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「大きな声じゃ言えないが、旦那様にはもう子種がないんだと思うぞ」


 あ、そんな大きな声で言っちゃダメだよ。

 執事のオルランドさんに聞かれたら、伯爵に言いつけられるよ。

 料理長のルイージさんが何か発言する度に、いつもハラハラしちゃう。

 悪気がないから大きな声なんだろうけど、時と場所を選ばないんだよね、この人。


 庭師である父さん(ギジェルモ)もそんな事を大きな声で言われて、慌てて周りを見回してる。

 モンテベルデ伯爵の王都館、その調理場には私達3人以外誰もいないので、父さんはちょっとほっとしたみたい。


「これで側室が4人目だぜ。王室かよって感じだよな。それでも子供が出来ないってのはやっぱりな・・・・。ギジェルモもそう思うだろう?」


 うわぁ、ルイージさんのゴシップが止まらないよ。


「ルイージさん、ここには5歳の()がいるんだから、その手の話はちょっと・・・・」

 父さんが慌てて私の頭を撫でる。

「ええ?5歳なら理解できんだろう?」

「いや、家の娘は頭が良くって、多分理解してると思うよ」


 ルイージさんと父さんが二人して私の方を見た。

 実は、理解できてるんだけど、素知らぬフリをした。

 だって大人の四方山話っておもしろいじゃんねぇ。

 ここはフリをしてでも続きを聞きたいよ。


 父さんががっかりした顔を浮かべたのとは対照的に、ルイージさんはニカっという音喩が付いてそうな笑顔を浮かべ、噂話を続けた。

「大丈夫みたいだぞ。でさ、このままだとご長男のヘルマン様は爵位を継げないから、魔法スキル持ちの息子が絶対必要なのにな。どうするんだろうな」

「いやぁ、私には分からんよ。天上人の事は」

「でも、もし、伯爵にスキル持ちの子が生まれなかったら、お従弟様に爵位が移る可能性大だろ?あっちには魔法スキル持ちの子供が2人もいるんだから。爵位を引き継いだら、ご自分の使用人を引き連れて来られるだろうから、俺たちは首になるんじゃないのか?関係ありありだぞ」

「う~~ん。でも、これからご主人様にもお生まれになるかもしれないしね」

「いやぁ、4年前の流行病で旦那様が寝込んで高熱が続いただろ?きっとあの時子種が・・・・」


 微妙な話題になってワクワクしてた所に闖入者が現れた。

 バターブロンドの超絶美人さんだ。

 何を隠そう、私の母さん(レティシア)だ。

「アウレリア、明日の準備があるでしょ。お部屋に戻りなさい」

「はーい。母さん」

「あ。レティシア、私も一緒に行こう。ルイージさん、また夕食の時にでも」

 父さんはよっぽどルイージさんの大声ゴシップから逃れたかったのだろう、チャンスとばかりに話を切り上げた。


「何だい?明日の仕度って」とゴシップ大好きなルイージさんの食指が動いた様だ。

 自分たちをゴシップネタにされるのはご勘弁をとばかりに、父さんも母さんも慌てて私の手を引いて調理場を出た。


 実は、明日、鑑定の儀を受けるのだ。

 この国は奴隷も含めて全ての子供は、5歳になると教会でスキルを授けられるのだ。

 魔法スキルや武術関係のスキルもあるし、裁縫や農作業などの一般的なスキルもある。

 どのスキルを授けられるのかはランダムらしいのだが、貴族には魔法スキル持ちが多い。

 というよりも、魔法スキル持ちでなければ貴族にはなれないのだ。


 だからモンテベルデ伯爵家は今窮地に陥っている。

 正妻との間に生まれた長男は魔法スキルを授からなかった。

 第二夫人、つまり側室の一人との間に生まれた長女も魔法スキルはなかった。

 まぁ、この国の爵位は男性でないと継げないのだが、娘しかいない家では婿を取る事で爵位を繋ぐことはままある。

 でも、それはその娘に魔法スキルがあった場合の事で、そうでない貴族の娘には、ちゃんとした貴族の婿の来手は少ない。

 だから伯爵は正妻の他に4人もの側室を迎えているのだ。

 魔法スキルを持った息子を得るために・・・・。


 父さんたちは、そういった事情を私が理解していないと思ってるみたい。

 5歳児ならそれが当たり前かもしれない。

 でも、私は3歳の頃、前世と前々世の記憶を取り戻した。

 大正と平成の記憶で、どちらの時も私は日本人女性だった。

 だから、大人の話でもちゃんと理解できているのだ。

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