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70話の錬金術クラブの即売会と鳥人コンテストの時期に関する記述を変更しました。
即売会は鳥人コンテストの後とさせて頂きました。
何度も推敲している内に変更を重ね、可成り前に書いた所のチェックが漏れていました。
混乱させてしまい、申し訳ございません。
これに懲りず、引き続き拙作をどうぞよろしくお願い申し上げます。
入場料の徴収は学園側が人出を出してくれた。
というか、学園側の要請で、クリサンテーモの使用人が駆り出された。
子供用の小さな門と背丈関係なく通れる大人用門をくぐらなければ、ロープ等で区割りされている観客エリアまでは行き着けない。
それでなくても出店が山ほど出ているので、出店裏の人が少ない辺りでロープをこっそりくぐったとしても、ぐるりと回らなければ観覧席エリアへ出られない設計なのだ。
しかも、端の店舗から会場入り出来るところには大人の背より高く積み上げられた各店舗の食材が入った木箱があり、それを登らないと会場側へは入れず、そんな事をすれば周りの視線を集める事は必須なので実質無理なのだ。
先生方が言うには、どれくらいの人数が来るのか分からない事と、今朝急遽決まった話で、乗合馬車が臨時便を出す事らしく、当初より多くの人が見込まれるとのこと。それに伴い観覧する人達の整理や警備にかかる費用が増えてしまうので入場料を取るのは正解だとのこと。
警備費用を捻出するべく、あややクラブが考えていた入場料より若干高めに設定しなおしたいくらいだと言われたが、まぁ、予め公表してある値段を変える事は出来ないので、急遽学園側もお店を出して出費に充てるらしい。
大人からの入場料と出店料で、あややクラブは救命ボートを含む警備の費用と、飛ぶためのプラットフォームやスクリーンを設営する大工費用を賄う事になる。
もちろん生徒は入場無料だ。
そして、もし入場料等の総額から経費を差し引いても利益があった場合は、学園側には利益の1/3をお手伝い料として支払う事になっており、残りはあややクラブの活動費になるとの確約を頂いていた。
業者や出店の店主たちとの話し合いの時点から複数の先生を派遣してくれたりしてるからね、学園側もある意味経費が発生しているので当然と言えば当然だね。
出店の出店料は可成りの金額になるので、赤字になる事はないとは思っているのだが、まぁ、採算が取れるかどうかはイベントが終ってみないと分からないよね。
その代わり経費の方が多ければ、学園がその1/3を支払うとの事。
でも、この朝一番な時間でさえ、可成りの人が湖の周りに集まっている。
娯楽の少ないこの世界で子供の駄菓子代くらいでイベントが楽しめるのだ、大人も子供も筵の様な物を手に観覧席エリアに入り、楽しそうにどこに座るかを決めている様だ。
「もし儲けがあったとして、クラブの活動費が増えたら、それは次のイベント費用とおやつの材料費に使いたいと思う」と闇王様から事前に宣言があったので、増えるであろう活動費の使い道は決まっている。
その後すぐ闇王は私の方を見て、「お前、おやつだけでなく料理もできるか?」と聞いて来た。
ん?毎食を部室で食べたいってこと?学食や寮の食堂でなく?
なんて思っていたら、「このイベントが上手くいったら、慰労会をやろう」と言われたので、部室で慰労会をしたいのだなと分かった。
「多少であれば料理も出来ます」
「よし!今日のイベント終了後は全員疲れ切っているだろうから、お前の体調を見ながら別の日にやろう」
「分かりました。来週月曜は錬金術クラブがあるので火曜の夜なんてどうですか?」
「ありがたい。錬金術の方の即売会もあるだろうから忙しいとは思うが、頼むな。皆にはオレの方から伝えておくよ」
気配りが出来る闇王様だ。
今日は土曜の朝。
大方の生徒は昨夜家に帰らず寮で寝て、民族大移動の様に馬車を連ねて湖へ移動している。
もちろん私もだ。
日曜の1日で実家で疲れを癒し、月曜は即売会直前の錬金術クラブ。うん、火曜の夜、妥当だね。
何を作ろうかな~。日曜にでもいろいろ考えよう。
「よっぽど手に入りづらい食材でない限り、月曜の朝にでもクラブの使用人にリストを渡してくれれば、用意はこっちでするぞ」
何時もの通り、闇王様のところの使用人は素早く動いてくれるだろう。
本当によく出来た使用人たちだと思う。
前日から組み立てられていた出店に、どんどんと材料や商品を持ち込んでいる商人に軽く挨拶して、スタート台近くにバラバラに待機していてくれた午前の参加者の出席を確認した。
しかし店主や参加者には私達の仮装を見て、めっちゃ笑われた。
「粋だねぇ」
「かわいい~」
「それ、原始人だよなぁ?クスクス」ってな具合だ。
まぁ、お陰で自分たちもイベントに参加してる感は爆上がりだ。
参加者の飛ぶ順番は前々日に公平にくじ引きをしたので、その順番に並んでもらう。
各チームの紹介画像もその順番に用意されている。
参加者は緊張している者とライバルチーム同士でも和気藹々と話しをしている者がいて、後者はお互いの仮装に笑い声を上げたりしている。
うん、イベントっぽくていいね。
参加者が楽しめないイベントは失敗すると思うしね。
徐々に一般人や生徒に交じって貴族っぽい人たちが使用人に椅子とパラソルを持たせて観覧席の方へ移動しているのが見える。
意外と貴族の人数が多い。
学園の配慮で、大ビジョン板の正面に階段状の席が設けられ、貴族が座らされている。
恐らくだけど、あの席に座ってる人たちは、入場料とは別にお金を払ってるんじゃないかなぁ~。
しかし、あの段状の椅子は前もって用意していないと直ぐには設置できないよね?
学園もがっちりこのイベントで収入を増やす気で、あの手この手で儲ける方法を考えたのかなぁ。
それとも、もしかしたら貴族から貴族用観覧席の設置要請が学園側にあったのかもしれない。
お貴族様って自分たちが快適に過ごす為には金に糸目を付けないし、要望も多そうだしね。
イベント開始の時間になってもまだ続々と観覧者が来ているが、時間になったので始める事にした。
拡声器を通して開会の挨拶をするために闇王様がスタート台の上に立つと、打ち合わせ通り音楽クラブが観覧席の後ろでファンファーレを演奏した。