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週明けの火曜、部室の作戦会議室で闇王様が立ったまま説明を始めた。
「学園側と話し合った結果をみんなに伝える」
そう発せられると作戦会議室で座って居たボブはスックと立ち上がって板書する為に黒板の前にスタンバイした。
「まず、ドッジボール大会、これは今年もやってくれとのこと。一般生徒から学園にいっぱい要望が出ているそうだ。後、保護者に限り観覧をさせたいという話しも出た。これも保護者から学園側に問合せがたくさんあったらしい。但し、鳥人コンテストみたいに一般の人まで園内に入れてしまうと、セキュリティの問題が発生するのであくまで保護者のみとのこと。日程についてはオレたちの出した2月にやるというのでOKだそうだ。金曜であれば1日授業をやめて大会に専念できるとのことだ」
闇王様が早口でする説明に負けず劣らずのスピードでボブが要点を箇条書きで板書していく。
「それと、鳥人コンテストだ。これは学園主催でやらせて欲しいとのこと」
「「えええぇ???」」
アドリエンヌ様とフェリーペから不満の声が上がった。
セシリオ様は何となく予想していたのか、別段感情を表に出す事なく大人しく座って居る。
メグとボブはただ単に驚いているみたいだ。
「鳥人コンテストは大層な額の金が動くことと、怪我などの危険があるので、学生がやるイベントの範疇を超えていると学園は見ているらしい。だが、元々、このイベントを考え実行したのはオレたちなので、学生側で主体となって動くのは我があややクラブとなる」
「え?それはどういう事ですか?」
メグたんの質問は、私もしようと思っていた質問なので、ありがたい。
「つまり、湖使用などのいろんな申請やセキュリティの為の手配、観客への告知、出店との契約うんぬんは学園側が主体でやる。その上で、参加チームの登録や、イベント当日のアナウンスや画像操作はウチのクラブでやる事になった。つまり煩雑な部分が減るので、面白いところだけやれば良いってことになるな」
「「「おおおお!」」」
「実は、ドッジボール大会も鳥人コンテストも、イベント終了後にあややクラブとして報告書を学園側に提出していたんだが、鳥人コンテストに限ってはそれも必要ないということで、オレとしても助かっている」
闇王様って色んな申請だけでなく、報告書まで作成してくれていたんだね。
全然知らなかったよ。
何でも大人になった時、直ぐ仕事に活かせる様に申請手続きとか報告書作成はご実家が奨励されているみたいなんだけど、闇王様としては面倒くさくて嫌だなと思っていたらしい。
特に鳥人コンテストは色んな団体が絡んできていたから大変だったと大げさに顔を顰めながら言うものだから、皆控えめなクスクスという笑いが零れていた。
今回、鳥人コンテストを学園主催でやろうと学園が決断したのは、様々な情報が闇王様の報告書に要領良く纏めてあったため、引き継ぐのが比較的簡単だと思われたのもあるとのこと。
やるなぁ~、闇王様。
今年はヘルマン様もいないしね、彼が担っていた部分を学園側がしてくれるならそれもありがたいね。
「で、先週セシリオが作ってくれたロードマップはそこの掲示板に貼っておくので、それに沿ってみんな作業をする様にしよう。で、今日はそのロードマップの作業分担を決めたいなと思っている。アウレリア、このロードマップ、誰が何を何時やるか分かる様にするって言ってたけど、誰がの部分はどこに書き入れればいんだ?」
「それはですね、この時期を表す棒線のすぐ下に、担当者の名前を書けば分かりやすいと思います。同じ作業でも最初の段階と後の段階では担当者が変わる事もあると思うのでこの方法がベストだと思います」
「お前はぁ~、マジですごいな」
闇王様が例によってこちらをジト目で見てくるけど、私が考え出したのではなく、元々令和の地球にあった物なので、本当にすごいのは最初にそれを考え出した人なんだよね。
まぁ、便利なモノは使わせてもらうのが良いので、躊躇なく使わせてもらうけどね。
しかし、このジト目、どうにかならないかなぁ~。
「アディ、さっきの説明でまだはっきりしていない部分があるんだけど」
「どこ?」
「まず、ドッジボール大会の保護者席はどっち側が用意すべきものなのかとか、鳥人コンテストはあややクラブとしては参加受付と当日の動きだけでいいのか。例えば生徒側が担っていた部分、つまり音楽クラブや乗馬クラブの手配はどちらの担当なのかとかが分からないかなって」
「セシリオの言う通りだな。分かった!学園側にそのまま疑問として投げかけるとあっちの良い様にされてしまうかもしれないので、こっち側から案として提出してみるかぁ」
ふはぁ。セシリオ様、制度とか仕組みが好きなだけあって、さっきの闇王様の説明だけで不明点をちゃっちゃと洗い出すなんて君、すごいよ。
後、闇王様もこっちから案を提示した方がやりやすいとか、誰が教えたんだろう?
やっぱりご実家の教育係とかがそういう事まで教えるのだろうか?
マジ、英才教育やな。
「じゃあ、ドッジボールの保護者席と校医等については学園側が、審判やコート作りなどは運営委員会を通じてあややクラブが、鳥人コンテストの学生のクラブに関してはあややクラブが単独でお願いする権利を、そしてそれに係る心づけなんかは学園が支払うって事で申請してみるよ。誰か反対意見はあるか?」
闇王様がぐるっと皆を見回したけれど、誰も反対意見は無いみたいでダンマリだった。
「よっし!じゃあ、今の案にそって動くから。学園側から何か言って来たら都度ここで報告する。よろしく!」




