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「イエーイ!これはこのイベント期間中限定の挨拶です。イエーイ!」
「「「イエーイ!」」」
闇王様のイベント開始の挨拶で、「イエーイ!」という挨拶をしましょうという呼び掛けに、学園の生徒や王都の子供たちを中心に即座に「イエーイ!」という反応が返って来た。
闇王様は満足そうに頷いて、開始のスピーチの続きを話し始めた。
「学園のイベントへようこそ!本日の鳥人コンテストは、どれだけゴールの近くまで飛べるかと、どれだけイケてる仮装をしているかを競うイベントです。12組のチームがそれぞれの工夫を凝らした機体や魔法で飛行し、鳥に近づきます。みなさんも参加チームと一緒に楽しんで下さい。それではっ、ここに、第一回鳥人コンテスト開催を宣言しますっ!」
闇王様の開会宣言が終るとものすごい拍手と同時にファンファーレが鳴った。
何人もの観客がファンファーレの音にびっくり、自分たちの後ろにいる音楽クラブの方を振り返った。
これだけの人数が一堂に会すると、拍手や歓声だけで耳が潰れそうな音量になる。
拍手をした観客自らもそれに驚いている様子だ。
闇王様がスタート台から降り、代わりに最初のグループが道具を担いで定位置に着いた。
今回のアナウンスは私とセシリオ様。
解説は風魔法のフント先生だ。
ドッジボールの時に解説をしてもらっているので、そのトークの上手さは折り紙付きだし、何よりも専門が風魔法。飛ぶと言えば風でしょう。
適材適所だよね、フント先生。
「それでは最初のチームです。チーム名は青空チームです。皆さまの正面にあるスクリーンをごらん下さい」と私のアナウンスに合わせて、青空チームの紹介画像が映し出された。
「「「「おおおお!」」」」
闇王様の開会宣言よりも大きな歓声が上がった。
チーム全員の顔と今日の仮装が分かる様な画像になっている。
しかも画像の下部にはチーム名のテロップ入りだ。
映像は、周りを風魔法で無理矢理暗くして見せている事や、そもそも前世の技術にくらべ画像自体が鮮明ではないが、この様に大きな画像を大勢で同時に見る事がなかったこの世界の人にとって、全くの新しい出来事なのだ。
観客が興奮しているのが分かる。
手を伸ばせば観客席の熱気に触れる事が出来そうなくらい、最初の飛行の前から客席は温められていると言える。
「チーム青空は、風魔法が得意な2人組サルサ・マルモトさん、ガルト・デンバーさんが主体となって、美術クラブのダルスさん、実家が大工のパディさんとチームを組みました。魔法主体で飛びたいとのことで木材と布中心の機体にしたとのことです。仮装のテーマは蝶々。みんな袖の部分が蝶々の大きな羽になっていますね~」と、フェリーペとか私たち4人で手分けして行った事前取材と前世のTV番組を参考にチーム紹介をすると、チーム青空のみんながスタート台の上でジャンプし自分たちをアピールしている。
観客席からは飛び跳ねているのは見えるだろうが、誰が誰かなのまでは分からないだろう。
でも大ビジョン板の映像を見れば、どんな人たちがチーム青空なのか分かるので、ノリノリで応援してくれている。
「それではチーム青空のみなさん、用意が出来たら近くのスタッフに知らせて下さい」
そう拡声器で促すと、ガルトがハンググライダーの様な機体にしがみつき、サルサがスタート台の端にいたフェリーペに合図をした。
フェリーペが大きな旗を下に振ると、観覧エリアの後ろにスタンバイしていた音楽クラブが私には懐かしいファンファーレを鳴らした。
その音を合図にガルトがスタート台を蹴った。
「さあ、チーム青空、スタート台を飛び出しました!その名の通り青い空に鳥の様に飛びたてるでしょうか?」と煽る様なアナウンスをすると、観客席が固唾を飲んだのが分かった。
「ドッボーン!」
蝶々の袖が一瞬はためいてガルトは湖に落ちた。