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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
天色の章 <前半>
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小さな日用雑貨店へようこそ2 

 スープとサラダとステーキという簡単な料理だが楽しい夕食が終り、あややクラブの面々はゴンスンデの街中にある比較的上等な宿屋へ馬車で戻った。

 御呼ばれなんだから私がしゃしゃり出て豪華な料理なんて作らないよ。

 あくまでメグ母がこの夕食を作るメインの人なので、野菜の皮むきとかそういう下拵えに徹したよ。

 当たり前じゃん。


 さて、みんなが泊まった宿はお貴族様御用達らしく、お部屋にお風呂なんかも付いている豪華な宿だ。

 フェリーペや私は、貴族組が借りた大きな部屋のお付きの人用の小さな部屋に泊まる事にしたのだ。

 所謂地球のホテルのスイートルームの様になっていて、大きな居間と主寝室、小さな使用人用の部屋が1つあるいは2つがこちらの世界のお貴族様用宿らしい。

 それをザ・お貴族様ズの人数分借りているので、この宿屋の3階は私達だけで占拠している形だ。

 

 貴族用の部屋は値段が高いは高いけど、今の(うち)の経済状態なら払えなくもない。

 でも、こんな広い部屋を1人で借りても使い道がない。

 アドリエンヌ様のメイドと私で使用人用の部屋をひとつづつ使うので広さも値段も丁度良いのだ。


「お前らの宿代くらいオレが出すぞ。熊のまどろみ亭の支払いは全部お前が出してくれたんだしな」と闇王様は言ってくれたけど、やっぱり宿代、食事代くらいは自分たちで出さないとね。

 しかもランディん所の宿代なんて、親戚価格だったし、ここの宿の何十分の一くらいしか掛かってないんだしね。

 比べ物にならないよ。


 少額だけど、宿代として私はアドリエンヌ様に、フェリーペは闇王様に、ボブはセシリオ様に支払う事になった。

 支払うと「だから宿代くらい気にしなくていい」と再度闇王が言ってくれたけど、移動の馬車は闇王様とアドリエンヌ様の家の物なので、私達はタダで乗せてもらっているんだしね、せめて宿代くらいは自分たちで出さないと寄生になっちゃう。


 あさってにはメグも一緒に王都へ向かうので、今、メグは家族と一緒の時間を満喫しているはず。

 今日の午後、ハミルがみんなをゴンスンデ観光へ連れて行ってくれたみたいだけど私はまだ観光をしていないから、明日の午後にはメグが皆をあっちこっちへ連れて行ってくれる予定だ。


 午前中は店のお手伝いがあるらしく午後しか時間がとれないと言われ、闇王様はちょっとブルーだったけど、午後は一緒に居られるんだしね、新しいゴンスンデという街を満喫できるんだしね。


**************************

 翌日になり、朝食の席で闇王様が午前中は各自自由時間とし、午後、メグんところにみんなで集まろうと言う事になった。

 時間になって、お店の中は居住区も含め狭いので、邪魔にならない様に店の入り口の脇で待っていたら、みんなが集まって来た。でも、闇王様だけは不在なのだ。

 あまり約束の時間に遅れるのも先方に悪いので、とりあえず今いる人だけで中へ入ろうという事になった。


 メグ父に挨拶すると、闇王様は先に来ていたというか、朝からメグの家に入り浸っていたらしい。

 店の手伝いがあるメグの手伝いをするためと称し、小型店舗の営業をあれこれと興味深く見ていただけらしいけどね。

 二人っきり?の時間を満喫したためか、闇王様はドヤ顔だった。

 本当にはた迷惑なやっちゃ。

 これが恋する乙女ならぬ男子のパワーなのか?

 クラブの部室では別にメグたんにべったりという訳でもないのだが、会えない日数が長すぎたのか?

