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「ポスター出来た?」めずらしく闇王様がメグたんに直に話しかけた。
どうも闇王様的には照れてるのかな?メグたんに直接話し掛ける事って普段から少ないよね?
それとも闇王様がメグを好ましく思っているっていうのは私の思い違い?
いやいや、ゴンスンデで皆を振り切って、自分だけ午前中メグたんと過ごしてるあたり、やっぱり好きなんだよね?
「あ、はい。リア、ポスター持って来て」
「は~い」そう言って昨日描き上げたポスターをメグに渡した。
「こうやって開催日時の所は敢えて何も描き込んでないです」
メグが闇王様にドッジボール大会のポスターを見せた。
昨年のポスターは闇王様をデフォルメしたアバターと、その背後にドッジボールのコートやボール、賞品の飲茶の絵が入っているけど、今回は同じ様にデフォルメされた闇王様のアバターだけを載せている。
しかしその闇王様アバターはドッジボールをしている事が見て分かる様に描いてある。
オーバーハンドで体を捻りながら、投げる方と反対の手を前に出し、今にもボールを投げつけるかの様なポージングだ。
「か、かっけぇぇ」
横からポスターを見たフェリーペが目を輝かせている。
褒められて悪い気がしない様で、闇王様はちょっとドヤ顔。
いや、フェリーペが褒めたのは私の画力だからね。
「よし!今年のポスターはこれで行こう!2枚余分に作ってくれ。家の者に見せる」
ほうほう、親に自分の活躍を見せたいんだね。
うんうん、分かるよ。
「それで実行委員会ですが、その募集もこのポスターに入れますか?」
昨年度、一度体験しているからか、今年はメグが率先して仕事を進めてくれている。
うんうん、頼りになるね。流石、勇者様だよ。
お陰で、私は晩餐会とか大公様の宿題にかかりきりになれるので、めっちゃありがたいよ。
「いや、一緒にすると実行委員会の立ち上げが遅くなるから、委員会募集のポスターは文字だけで良いから先に作って貼ってくれ」
「はい。じゃあ、リア、よろしくな」
「え?文字だけならフェリーペが書けるじゃん」
「えええ?俺の字、お前程綺麗じゃないからな・・・・」
「じゃあ、私が書くよ」と、勇者様が請け負ってくれた。
フェリーペめぇ。勇者様の仕事を増やすんじゃない!
折角、皆の協力で私の仕事量が減ったって喜んでたのに、感謝の気分が台無しになったよ。プンスカ。
「アドルフォ様、実は試合の得点についてですが、スクリーンに映し出す事を考えてみました」
珍しく自分からイベント関連の提案するボブが新鮮だ。
画像板みたいな透明な板に手書きで数字を書いた物を数枚用意したみたいだ。
ボブの左手には漢字の日を横にした様な薄い金属枠が握られている。
横にした日の左右の端はスリットになっていて数字が書かれている透明板を差し込むと丁度の大きさになっている。
フェリーペが部室1階のカーテンを全部閉め、薄暗がりを作った所へ、前もって二人が運び入れていた投射機に数字を並べた例の金属枠をセットすると、2チーム分の得点が壁に投影された。
「「「おおお!!」」」
「全試合、これを使うのはスクリーンの数がかなり必要になるので、準決勝辺りから使ってみませんか?それなら1組で済むので」
「それいいな。後、今2枡に分かれてるけど4枡にして、得点の上にチーム名を入れる事はできないか?」
闇王様が言いたいのは金属枠を漢字の日から田に変更する事で、チーム名の所を細くして数字が目立つ様にするというモノだった。
2年目になって私独りでは考え付かなかったいろんな事を皆がそれぞれ考え始め、イベントを更に面白くしてくれそうだ。
本当にみんな自由な発想ですごいよ!
正直言ってやらないといけない事が多くて、もう押しつぶされそうで、自分でも知らないうちに楽しむより苦痛を感じる様になってたみたい。
でも、こうやって皆がそれぞれ考えて動いてくれると、その重石が軽くなった気がする。
実際、昨年も考え出したのは私で皆で手分けして作業を進めては来ていたのだけれど、どの様に実施するかまで一人で考えていた感じだったので今年もそうなるのかと溜息交じりに思ってたんだよね。
ありがとう、ボブ!ありがとう、メグたん!ありがとう、皆!!
「じゃあ、ボブの案を採用で。そうしたらチームの紹介画像板も必要か?」
おおおお!闇王様も見栄えとか観客の事を考えてくれる様になってる。
鳥人コンテストは本当に実施するまで辛かった。
準備を進めて行けば行くだけ、思ってもみなかった作業が必要になったり、横の連携で歩みを合わせて進めないといけないのがチグハグになって結果余計に時間が掛かったりということを体験した。
しかし、体験したのは私だけじゃなくってあややクラブの全員だったんだね。
今年はロードマップまで用意できているし、着実にみんながそれぞれの仕事を進めて行っているし、その作業もかなり前倒して進められている。
何より自分の仕事だけじゃなくって仲間の作業を黙って手伝うところまで進んでるのがスゴイ!
「アドルフォ様、教師のドナルド様とガスペール様がお見えです」
皆で盛り上がっている時に、いつも玄関前に立って警備をしてくれている使用人の一人が作戦会議室まで入って来た。
「ん?約束は無いんだが・・・・」
「今年度のイベントについて学園側として話し合いに来られたそうです」
「分かった。じゃあ、俺がそっちへ行ってくる」
「「「いってらっしゃい」」」と、部員が闇王様へ声を掛けているところへ、ドナルド先生とガスペール先生が入って来た。
「おお~!これは凄いな。なんだ?ここは軍の作戦会議室みたいだな」
ドナルド先生は2段のステップを軽々と跨いで私たちの所へ来た。
「ソファーは無いのか?」
ガスペール先生は相変わらず気だるげで、ゆったりと座れるところを探しているみたいだ。
「前触れもなく来られたのはどうしてですか?今、オレがそちらへ行こうとしていたんですけど」
闇王様が少し硬い口調でドナルド先生に詰問すると、「いやぁ、学園長からイベントに関しては教師も話し合いから参加した方が良いと言われ、それならお前らの部室に来るのが早いだろう?なぁ?」と悪びれずに答え、作戦会議室の空いてる椅子に座った。
ガスペール先生は渋々と言った感じで、「俺はソファがいいんだが・・・・」と椅子に座った。




