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即売会を鳥人コンテストの後に書きかえました。
何度も本文を書きかえていて、その際、前のままの文章が残っていた様です。
混乱させてしまい、申し訳ございません。
「今日のおやつに飲茶はありません」
この私の宣言に、闇王とフェリーペの顔付きが一気に暗い物になった。
「しか~し、今日は初めてスノーボールクッキーをお出ししま~す」
私のテンションも今日はちょっぴりおかしい。
何故なら!
生まれて初めてスノーボールクッキーを作ったのだ。
前世の記憶を頼りにスキルで可愛いクマのスノーボールクッキーを呼び出し、スキルで作り方を解析し、スキルで作り出したココア等を駆使して、作りに作った。うさちゃん、くまさん、にゃんこ、わんこの様々なポージングをしたクッキー。はりねずみ君だけはポーズなし。
でも、めっちゃかわゆす。
うつ伏せあり~の、お座りあり~の、お眠あり~の。
エイエイオーポーズが私の今日の推しだ。
「何で飲茶ないの?」なんてボソボソ言っているフェリーペを横目に、大きな白い角皿数枚に並べに並べたスノーボールクッキー。
みんな目がハートになってるよ。
「ちゅ・ちゅてきぃ~。かわいいでしゅわ。きゃ~」
アドリエンヌ様に至ってはもうお嬢様然とした態度は一気に払拭され、自分でもどんな表情を浮かべているのか分からないのだろう。
だらしないと言って良い程、その綺麗な顔が崩れてますよ、お嬢様。
飲茶無しで落ち込んでいた闇王様たちのテンションも上げ上げだ。
「これ、何だ?人形か?」
と言いつつ、クマさんとパンダさんを両手に握りしめている。
そうですか。闇王様はクマ系がお好きっと。メモメモ。
「リア、これすんごく可愛いよ。食べられるの?」
「うん、美味しいよ。是非、食べて」
「うおぉぉぉ。何かチマチマと可愛い」
フェリーペ、それって褒めてるの?チマチマって・・・・。
「あややクラブに入れてもらってから、リアさんの作るおやつにいつも舌鼓を打たせてもらっていますが、本当に美味しいし、見た事も無い物がどんどん出てきますね。家にお住まいの時には全然腕を振るってもらった記憶がないのですが、惜しい事をしました。家に住まわれている時からルイージと一緒に厨房で働いてもらえば良かったです」
ヘルマン様、当時私はまだ5歳になったばかりでしたよ。
流石に使用人契約するには幼すぎです。
まぁ、それは今、6歳でも同じなんだけどね。
なんて思ったけれど、もちろん口には出しませんよ。
闇王様はこの可愛いクッキーが殊の外お気に召した様で、もっと数を作れ。常備しろとのこと。
この後、常備用に作られた可愛いクマちゃんスノーボールクッキーを可愛い紙袋に入れ、普段から持ち歩き、「闇王様がお召し上がりになっているあの可愛いクッキーは何ですの?どこで手に入りますの?」と、追っかけ女子生徒たちの間で話題になるのは、また別の話し。
ボブは無言でハリネズミ君をまじまじと見ている。
なんだろう、ボブとハリネズミ、何か似てる・・・・。
色合いは地味だし、可愛いポーズがなく、ハリネズミ君はうずくまりポーズ一択なのだが、そこがボブっぽい。
「ちあわせですわ。こんなにかわいいのに、こんなにおいちい」
アドリエンヌ様が淹れてくれる美味しいお茶とベストマッチです、アドリエンヌ様。
いつも美味しいお茶をありがとうございます。
みんなで一通りクッキーで盛り上がった所で、鳥人コンテストのサクラの話しになった。
「ヘルマンが言い出しっぺだが、誰か心当たりがあるのか?」
闇王様から暗に候補者を出せと言われている事をヘルマン様はしっかり理解されてる様だ。
「はい。まず錬金術クラブのオスカル、魔術クラブの風属性の2人、スミスとベラドンナ、美術クラブのデラミス辺りはどうでしょうか。道具系は錬金術クラブを外せませんし、魔法は魔術クラブ、仮装に関しては美術クラブでしょう。問題は、錬金術クラブのオスカルですかね。他の3人はお祭りごとが好きなので、サクラの話しをすればすぐにでも協力してくれるでしょうが、オスカルは目立つ事を極力嫌がりますからね。ただ、ウチのクラブには錬金術クラブとの掛け持ちが4名もいますから、彼らの働きに期待したいと思っています」
「オスカルがダメなら部長の何て言ったっけ?あの女子生徒でいいんじゃないか?」
闇王様が言いたいのはサラサ部長の事だと思う。
「サラサ君の事だと思いますが、来年最終学年になるのでいろんな準備があるのではないかと言うことと、このイベントをしようと思っている時期が夏の即売会のすぐ前だと言う事を考えると、錬金術クラブの部長である彼女をサクラとして占有する事が難しいと思います」
「ふむ。では、オスカルを引き入れる様、4人に奮闘してもらう事にしようか」
「「「「うっ!」」」」
私たち4人は全員、言葉に詰まった。
女子生徒にいつも追いかけられている天使のご尊顔、オスカル先輩は目立つ事を毛嫌いしているのだ。
絶対断られるのは目に見えているのだ。
「他の先輩ではダメですか?たとえばタチアナ先輩とか・・・・」
フェリーペ、良く言った!
私以外の2人も無言で頷いている。
「僕としてはどちらでも良いのですが、オスカル君の方が見栄えが良いのでオスカル君を推しているのですが・・・・」
「先輩はこれ以上女子生徒に追い掛けられたら学園を辞めてしまうかもしれません。でも、タチアナ先輩だったら、新しい試みというだけで結構協力してくれると思います。オスカル先輩程ではないですが、タチアナ先輩も容姿は及第点だと思います」
フェリーペ君。タチアナ先輩を及第点って、どこまで採点基準が高いねん!
十分美人さんだよ~。