬き、自立ハンモックに座ると、「さっきも下で言った通り俺がこのクラブの顧問になったから、今日からよろしくな。まぁ、活動は今までの通りでいいぞ。あっ!」と言って、私をヒタと見た。「おやつは毎日俺のも頼むな」と言って、先生の宣言はこれで終わったみたいだ。
闇王様が最初に呆気にとられた状態から戻った様で、「先生、顧問なんてオレは聞いてないんですけど?」と可成り強い口調で言うと、「ああ、だって今までは学園長が顧問をされていたんだが、このクラブは色んなイベントをするだろう?クラブと学園を密に繋ぐ役が必要だという事になって、ドナルド先生と俺に白羽の矢が立ったんだ。で、まぁ、どちらかの先生が顧問になった方が連絡が密になるぞって学園長の耳元に囁いたら、じゃあ俺でって事になったんだよ」と、ニヤっと笑った。
「え?でも、先生。連絡役なんてやる気ないですよね?」とフェリーペも遠慮が無い。
「当たり前だ。それはドナルド先生がやるだろうよ」
「「「うわぁぁ~」」」
平民4人の口から同時に呆れた声が出た。
貴族組はまだガスペール先生がどんな先生なのか知らないから、どうして私たち4人が呆れているのか分かってない。
はぁ~。
ガスペール先生は働く事は悪っていう考え方なんだよぉぉぉ。
ぜ~~~ったい、絶対におやつと寛げるスペースを求めて、ドナルド先生を出し抜く様に顧問になったんだと金貨100枚賭けられるよ、私。100枚も持ってないけどな!
「じゃあ、俺はここにいるから、おやつが出来たら呼んでくれ。お前らもいつもやってる事に戻っていいぞ」と言うや否や、メグと私が並んで座って居た自立式ハンモックを独占するべく、手で追い払い、さっさと横になって昼寝を始めた。
私達は全員で1階へ駆け降りた。
作戦会議室の机を全部引っ付けて小声で話し始めた。
「おい、これはどう言う事だ?」
闇王様がフェリーぺにそう尋ねたのは、ガスペール先生が私たちの担任だということを知っているからだと思う。
「ガスペール先生って、仕事するのを極端に嫌がる先生で、結構何でもなぁなぁでやっちゃうんです。多分、昨日ウチのおやつを食べて気に入ったのと、職員室に居るよりもここの方が寛げると思ったから顧問を買って出たんだと思います」
「面倒じゃないのか?」
「面倒は面倒ですが、欲しがる物さえ与えておけば大人しくしてると思います。それか、めちゃめちゃ仕事を増やして、ここに居たら働かないといけないとなったら顧問を辞めるかもしれません」
「待って、フェリーペ。そうしたら今度はガスペール先生の代わりにドナルド先生が顧問になるんじゃぁ・・・・」
ボブ、それは鋭い意見だね。
言われてみれば私もそうなると思うよ。
「アディ、熱血漢のドナルド先生が顧問だと、こちらの仕事が増えそうだよ」
「そうでしゅわ。なんとか学園長に、顧問に戻ってもらえれば一番でしゅけど、そうでなければまだガシュペール先生の方がマシかもちれません・・・・」
一瞬沈黙が私たちの上に落ちて来たが、直ぐに闇王様が反応した。
「分かった。まずは学園長に顧問に戻ってもらえるかどうか確認してみる。だめなら・・・・皆諦めてガスペール先生を受け入れてくれっ」
闇王様が可成り悔しそうだ。
恐らく学園長に掛け合っても忙しい学園長が顧問に戻る事は無いと踏んでいるのだろう。
ウチの担任って・・・・マジ、変なヤツ!!!




