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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
天色の章 <前半>
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 2週間前の話だが、今回の錬金術クラブの即売会はあややクラブのイベントとほぼ同時期なので、4人一緒に作ろうということになった。

 最初はボブが細々と考えていた小型の置き時計が案に上がったんだけど、いかんせん部品の種類と数が半端ない。

 私もカッコいい大人な男性がポケットから鎖のついた懐中時計を引っ張り出し、カパっと蓋を開けて時間を確認したりする動作は好きだから、まだこの世界に無い懐中時計を提案してみるのもいいなとは思ったんだけどね。


 そこで、部品の数が少なく、薄利多売で良く売れそうな物という議題が持ち上がった。

 ただ、この会話は錬金術クラブでしていたので、偶々素材を取りに私たちの後ろを通ったランビットが、「ねぇ、小型の時計を作りたいの?」と聞いて来た。

「うん。だけど小さくても時計は時計だから、部品の数が多くて、他の物を作ろうかって話してたんだ」


 フェリーペの説明の中に時計という言葉を聞いてランビットは考え込んだ様だ。

 それでもしばらくすると、「ねぇ、僕は部品を作るための魔力がないけど、魔法陣や設計図を引くのは得意だってみんな知ってるよね?」と私たち4人の顔を見回した。

 もちろん、私達4人は全員頭を縦に振った。


「それでね、部品の魔法陣や設計図は僕が全部描くから、共同で懐中時計を作ってみない?」

「え?お前はそれでいいの?」

 フェリーペはそんなランビット一人に仕事が偏るのは悪いと思った様だ。

「うん。僕も時計を作ってみたかったんだけど、魔力がないから部品そのものを作るわけにもいかないし、かと言って他人に魔力を提供してもらうにも部品の数が多くて気が引けてたんだ。でも、君たちが時計を作りたいのに時間がないって理由で諦めるなら、一番時間のかかる設計図の部分を僕に任せてよ。で、君達は部品だけ作り、最後に5人全員で組立作業をすれば期日までに出来るんじゃないかと思うんだ。どうだい?」

「おおお!俺はその案に賛成!」

「僕も賛成」

 メグや私も賛成し、結局5人で懐中時計を作る事になった。

 その際、小型の置時計ではなく、携帯が簡単な懐中時計を私から提案し、作るのは懐中時計となった。

 完成品の大きさ、もちろん厚みや重さ、蓋のデザインまでランビットに伝えて、早速設計図作りに取り掛かってもらった。


 そこへあややクラブのサクラ活動で忙しいタチアナ先輩も加わり、懐中時計の製作者は全部で6名となった。

 これが2週間前の話しだ。


 今日の錬金術クラブの部室には、いつもの様に先輩たちが作業していたり、ランビットが次回の即売会用の魔法陣や設計図をたくさん作っていたりと賑やかだ。

 もちろん、私やメグもまだまだ魔法陣の練習をしないといけないのだが、まずは次回の即売会の商品を作るためランビットがこの2週間で作った魔法陣や設計図を使って部品作りをしている。

 今はどちらかと言うと錬金術クラブより、明日のあややクラブでの映像投影についてお貴族様4人への根回しの方が重要なので、気持ちはついついそっちへ行ってしまう。


 画像保存機は、明日、ボブん家から搬入してもらう事になっている。

 どこへ搬入してもらうかは最後まで悩んだ。

 比較的道具を扱い慣れている錬金術クラブも候補の一つだったけど、あややクラブの部室へ搬入してもらう事に落ち着いた。

 だって、画像保存機なんて高い道具を錬金術クラブの部室に持ち込めば、先輩たちも含め、みんなでワイワイとあっちこっちの引き出しや蓋を開けて構造を確認しようとするのは目に見えているので、万が一にも保存機が壊れてしまわない様ここへ持ち込むのは止めたのだ。


 一度、搬入先が決まってしまえば、今度はその道具を如何に活用するかに気が向いてしまう。

「この画像板はすぐに画像を写し取れるの?それもと暫く待つ必要があるの?」

 私の頭の中には写真の現像にあたる工程が浮かんでいたので、こんな質問になった。

 最初、ボブはキョトンとしていたが、「保存機にあるボタンを押すと、直ぐに、といっても1秒くらいはかかるかも?それくらいで画像板に画像が焼き付けられるんだよ」と答えてくれた。


「それは、何かの液に浸けたり、ボタンを押す以外の操作は必要ないってこと?」

「うん、そうだね。ボタンを押すだけだよ」

「じゃあ、次の質問なんだけど、ボタンを押して1秒くらい待って蓋を開けて画像板を撮り出して、蓋を閉めたら、すぐに次の画像を撮影できる?」

「うん。できるよ」

 おおおお!地球のカメラより使い易いかもしれない。

 現像の手間が一切ないって事だものね。


「私が考えているのは、観客がイベントを自分の目で直に見つつ、面白い決定的な場面は画像保存機で撮影して、画像板を投影機にすぐに持って行って、大きな白い板に投影しつつ、解説を拡声器でするってことなの」

「「「ん?」」」

 3人は私の言いたい事が良く分からないと言った表情だ。

 もちろん4人共、ランビットが作った設計図で懐中時計の別々の部品を作成しながら話しているのだ。


「えっとね、観客はゴールの近くにいたとしても、或いはスタートの近くにいたとしても、水が掛からない様に少し離れた所から見る事になるし、スタート近くの人はゴール近くの出来事は遠すぎて見えないかもしれないじゃない。だから、スタートの近くと、ゴールの近くにそれぞれ画像保存機を設置して、決定的に綺麗な場面や面白い場面、観るのが楽しくなる様な画像を撮って、すぐに投影機の所まで持って行くの。そうすれば自分たちが近くで見てるのと同じくらいワクワクできるでしょ?」

「「「おおおおお!!!」」」

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