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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
天色の章 <前半>
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「画像か動画を投射する道具ぅ?」

 ボブ父は顎を何度も手で擦りながら思案した後、席を立ち、奥の部屋から大きな道具を持って来た。


「これが画像を撮る道具だが、お前の言う動画とは何か?」

 ボブ父が持って来たのは所謂カメラに近い物で静止画1枚を撮る物だ。

 私が探しているのは画像を記録できる道具だが、より良いのは動画を撮る事が出来る道具だ。


「持って来られた道具は静止画と言って被写体の動きの一瞬を撮ったもので、私の言う動画とは被写体の動きを流れで撮る物です。例えば静止画とはこうやって瞬きしている瞬間の事で、動画とはこうやって目でじっと見ている感じで動く画像とでも言いますか・・・・」

 私は一生懸命説明するが動画がまだこの世界ではないのか、私の説明が悪いのか、なかなか理解してもらえない。


 恐らく動画を撮る道具はないと思うのだが、私の説明をボブ父に理解してもらえないので、あるかどうかすら曖昧な感じだ。

 これは静止画で対応する様に頭を切り替えた方が良いかも知れない。


「この際、動画の事は忘れて頂いて結構です。それより、この道具は景観や被写体を一瞬の映像として記録する物ですよね。ということはこの道具の中に撮った映像が保管されて、好きな時に取り出して見る事ができるってことですよね?」

「そうだ」


 ボブ父は道具の横にあったツマミを捻ってパカっと小さな扉を開けて、中から掌に乗るくらいのスライド状になっている板を取り出した。

「画像は撮影したら直ちにこの画像板にこんな風に加工され、ここに格納される。保管できる画像板は道具によって違うが、安い物でも10枚は格納できるな。高価な物になると30枚とか40枚ってのあるが、ありゃ、平民には手が届かない物だな」


「この10枚の画像板ですが、いっぱいになったらどうするんですか?」

「画像板を保存する専用の箱があるので、それに入れておくと劣化する事なく保存できるぞ。まぁ、劣化しないと言っても数十年単位では劣化はあるんだがな。どっちにしても劣化は微々たるものだ。それに、まっさらな画像板を別途購入できるから新しい画像も撮れるしな。何年もとっておく必要のない画像は、ウチみたいな工房に持ち込めば、手数料はかかるが新しい画像板を買うよりは安くまっさらの画像板に加工できるぞ。まぁ、その場合はその画像板が比較的新しくて付け加える素材の量が少なくすめばだがな」


 ボブ父が手に持っていた画像板を渡してくれた。

 おおおおお!スライド映写機で使っていた様なスライドになってる!

 使える!

 ぜんじ〇先生などの小学生用の科学実験動画で勉強した私に死角はない!

 な~んちゃって。

 でも、前世で牛乳パックで作った映写機、あれに感謝だ。


 だが、まずはこの画像板をどの様に使ってるのか聞かないとね。

「すみません。別の質問になるんですが、この画像版はどうやって見るのですか?」

「こうやって光に向けて見るんだよ」と、ボブ父は目の上にスライドを掲げた。

 ということは、紙に焼き付けたり、壁に投射する訳ではないのね。


「それでは、例えばですけど、画像板の後ろから光を当てて壁に投影するって事はないんですか?」

「投影?なんの事かは分からんな」

「投影は、中に格納されている画像を拡大して白い壁とか布に映し出すという事です」

「映し出す?」

「そうですね・・・・。成功するかどうか分からないけど、ちょっと実験してみてもいいですか?成功すれば投影がどんな事なのか分かってもらえると思うし・・・・。すみません、切り貼りして良い紙の箱とこういった形のレンズを2枚、後、光の強いランプを貸してもらえませんか?」

 私は持参していた紙に凸レンズの絵を描いた。


 ボブの家は工房なのですんなり材料が揃った。

 ちょこちょこっと昔を思い出しながら細工を作って行く。

 セロテープやガムテープというものがないので、二つのレンズをくっつけるところはボブ父にお願いしてこっちの世界の糊の様な物でくっつけてもらい、そのレンズに合わせて紙箱を加工していく。

 レンズとライトの間に貸してもらったスライドを挟む。

 工房事務所の白い壁に映写してみると、「「「「おおおおお!」」」」といつものメンバーだけじゃなくて、ボブ父まで感嘆の声を上げた。


「お前、どうやってこんな事を考え付いた」

 ボブ父の視線が痛い。

「えっと、前からちょっと考えていたんです。みんなで同じ画像を見る方法はないかなって。板の形ならこの方法で画像を大きくできるんじゃないかなって思っていたんです」

 本当は私が思いついたのではないけど、話がややこしくなるから第三者を生贄にする訳にもいかず、心苦しくはあるけど自分が考えた事にした。


「これ!この道具、家の工房で作って売ってもいいか?もちろんアイデア代は出す。噴水の時の様に条件についてはお前の父親と話すが、まずはお前が考えたこの方法を使わせてもらう許可を発案者のお前から得たい」

 ボブ父が乗り出す様にして私に詰め寄った。


 ふふん。これはネゴ案件だね。

 ふぉふぉふぉふぉ。

「分かりました。条件は家の父と話して下さい。ただ一つこちらから条件を更に付けさせてもらえいたいんですけど、よろしいでしょうか?」

「どんな条件だ?」


「ボブが在学している間だけでいいので、この投影機の完成形を1台と画像を撮影する道具を2台、無料であややクラブに貸し出して欲しいんです」

「「「おおお!」」」3人が声を合わせて驚いている。

 そうだよね、闇王様たちにも全然相談せず思いっきり独断で交渉してるからね。

 君たちにも初耳だったしね、ごめんね。


「寄付ではなく貸し出しなんだな」

「はい」

「よし、わかった!貸し出そう。もちろん、貸し出し中に故障したら家で無料で修理もしてやる」

「お、お願いします」


 後はもう、ボブ父に何時頃投影機が完成するかの確認と、とにかく鳥人コンテストまでには間に合わせてもらう事だけ念を押して、今日の工房見学は終わった。


 ホクホク顔のボブ父が工房の前まで見送ってくれ、「鳥人コンテストの事も、ここいらの連中に宣伝しておいてやるよ。家の投影機の宣伝にもなるしな」とニカっと音がしそうな良い笑顔を浮かべていた。

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