76
ヘルマン様が考えてくれた要点の他に、全園生徒へのイベント周知をどうするかという点と、参加受付を誰がするかという議題が別途あがり、今、部員で話し合っているところだ。
「今回は委員会を立ち上げなくてもいいんじゃないかと思うんだけど、どう?アディ」
「う~ん。リアが言うところのポスターだけで周知が出来れば問題ないんだけど、学園を離れ態々生徒が湖まで夏休み直前に集まってくれるかどうかが予想できないなぁ。まぁ、とりあえずはポスターかな」
「アドルフォしゃま、学生だけが対象でしゅか?一般の領民は対象外でしゅか?」
「う~ん。アドリエンヌの言う事も考えるべき点ではあるな・・・・」
「湖を使うのなら、まず学園だけでなく国か王都の管理者への使用申請が必要となると思いますし、学園のイベントをするので一般の領民は近寄るなっていう事は難しいと思います。それよりは王都の住民も巻き込んで集客が大規模になればイベントとしては成功ではないかと・・・・」
「ヘルマンの言う事ももっともだな」
闇王様がみんなの意見を聞きながらも、思案顔のままだ。
「集客が大規模に出来るのならば、入園料を取ればいいのでは?入園料で収入があれば、サクラの為の費用も、来年以降のイベントにも流用できるし、ボートやライフセーヴァーを雇うお金も捻出できますしね」
私が世知辛い意見を言うと、「お前って、どうしてこう色んなアイデア、それもイベントの実施について大人の様な意見がどんどん噴出してくんだ?お前の頭の中身を見て見たいよ」と闇王様からお褒め?の言葉を頂いた。
解せぬ。普通の話ししかしてない心算なんだけど・・・・。
「学園や町との折衝はオレがやる。お前たちがしなければならないのは、生徒の参加率を上げて、イベントへの満足感を上げる事だ。で、サクラについてはこれまで通り、ヘルマン、お前に任せる。リアとメグはイベントの告知を担当してくれ。フェリーペとボブには、参加希望者の受付を、アドリエンヌとセシリオには参加者へのフォローや機材や人の手配を頼む。いいな」
「「「「はい!」」」」
「わかったよ、アディ。人や物の手配は貴族の方が何かと融通してもらえるからね」
流石、闇王様だ。ちゃっちゃと独断で話を進めているんだけど、各自の得意分野をさりげなく考慮して、仕事の割り振りをしている様だ。
「じゃあ、メグ、私たちはイベントの周知について方法をあっちで話し合おう」と、声を掛けるとメグは頷いて私に続いてキッチンの方へ入って来た。
他のメンバーもそれぞれのやらないといけないことを一人で、或いは他のメンバーとペアで対処するべく部室内を散らばって行った。
「メグ、今回もポスターを作ろうと思うんだけどどうかな?」
「うんうん。前回ポスターを貼った所と同じ場所と、ドッジボールの委員の人たちにも手渡しして、各教室の目を引く所に貼ってもらうっていうのもいいかも」
「おおお!ナイスアイディーアだ。いいね!」
まだ、開催日とか決まっていないので、場所や日時を書き込む枠だけ白紙のままにし、後は絵を描いていく。
鳥人という意味を知ってもらいたくて、ハンググライダーに乗ってる学生の絵とか、仮装をしている人々のデザインだ。
この国で言う仮装は目の周りだけを隠す美しいお面を被る事だが、私が描いたのは猫とか犬の着ぐるみを着ていたり、この世界では数少ない制服のある職業、兵士の仮装をした人の絵にした。
そのポスター案を見たセシリオ様が、「へぇ。仮装ってそういう感じの事を考えていたんだ。仮面だけじゃなくて、服装まで含むんだね」と、この国の貴族が仮装と聞いてまっさきに思い浮かべるイメージと比較したらしく、ちょっと眉を寄せている。
「綺麗な見た目の仮装ももちろんOKですよ。でも、こういうイベントでの仮装ってどれくらい面白いかが肝なんですよ」
仮装好きなのでついつい説明に力が入ってしまった。えへへへ。
「へぇ、じゃあ実質、実行委員会でもある僕たちも面白仮装したらいいんじゃないかな?その方がお祭り感が爆上がりするんじゃない?」
何て事言うんですかぁぁ。このお貴族様はぁぁぁぁ。
仕事を増やさないで下さい。
そんな事を思っていた頃が私にもありました。
でも、そんな気持ちもウチの勇者様が「セシリオ様、いい案ですね。ワクワクします。私、何に仮装しようかな~」なんて言っちゃったので、それを勇者レーダーを常備している闇王様がキャッチしてしまった!!!
「よし!オレたちも仮装するぞ!セシリオ、良い案だ!」
『チーン』という高い音と、『南無南無』という低い声が同時に聞こえた気がした。
所謂ご愁傷様な状態だ。
これで、めちゃくちゃ作業量が増えてしまった・・・・。
誰?こんな面倒なイベントを推奨したのは。
ううううう。他人に責任を押し付ける事ができない自分に臍を噛んでしまう。
「俺、バナナになる!」
こら!まだ世の中に出して良い情報じゃないのよ。バナナはダメよ。
「オレは魔王かな」
って、闇王様、それ仮装になってませんから。
「あたち、花の精」
「僕は動物系の着ぐるみがいいかも・・・・」
え?セシリオ様が着ぐるみ?それは美味しいかも!
「僕は・・・・冷蔵庫・・・・」
錬金術で作る物ってのがボブらしいね。
「う~ん、僕は何にしよう・・・・リアさんは何にするの?」
そこで私に振りますか、ヘルマン様。それじゃ・・・・、「みんなで原始人!」