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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
天色の章 <前半>
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3

「フェリーペ!それはあっちの台に並べてくれ。タチアナ、実演する物の材料は揃えたか?」

 オスカル先輩、いやいや、もうオスカル部長だな。

 オスカル部長が今日から見学に来るであろう新入生へ対応する様に、部員全員に号令を掛け、総出で備えている所だ。


 ノッケから錬金術クラブ入部を目指している生徒等は昨日の入園初日に見学していて、それにはオスカル部長が対応しているみたいなんだよね。

 で、今日から1週間くらいは、どこのクラブに入るか決めてない生徒や、あんまり錬金術に食指が動いていないけど、一応見ておくか程度の生徒が来る。

 この状況で上手なプレゼンが出来たら一気に部員数が上がる可能性がある。

 そういう事でオスカル部長の力の入れようがスゴイ。


 各クラブの部長たちが新入部員獲得に走るのにはちゃんと理由がある。

 クラブ活動費が学園から支給されるのだが、部の活躍度合いと所属部員数で決まるからだ。

 まぁ、即売会とかもあるので、錬金術クラブは別途部活費を得る手段はあるんだけどね。


 ただ、錬金術は一部の物好きな貴族と平民以外には受けが悪い。

 貴族の目線で見ると、錬金術をやっている人は職人で、職人とは貴族がなるものではないという考えだ。

 自分が欲しいもの、作りたいものを自由に作れるのに、もったいなぁぁい。

 貴族である事で、こういう楽しさを経験する機会を失っちゃってる事に気付いてないんだろうねぇ。


 入口に近い所でタチアナ先輩が実演をし、その奥のテーブルの上に今まで部で作られた目玉商品を並べるのだ。

 タチアナ先輩を手伝う様にオスカル部長から指名されたフェリーペが何かで一杯のいかにも重たそうな箱を右へ左へ運んでいる。

 フェリーペは入学前からオスカル部長と面識があり、気心が知れており、よく使い倒されている。

 クククク。

 いつも一緒にいる私たちだけど、こういう時はボブも含めてススス~っとフェリーペから離れる。


「おい、手伝ってくれよぉ」とか言われるけど、オスカル先輩が頼んだのは私たちじゃなくフェリーペだかんね。

 若い内の苦労は買ってでもせよだからね。

 苦しゅうない、フェリーペ君ちゃっちゃと動きなさい。


 なんて思ってたら、「お前たち二人は以前即売会で作った香水瓶と香水を実演して欲しい」と新部長より厳命が下ったので、メグと二人で古いアロマオイル抽出機を引っ張り出してエッセンス作りをしようとしたのだが、今回は事前に作る計画を立てていなかったので、オイルの材料がない!

 オスカル部長、後輩のご利用は計画的にだよ。

 夏休み前に言ってくれれば、前もって用意出来てたのに・・・・。


 柑橘系は普段から料理に使うので、ウチの温室で作っている。

 寮のメッセンジャーボーイを使えば、なんとかなるとしても、花はどうしよう・・・・。

「メグ、エッセンスオイルの材料をどうしよう。今回は事前に花を植えてないから材料がないよ」

「う~ん、市場で買うしかないのかなぁ」

「この時間だと市場も閉まってるだろうし、売っていても欲しい花があるとは限らないしね。もうそろそろ新入生来るよね。どうしよう」

「そうねぇ。オスカル部長に相談してみようよ」という勇者様の案で、新部長に相談した所、「もうこの際、香水瓶だけで良いから実演して。急に話を振って悪いけど、頑張って」と背中を押されたので、只今絶賛香水瓶の製作中~。


 あれでもと頼んだハウスボーイが急いでウチの店から柑橘類2種類を持って来てくれ、自分のスキルで呼び出したペパーミントオイルをメグが見てない内にさっさとデスクの上に並べた。

 父さんが気をきかせて金木犀の花もハウスボーイに持たせてくれたので、1種類は花のエッセンスオイルがある。

 よかった。

 ハウスボーイには特急料金を支払ったのだけれど、オスカル部長がこれは錬金術クラブの費用だからと手持ちの部費で払ってくれたので、私の懐は痛まなかった。

 あ、でも、柑橘類とか金木犀とかの素材のお金は貰ってないなぁ。

 まぁ、いいか・・・・。


 最悪、エッセンスオイルは見学者が来てから作れば良いから、今は二人である程度の数香水瓶を作っちゃおう。

 蓋のデザイン1種に付き、任意で2色の瓶を作って並べた。

 それだけで色とりどりの瓶がデスクの上に並んで豪華に見える。


 今年は既に初日に入部してくれた平民男子が2人いる。

 二人とも魔法スキルが無いらしく、この1週間で是非とも魔法スキル持ちの新入部員が欲しいそうだ。

 ただ、オスカル新部長が言うには殆ど望みが無いらしい。

 ウチのクラブは平民生徒の入部しか期待できないから元々の分母が少ないものね。


 昨年は本来ならフェリーぺ達2人と、ランビットの3人しか入らないだろうと思われていたところ、フェリーペが私たち女子2名を連れて入部したので、裏でサラサ元部長やオスカル部長に相当褒められたらしい。


「こんにちは。クラブ活動を見学させて下さい」

 下級貴族か大店の子供に見える男子が2人、錬金術クラブの戸を叩いた。

「「「おおお!」」」とみんなの肩に力が入る。

 ここで上手くプレゼンすれば入部してくれるはずっ。


 その二人は真直ぐに勇者と私の所へ来て、「先輩、あややクラブにも入ってらっしゃいますよね」と私たちの実演には目もくれず、あややクラブについて質問をして来た。

「すみません、ここは錬金術クラブですので、質問は錬金術についてのみお願い致します」

 学年は一つ下だが貴族かもしれないし、入園する年齢が一律ではないので実年齢は年上の可能性もあり、ついつい敬語になってしまう。


「ちぇっ」と言いつつ、「あややクラブに入りたいんですよぉ。何とか口を利いてもらえないっすかねぇ」と、しつこく粘られるけど、フェリーペが追い払ってくれた。


「看板を作ろう!」

 このやり取りを見ていたオスカル部長が、『錬金術クラブについて以外の質問は受け付けておりません』とデカデカと書かれた看板を造り、私たちが実演をしているデスクの前に掲げた。

 それでもあややクラブ入部希望者がじゃんじゃん錬金術クラブを訪れた。

 最後には私達2人の実演は中止し、あややクラブの4人は顔が見えない裏方に回された。

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