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 まだ幼いからと、昼食後は一旦自室でお昼寝タイムとなった。

 昼寝から起きてからは再び野菜の下拵えのオンパレードだった。夕食用の下拵えだ。

 井戸のある裏庭で、空き箱に座ってジャガイモの皮むき、それが終わったら玉ねぎの皮むきを嫌と言う程した。

 もちろん玉ねぎの下拵えはちょっと時間が掛かったんだけど、それでも普通の人が作業するのに比べ、かなり早く終わったらしい。爺さんがベタ褒めしてくれた。


 何故か下拵えがパパッと終わるものだから、トマトの皮むきもと言われたのだが、こちらでのトマトの皮むきってナイフで皮を()ぐんだよね。

 その為にはまずトマトにナイフを入れるのだが、そこのナイフのところだけぐんとトマトの果肉が削られ、そこを起点にぴゅ~って出来るところまで皮をめくる様にして剥ぐのだ。

 自然、トマトの表面は凸凹になってしまう。

 だから「湯剥きしてもいいですか?」と爺さんに聞くと、「なんじゃ?湯剥き?なんじゃそれ?」と言われつつも、調理スキル持ちの言う事だから「やってみろ」という事になり、トマトの湯剥きを披露することとなった。


「儂の孫は天才じゃて!」と爺さんがそのスピードと綺麗な仕上がりを見て涙を流さんばかりに喜んだ。

 5歳児の仕事とは思えないというところが殊の外嬉しかったらしい。

 熊男もびっくりしたのか「たまげたなぁ。こんなに簡単に、しかも綺麗にトマトの皮って剥けるものなのかっ」と素直に褒めてくれた。


 今夜のメニューはスープとステーキなので、肉はお客の顔を見て焼く事になる。

 ウチも一種類の定食だけを提供しているがスープと一緒にメインの料理が付いているタイプだ。

「乗合馬車の駅から3軒目だからな。料理で差を付けないと駅付近の宿に客が流れてしまうからな」と伯父さんが言っていた。


 開店前の今はスープ作りの方を進めている。

 私が下拵えした野菜も、角切りにして欲しいと言われ、パパッと同じ大きさの角切りにすると、そのスピードに驚いた伯父さんと爺さんに、野菜の処理はこれから全て私に任せる事にしようと言い渡された。

 ふふふん♪調理スキルは持ってないんだけど、昔取った杵柄というか前世で取った杵柄なのかな?

 どうしてこんなに簡単に下拵えが出来るのかは私自身にも分からないけど、授かったスキルを有効活用したいという気持ちはある。

 でも、未だにメインだけじゃなくてサブスキルも調理に使ってないので、ちょっとずつでもスキルを試してみたい気持ちが沸きあがって来た。

 そこで、作りかけのスープをまずは鑑定してみる事にした。


『熊のまどろみ亭 本日のスープ

鹿肉、トマト、じゃがいも、玉ねぎ、ニンニクが煮込まれたスープ

味付け前。塩だけよりも胡椒や大葉も入れた方が美味しい』と出た。


 ん?トマトスープなのにニンニクが入ってるの?あれれ?

 あ、でもスペインとかにはニンニクのスープってのもあったはず。

 スープにニンニクを入れるのはめずらしくないのかな?

 あっ!ネギやショウガの代わりの臭いけしなのかな?

 鹿肉ならジビエだしね。うん、きっとそうだ。と、鑑定結果をみて真っ先にニンニクに目が行ってしまったけど、その下の提言みたいな部分が気になった。


 そう言えば、昼間下拵えした井戸の所から、伯母さんが育ててるハーブ畑が見えてて、あそこの脇に雑草の様な扱いで大葉が生えてたなぁ。

 トマトベースのスープなら、当然大葉は合うよね。

 そこで「伯父さん、このスープ、こんなにトマトを入れるなら、大葉を刻んで入れた方が美味しいし、ステーキとの相性も良くなる気がします」と進言してみた。

 こんなに幼くても胡椒は高い事をモンテベルデ伯爵家料理長のルイージさんから聞いた。

 貴族家でもふんだんに使えない調味料を、こんな庶民の食堂で使えるとは思わないので、胡椒については提言しなかった。


 一瞬、伯父さんはムッとした顔になったが、すぐに「貴族の屋敷で賄い料理を食べてたんだ。俺たち庶民には無い味付けを知ってるのかもしれん。少量だけスープを取って、それで試してみるかぁ」と、小鍋に少しだけスープを取ってみて、私が刻んだ大葉を少しと塩を入れて味見をしてみた。

「おおお!これは美味い!お前たちも試してごらん」と、私や爺さんたちも小皿に注いだスープの味見をさせてくれた。


 大葉が入った事で後味がさっぱりし、メインとして付けられるステーキを食べた後に一口飲むだけで、より美味しさが引き立てられそうだった。

 胡椒が入ってなくても十分に美味しいよ!


「よし!今夜は大葉を入れたスープにしよう」との伯父さんの一声で、2つ分の寸胴鍋に入れる大葉を千切りにすることになった。

 もう夕方で薄暗いので作業は調理場でする事になった。


「これは家の常連さんも、大喜びすると思うぞ」と今夜のスープに自信を持った伯父さんはホクホクだ。

 しかも、このホクホクにはそれだけでなく別の理由もあったみたいだ。

 爺さん曰く、大葉は裏庭に自生しているので、いくら使っても懐が痛まないのだそうだ。

 流石!経営者。コストも考えないとね。

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スープににんいくが普通じゃない地球の世界線
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