従妹が戻って来た!1
「アウレリア!おかえりーー!!!」
お貴族様が乗る様な立派な馬車2台の内1台から従妹のアウレリアが降りて来た。
「ランディ!元気だった?」
アウレリアが走って僕に抱き着いた。
ポンポンと背中を軽く叩くと、向こうも同じ様にポンポンと叩いてくれる。
「元気だったよ。王都はどうだった?」
「えっとね、今は父さんたちと一緒に暮らしてるんだけど、えっと、その話の前にお客様を連れて来たので、先にお部屋に案内してもいい?」
「うんうん。事前に手紙で知らせてくれてたお客様だね」
「うん」
二人でワイワイ話していると店の奥から父さんたちが出て来た、
時を同じくして2台あるお貴族様仕様の馬車からゾロゾロと俺くらいの子供が降りて来た。
「「「いらっしゃいませ」」」
父さんをはじめ家の大人全員でみんなを出迎えた。
もちろん俺も一緒に頭を下げたよ。お貴族様の子供たちだもんね。失礼があったら大問題になっちゃうしな。
「ささ、疲れたでしょう。どうぞ奥へ。まずはお部屋にご案内しますね。護衛のみなさんは別の宿に泊まられるんですよね?アウレリアは自分の部屋だから、お家の方だよ」
母ちゃんがアウレリアは俺たちの家へ、その他の子供たちと執事って呼ばれている大人の男の人は宿の部屋へと振り分けたみたいだ。
護衛の冒険者たちはアンディん所の『いもり亭』に泊まるらしい。
「アウレリア、積もる話は後でゆっくり聞かせてくれ。まずは荷物を部屋へ置いたら調理場へ来てくれ」
「はい、マノロ伯父さん」
母ちゃんとアウレリアが宿の2階へ友達を連れて行き、しばらくすると二人だけが降りて来た。
アウレリアはそのまま家の方に行って、しばらくするとエプロンを付けながら調理場へ戻って来た。
「伯父さん、爺さん、お久し振りです。元気でしたか?これ、王都のお土産です」
「おお、おお。元気じゃったぞ。お前も顔色が良いなぁ」
「土産かぁ。ありがとうよ」
爺さんは、久し振りにアウレリアを見る事が出来て、目がちょっとウルっとしている。
父さんは早速もらった包みを開け、中に大量の砂糖が入っているのを見て奇声を上げた。
「さ・砂糖かぁ・・・・。ある所にはあるもんだな」
「アウレリア、土産をありがとうのぅ。それよりも王都でどうやって暮らしてるか教えておくれ」
爺さんは砂糖よりも孫の事が気になるらしい。
「うん。今は食堂をやってて父さんたちと一緒に暮らせる様になったの。でも、学園のある日は寮に入ってるから、家族とは会えないかなぁ。今日、一緒に来たのは学園のお友達なの。みんながいるから寮で暮らしてても寂しくないですよ。あ、それと、この夏休みが終わると、2年生になるんです」
「いっぱい友達がいるんだなぁ」
父さんが感心した様に言う。
「で、料理はどんなモノを出せばいいんだ?さっきのはみんな貴族の子か?」
「ううん。貴族じゃない子も2人だけいるよ。でも、貴族の子はみんな高位貴族だからちょっと気を遣うかもね」
「お前には貴族の友達が出来たんだな・・・・」
父さんが感慨深げにアウレリアの頭を撫でる。
なんか事前に届いた手紙によると、学園の友達とゴンスンデにも行く途中の行き帰りにウチで数泊するけど、帰路は平民の女の子が一人増えるらしい。
この集団、お貴族様率が結構高いよなぁ。
「伯父さん、料理だけど、普通のお客様に出しているのと同じでいいです。ただ、デザートだけ私が作ってもいいですか?」
「おお、いいぞ。何なら料理も作っていいぞ」
「あはははは。お貴族様の女の子がね、お菓子が大好物なの。料理は伯父さんの料理を楽しんでもらいたいから、私はデザートだけ作りますね。あっ!下拵えなんかは何でも手伝うので言って下さいね」
「おう!じゃあ、まず玉ねぎから掃除してもらおうか」
「あんたぁ、着いたばっかりで疲れてるだろうから、少しは遠慮なさいよ」
廊下から調理場へ入って来た母ちゃんが父さんを怒った。
「そうじゃぞ。幼い子をこき使いおって」
爺さんの不服そうな顔と、父さんの情けなさそうな顔が印象的。
「それより、アウレリア。王都の話しを聞かせておくれ」
爺さんが調理場の椅子を二つ並べて座り、隣を叩いてアウレリアを座らせた。
俺があわてて牛乳を温めたモノをコップに入れて渡すと、ニッコリ笑って受け取り、飲んだアウレリアの上唇の上に白い髭が生えた。
温かい物を飲んで、少しホッとしたみたいだ。良かった。
「大公様のお力添えで貴族街の小さな屋敷を買い取って、お庭を楽しめるレストランにしました。お客も貴族が多いんだけど、お金持ちの商人も良く来てくれます。で、父さんが店長で母さんが給仕係、スティーブ伯父さんとトム伯父さんが家族で来てくれて調理場と給仕を助けてくれてるんです」
「おおお!息子たちがみんな同じ所で働いてるってことかぁ。こりゃ、安心じゃ」
「で、お店は貴族の屋敷を改装したので、2階に伯父さん達の家族が、3階に私たち親子が住んでいて、地下にはその他の使用人が住んでいるので大所帯です。最近は仕事が増えたので、通いの使用人も増えました」
「なに?そんな大きな商売をしてるのか?」
父さんが目ん玉ひん剥いて驚いている。
「大きいというよりはお貴族様向けの商売なので、高級を売りにしているって感じです」
「ほぉ~。しかし、俺以外の兄弟が揃った感じかぁ・・・・」
父さんも思う所があるみたいで、唸っている。
「ところで熊のまどろみ亭はどうですか?」
「おお、お前のお陰でパイの売り上げもいいし、天火を使った料理も大人気だ。最近では貴族のお客も増えて、2階に貴族や富豪専用の食事部屋も作ったぞ。もう、食器とかを村長から借りなくても全部揃ってるくらいには儲けさせてもらってる」
「ああ、良かったです」
アウレリアが花が咲いた様な笑顔を振りまいた。
「今夜、みんなと一緒に貴族用の部屋で食事をするのか?」
「はい。でも、料理の準備とか後片付けはお手伝いするので、伯父さんたちの話しはその時聞かせてもらっていいですか?」
「おう、いいぞ」
アウレリアの友達が村を見たいとのことなので、どこへ連れて行こうかな。
小さな村だから、見るところなんてあんまりない。
学校や教会、村役場にセレスティーナ婆の所くらいかな。




