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 神父様が教壇に立って、みんなの注目を集めた。

「みんな、おはようございます」

「「「おはようございまーす」」」十数人いる年齢がバラバラの子が全員挨拶を返した。

「アウレリア、みんなに挨拶するから一度前に来て」

「はい」

「この子はランディの従妹で、今日から君たちの仲間になったアウレリアだ。さあ、アウレリア、自己紹介をして」

「はい。私は『熊のまどろみ亭』のランディの従妹で、王都から来ました。今日から皆さんとここで一緒に勉強させて頂きます。どうぞよろしくお願いします」

 生徒みんなが拍手してくれた。

 その様子を見ていた神父様が、「アウレリアは敬語もちゃんと話せるんだね。すごいね」と言って褒めてくれた。


 席に戻ると、まずカテキズムの授業となり、聖典の中身について説明を受けた。

 今日は受難の章の第3節で、預言者が時の権力者に追われ、命からがら山へ逃げ延びる所だった。

 すごい!

 神父様の話し方は演劇の様で、登場人物によって声音を変えたり、身振り手振りで臨場感を煽り立てたりしていた。


 小さな劇を見た気分で満足気にしている子供たちに向かって、神父様は手を鳴らし、「はい、ではここからは読み書き計算になるよ。左側の席は文字を覚えるグループ、真ん中の列は足し算と引き算のグループ、右側は乗算のグループに分かれてね。今から黒板に問題を書くから、それぞれ勉強を進めて、分からない事があったら手を挙げてね」と板書を始めた。

 黒板も線で3つに区分されており、それぞれのグループの前に書かれたのが、そのグループの問題ということの様だ。


「では、アウレリア、書き取りと計算のテストをするけど、計算はどこまでを習った?」

「はい。書き取りはもう終わってて、計算は乗算と除算、分数の計算までは終わっています。地理はマンモ大陸と、歴史はオルダル国のみです」

「え?そんなに色々習ったの?」

「いえ、習ったのは書き取りだけで、後は伯爵家の図書館で本を読んで覚えました」

「そ、そうか。文学や詩なんかも読んだの?」

「どれが一般的な教養なのかは分からないので答えづらいのですが、文学は『オルフィス外伝』『あの山に向かって』『カメリアが咲く夜』くらいで、詩はタンジェやガルショくらいしか読んでいません」

 そう答えると、神父様は一瞬「うっ」と言葉に詰まって、「ここで教える事はないんじゃないかなぁ・・・・。貴族の教育ってすごいなぁ」なんて言い始めた。


 折角、知識人である教会の人間に教えてもらえる機会だ。絶対に逃したくない。

「神父様、もし可能であれば、教会所蔵の本を、この時間に読ませて頂ければ嬉しいです。その際、分からない単語や表現があれば、都度質問させてもらえればもっと嬉しいです」

「本かぁ・・・・。持ち出しはダメだけど、この教室内で読むのなら、読ませてあげられる本はあると思うよ」

「嬉しいです」

「分かった。じゃあ、本を取ってくるから待っててね」

「あ、あのぉ。小テストは?」

「いや、いらないだろう。タンジェを読む子供に書き取りのテストは不要だしな。分数って言葉が出る辺りで、計算能力も大体分かったからいいよ」と言って、教会の奥から本を数冊持って来てくれた。

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