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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
天色の章 <前半>
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「おっし!お前ら歴史の教科書、21ページを開け!」

 ガスペール先生が本日1時間目の授業を始めた。

 でも、鳥人コンテストの方が気になっているだよね。

 だって、歴史の教科書はもう全部読んで丸暗記しているし、ランミス先生の劇場型授業でもしっかり教えてもらっていたしね。

 娯楽の少ない世界だから、図書室で歴史小説を軒並み借りて読み漁ってるのも、歴史の理解を深めるのに役立ったって思ってる。


 教科書に描かれている無機質な歴史の事件としてではなく、歴史小説の中で主人公や周りを固める脇役たちを血肉を持った人物と感じながら覚えているので、かなり詳細な事まで覚えていると思う。

 もちろん小説は小説なので、事実を記述しているとは限らないし、必ず脚色は入っている。

 でも、物事が起きた背景や日付にあまり嘘はないはずだ。

 何にしても日曜の学校やランミス先生みたいに劇として情報を伝えてくれるこの国の勉強方法は私に合っていると思うので、それを活かした勉強法を考え出してみたのだ。


 観劇は王都であれば劇場があるのでお金さえ払えば見る事が出来るのだが、寮生は普段寮からは出られないので見られない。

 TVとかネット、ニュース番組も無ければ、ドラマや映画もない。

 つまり、友達としゃべったり、読書で小説の世界を想像するくらいしか楽しみが無い。

 あ、いや、カテキズムの授業は面白いよね。

 それでも時間がある時に楽しめるのは本。

 でも、本は高級品なので、いくらでも好きなだけ本を手に入れる事は難しい。


 学園で勉強する利点の一つは図書室の存在だ。

 平民でも学生なら利用できるからね~。

 小説は勉強のための本よりも多く借り出したもんね。くくくく。


 さて、今は歴史の授業よりも、鳥人コンテストだ。

 サクラを用意するというのはどうやればいいのだろう?

 ヘルマン様が言い出しっぺだし手配したりする算段もしてくれる気はするけど、こういうイベントはまず学園側の承認を得ないと始まらないし、けが人が出る可能性もあるから、例によって例の如く校医にも参加要請しないとだしね。

 水に強く打ちつけられると目も当てられない事故になっちゃうから、その辺の安全性もちゃんと考えないとね。

 確かこの世界の救命胴衣は落下スピードを押さえる魔法が付いているってボブが言ってたね。

 それなら安心かな?

 それとは別途に水面下の地形で危なさそうな所がないかどうか、確認しておく必要もあるだろうし、どうすればいいのかな?

 この辺は先生たちに要相談だね。


 このイベントの肝は、解説だと思うんだよね。

 良く飛ぶかどうか科学的な知見があった方が良いので、解説役は生徒ではなく今回も教師の方が良いかもしれない。

 例えば滞空時間を延ばすにはみたいな事は生徒より先生の方が知識があると思うし、それを誰が聞いても分かる様に説明するのは職業柄先生の方が向いていると思う。


 今回はサクラを用意するにしても、そのサクラたちにどうやって情報を流すのだろう?

 そしてどこまでの情報を?

 魔法があるこの世界、飛翔の魔法はあるのかしら?


 一つの事を考えて、直ぐに関連した他の事に気が散って、また元のテーマに戻るみたいに、頭の中はグルグルして何にも答えが出ないまま、あっという間にランチタイムに。

「リア、食堂へ行こう」

 いつもの様にメグが声を掛けてくれ、フェリーペたちとも一緒に4人で学食へ。


 平民クラスの生徒の中には貴族クラスがある前の廊下を通って学食へ行く子も結構いるんだけど、私たち4人は私が貴族クラスを避けているのを理解してくれているので、いつも一旦教室棟を出て、学食の裏口から入る様にしているのだ。


「今日は鶏肉のスープと魚か肉のソテーだな。お前ら何にする?」

「フェリーペは何にするの?」

「俺か?う~ん、やっぱり肉のソテーかな」

「リアは何にするの?」

「う~ん、サーモンかぁ。じゃあ、魚かな。メグは?」

「じゃあ、私も魚にしようかな」

「僕は肉・・・・」


 いつものやり取りでそれぞれの好きなモノを手に平民が食べる調理場近くの席に着いた。

「でさぁ、昨日から俺、気になってしょうがなかったんだけど、サクラってどうやって用意するんだろう?」

「あ、それは僕もすごく気になってる」

「う~ん、実は私もとっても気になってて、今日は授業が全然耳に入って来なかったよ」と言うと、メグも同じだった様で、ウンウンと頷いている。


「思うんだけどね、ヘルマン様に任せておけばある程度進めてくれるんじゃないかなって思ってるの」

「そう言えば、お前はヘルマン様の家の使用人だったんだよな?」

「私と言うよりは両親がだけどね」

「へぇ、フローリストガーデンをやる前は伯爵家の使用人だったんだ。どんな経緯で独立したんだろう。とっても気になるよ」と、無口なボブにしては可成り突っ込んで聞いて来た。


 ボブって物事の仕組みとか因果とかそういう物に興味があるみたいだけど、こういう何がどうなったからこうなった的な話には必ずと言って良い程興味を示すよね。

「ウチの店は、大公様の援助があって建てられたもので、それを機に両親が独立したんだよね」

「そう言えば、リアは大公様の精鋭の一人って聞いた事あったけど、大公様が援助してくれたのはリアの魔法スキルのお陰なのかな?」

 ボブもその情報を入手していたのかぁ・・・・。まぁ、いいか。

「うん。結構珍しいスキルらしいんだけど、大公様から学園でもスキルについて話す事は禁じられてるから、聞かないでね」という、何時もの設定をボブに説明したら、流石にそれ以上は突っ込んでは来なかった。


「元々私は、ポンタ村っていう両親の故郷に預けられていて、そこで大公様にお声を掛けてもらったんだけどね、夏休みはポンタ村にちょっと顔を出してみようと思ってるんだ」

「へぇ~」とフェリーペが相槌を打ってくれたのを横目に、メグに「この夏休みにポンタ村の先にあるゴンスンデも見て見ようと思うんだけど、その時メグん家訪ねてもいい?」と聞いてみた。

「もちのロン!」って、ああた、どこでそんな表現を仕入れたの?勇者様よ・・・・。

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