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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
天色の章 <前半>
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「本日はお忙しい中、お集り頂きありがとうございます。当クラブが主催します鳥人コンテストにご出店を考えていらっしゃるお店の方に集まって頂いた訳ですが、値段交渉とどの様な商品の販売を考えていらっしゃるかというこは、事前の個別聞き取りで大まかに把握させて頂いております」

 ヘルマン様はお貴族様なのに、ここぞと言う時には平民にも尊大な態度ではなく、ちゃんとした言葉遣いが出来る事が今判明した。

 まぁ、普段からどなたにもちゃんと接していらっしゃるけど、自分が貴族と平民の際に位置している不安定さから、平民に殊更強く当るということも考えられたので、ホッとしたのだ。


 最初はこの商人たちとの折衝はフェリーペに頼みたかったんだけど、流石に6歳児には任せられない。

 そこでヘルマン様が対応してくれることになった。

 もちろん学園側からもドナルド先生とマデレーン先生が出席してくれているが、元々が学生たちが発案し運営しているイベントという事で、あややクラブ主体でこの会議は進めさせてくれている。

 二人はこの広い学食の後ろの方に座って様子を見てくれているのだ。

 私たち幼児組はヘルマン様の横で、各商人たちから提出された申請書をリストとして纏めたものを渡したりと、サポートが主体だ。


「出店エリアですが、こちらの地図をご覧ください」

 学生食堂に夕方集まってくれた商店主たちが前方の衝立に張り出された手書きの地図を覗き込む様に見た。


「出店エリアはこの3か所です。それぞれ出店に掛かる料金が違います。ご覧ください。湖のこの辺りでイベントを行います。当然観客はスタート台の辺りと、ゴール地点辺りに集中します。そして、湖のこちら側が馬車の駐車場になります」

 ザワザワと商店主たちが地図を見て、希望の箇所なのだろう、何人かは地図の一部を指さして、他の商人たちを牽制したりする人もいた。


「この地図の赤い線が観客、つまり皆さんにとってのお客様の動線になります」

「動線?」

 ヘルマン様の真ん前に座って居た禿茶瓶のおじさんが聞いて来た。


「動線とは客の動きを線で表したモノです。湖のここら辺に赤い線が無いのは、駐車場からも離れていて、イベントそのものがあまりよく見えないと思われるので、客が行かないであろうエリアと言う事を表しています。で、この赤い線も太いところと細いところがあると思います」

 店主たちは面白い様にヘルマン様の一言一言に一々頷いている。


「太いところがより多くの客が動くと思われる所です。こちらの細いところは、馬車から降りてイベント会場へ行く時と、イベントが終わった後馬車に向かって移動する時しか通らないと思われるので、同じ客が最大2回しか通らないと思います。でも、こちらのイベント会場の後ろでは、小さな広場の様に設営するので、このメイン広場の辺りは飲み物や食べ物を買いたい人は何度か行ったり来たりするものと思います。なので、太い動線のエリアは出展料が高くなり、細いエリアは若干お安めです」

「「「ほぉぉ~」」」


「後、追加の情報が3つあります。地図のここ。緑のエリアは学園の音楽クラブがいるエリアになります。イベント参加者が飛ぶ度に効果音を演奏してくれます。あまり近いと五月蠅く感じられるかもしれません。2つ目は、乗合馬車の会長から当日、王都と湖を何度も往復する乗合馬車を出して下さるとの申し出がありました。料金も若干お安めに設定して下さるそうです。これで、貴族以外の方も気楽にイベントを観る事ができます。つまり皆さんのお客様の数が増えると言う事です」

「「「おおお!」」」


「最後に雨天だった場合の話しです。ここ数年、イベントを開催する時期に雨が降った事はありませんが、もしパラパラと降る程度でしたら客席だけ天幕を用意しております。ただ、皆さんの店舗に関しては皆さんでご用意ください。そして、もしザァザァ降りの場合は、1週間延期します。延期した日も雨が降ったらイベントは中止になります。その場合は出展料は皆さまにちゃんとお返しします。ただ!もう一度言いますが、ここ数年、イベントの時期に雨が降った年はありません」


 ヘルマン様からの説明が終ると、参加希望の全部の店主と一緒に、誰が何の店を出店するかについて話し合いが始まった。

 同じ商品が隣同士にならない様にというのを気を付け、各店主が支払える出展料を比較し、店舗の場所と大きさを割り当てて行った。


 はぁ~。これ、本当に疲れる。

 どの店のオヤジも私利私欲に走っているから、店主同士でつかみ合いの喧嘩になりそうになったことも数回・・・・。

 そんな時は先生方が間に入ってくれた。

 ありがたや~。


 それにしてもヘルマン様が入部してくれて本当に良かった。

 年もこの中では一番上だし、それに体格も良いので、そこら辺の大人と背丈はあまり変わらない。

 お貴族様の跡取りということもあり、店主たちもヘルマン様には礼儀正しく対応してくれている。

 これが平民のフェリーペや私だと目も当てられなかった事だろう。


 あ、そろそろ私は音楽クラブへ行かないと。

 効果音にするファンファーレを指導に行くのだ。

 こっちの音楽は室内楽が主で、大人しい曲が殆どだからね。

 もちろんファンファーレなんてないから、私が口ずさみながら教えるのだ。


「NYへ行きたいかー!」という掛け声のTV番組の勝ち抜け音にするつもりなのだ。

 この世界だとパクってもバレないもんねぇ~。

 おーほほほほほ。


「音楽クラブへ行って来るね。後はよろしくね~」と3人と貴族な部員を残して音楽クラブの部室へと急いだ。

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