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「ミッションコンプリートですっ!」
フェリーペがおやつを食べながらヘルマン様に報告している。
意気揚々と報告しているが、着席したまま、おやつ食べながらなので今一間が抜けてる感じがするのがフェリーペらしいと言えばらしいね。
「タチアナ先輩は確保済で、オスカル先輩は返事をするのに少し時間が欲しいとのことです。でも、一人は確実に確保できましたっ!」
「うんうん、ありがとう。よくやりましたね」とヘルマン様からのお褒めの言葉にフェリーペが照れている。
分かり易い奴だ。
「で、アドルフォ様、ご相談なんですが、サクラのメンバーについては打ち合わせにこの部室を使わせてもらいたいのですが、どうでしょうか?」
ヘルマン様は仕事が早い。
オスカル先輩以外の他のサクラのメンバーからは既にOKを貰っているらしい。
合計4~5人をこの部室に入れる事は、もしかしたら部員から反対を受けちゃうかもしれないので、慎重に闇王様へお伺いをしている最中と言ったところか。
「どうしてウチの部室を使う必要があるのかな?」
「はい。サクラという性格上、我々の指示を外部の人間に聞かれない様にしたいんですよね。表向きの指示等は教室とか学食とかで話しても問題はないというか、反対に周りの生徒を誘導するためにも聞かせたいんですが、肝心な事に関しては外部に出さない方が良い事もあるかと思います。そういう時は部室を使わせてもらえると、憧れの部室にまで呼んでもらっているという事で彼らの協力体制がより強固なものになると思うし、一石二鳥かと」
「ふむ。一理あるな。みんなは部外者を一時的に部室に入れてもいいか?」
闇王様がみんなに聞いたけど、「嫌でちゅわ。部外ちゃを入れるなんて問題外でちゅわ」というアドリエンヌ様以外からは反対の声が上がらなかったので、「では、OKという事で話を進めてくれ」なんていつもの様にアドリエンヌ様をガン無視して話を進めてしまった。
前回のドッジボール大会の委員会は闇王様狙いの女子生徒多数だったからみんな反対したんだけど、今回は厳選された4~5名だから受け入れやすかったのかもしれない。
もしかしたら、自分たちの部室の自慢もしたかったりして?
アドリエンヌ様お一人が反対になっちゃったけど、できれば部外者は入れたくないってのもみんな共通の気持ちでもあると思うんだよね。
それにしても、よく知り合ってみると、アドリエンヌ様って可愛らしいんだよね。
言葉で色々言って来るけど、せっせと毎日ガーデニングをしている所や、美味しい物を食べる時のあどけなさとか、料理を作る者、つまり私への懐き方が可愛いのだ。
闇王様が関わらなければ、実はとても良い子なのではないかな?
彼女が大好きを連発している闇王様、彼にはアドリエンヌ様拒否症とでもいうか、そこまでいかなくても基本彼女のこと苦手なんだろうなぁって言う事はその行動や言葉の端々で見て取れるんだけど、その割にはあややクラブの部員として登録しているので、一緒に居るくらいは許容範囲なのかもしれない。
何か不思議な関係の2人だよね。
兎に角、サクラの人たちは指定された日時だけだけど、この部室の中に入れる様になってしまった。
「あのぉ、1階だけ入室可って出来ますか?」
ボブの遠慮がちな声に、何故かアドリエンヌ様も無言で頷いている。
「そうだよね。俺も2階はプライベートって感じがするからボブの意見に賛成かな」
フェリーペがボブに援護射撃をし、今度はメグも、「2階はお風呂とかもあるし、アドリエンヌ様がお世話して下さっているお花なんかもありますしね。不用意に踏みつけられたりしたら大変ですから」と付け加えた形になった。
「そうだな。じゃあ、1階のみ、指定された日時のみということでサクラのメンバーだけ受け入れる事にしよう」
闇王様の許可が下りたので、ヘルマン様は早速サクラの人たちに伝えに行った。
もちろん、錬金術クラブの方はフェリーペたちが説明する事になった。
次のクラブ活動の日まで待ってもいいのだけれど、早めに知らせた方がオスカル先輩の参加不参加の決定にも響くと思ったのだろう、ボブと一緒にすぐにオスカル先輩を探しに行った。
私は明日、今週の授業が終わって家へ帰る時、フェリーペん所の御者マーレさんへ渡すお礼品のベイクドチーズケーキを作るのに忙しく、あややクラブの部室に残った。今回のサクラについては何もやっていない。すんまそん。
クラブ全員分のホールケーキも焼いたので、全部ラッピングする予定だ。
ヘルマン様が部室に戻って来る頃にはチーズケーキをラッピングし終っていたので、今週末売り出すためのスノーボールクッキーを作っている所だ。
焼くのは水道光熱費を払うので部室で焼いてもいいんだけど、ストレージがあるからお店で焼く事にした。
やっぱり売り物なので出来るだけ他人の褌で相撲を取りたくないしね。
水道光熱費を支払うって言っても使用量に上限を点けずに使い放題での月極めだしね。
そうなるとやっぱ遠慮しちゃうよね。
まぁ、今はせっせといろんな動物の可愛いポーズを作る事に専念しよう。