 分からん・・・・。


 気を取り直して、みんなでゴンスンデの町へ。

 メグ兄も同行してくれた。


 ゴンスンデの町は王都程大きくはないけれど、城壁に囲まれた町で商店も多い。

 正直言って王都では寮で暮らしているので買い物とかあまりした事がない。

 この街の真ん中を十字に走る大通りの両脇は大小の店舗でぎっちり埋まっていて、この世界で初めてのウィンドウショッピングを楽しんだ。


「ファッチョンはやっぱり王都のものでしゅわね」とアドリエンヌ様は言うけど、王都より貴族の数がぐんと少ないこの街で貴族用の衣料品店はそう数が無いのは当たり前だと思うんだよね。

 平民用の被服店の数は多いので、平民にはこっちの方が王都より買い物しやすいかもしれない。


「それにしても魚料理の匂いがすごいなぁ」

 闇王様はあまり魚が好きではないのか、ちょっと顔を顰めている。

「海に近いので、魚料理は多いんですよ」

 メグについて来たハミルさんが丁寧に説明してくれる。

 彼が一緒にいてくれるので、子供だけでは躊躇してしまう様な所へも連れて行ってもらえてとても嬉しい。

 一番嬉しかったのは、市場だ。

 天井だけで壁の無いガランとした建物の中に、小さな店舗がこれでもかと軒を連ねていた。


「このミカンって美味しいのよ。オレンジと違って皮剥きが簡単なの」と、メグが言うと、気を利かせたハミルがミカンを大きな袋いっぱいに購入し、みんなに配ってくれた。


 ウインナーを串に刺し焼いた物を売っている店もあり、これもメグ兄が買ってみんなに一本づつ配ってくれた。

 ザ・貴族ズは歩き食べをするのは初めてらしく、串そのものよりも、その事にキャイキャイ言っていた。

 最初、闇王様のところの執事が止めようとしたんだけど、「平民の子が経験している事なら一度は経験しておきたい」という闇王様の言葉を渋々受け入れた様だった。

 彼はこれまで闇王様へ指図した所を見た事がないので、態々ダメ出しをして来たと言う事は、この歩き食べという行為は貴族としては余程NGだったんだろうなぁ。


 昼も夜も魚料理攻めになっているゴンスンデ滞在。

 闇王様は食事には不満がある様だが、それも明日には終わる。

 いよいよ王都に向けてメグも一緒に出発するのだから。


「しかし、お前んところの魚料理は臭くないのに、どうしてここの魚は違うんだろう?海に近いんだから余程ここの魚の方が新鮮だろうに」なんて言ってたよ。

「フローリストガーデンは別格。あそこの料理は何を食べてもいつも上手い」とボブが小声で言っているのが聞こえ、めっちゃ嬉しくなったよ。

 『いつも』って何時ウチの店に来たんだろう?

 私が招待した1回とは別にウチで食べてくれてたんだろうか?


 翌朝には予定通り、メグも一緒に王都へ向かった。

 メグの家族総出でお見送りしてくれ、メグを労わるご両親と、「僕も王都へ仕事で行く機会があるので、メグに会いに学園の方に顔を出すよ。それではみなさん、気を付けて」と言ったハミルが印象的だった。


 2台の馬車はゴンスンデで雇った冒険者たちに護衛してもらいつつ、田舎道を王都へ向けて直走る。

 大公様から事前に頂いていた宿題を熟すため、私は途中の宿全部の印象をメモるのは忘れない。

 もちろん、途中でポンタ村へも寄るので、温室のチェックをして、またランディやフェリシアの顔を見るのも楽しみ。


 あ~あ、これで夏休みも終わりかぁ~。

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― 新着の感想 ―
一般に貴族は市場にお金を回すのと見栄が重要なんじゃなかったっけ? 宿代くらい出させてあげればいいのに、とおもた 私は逆に闇王とメグ、同クラブの貴族の子は結ばれてもいいと思う メグの方は妾でも、妾だか…
[気になる点] アウレリアはメグと闇王くんを応援してるのでしょうか…貴族の妾にしかなれないと知ってるはずなのに?もしかして忘れてるのかな? [一言] 闇王くんのキャラはおもしろいけどメグの旦那さんには…
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