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アドリエンヌ様はまだ夢心地で何を話し掛けてもリアクションがないので放っておこうと言う事になり、メグと私は闇王様とセシリオ様にお礼を言った。
アドリエンヌ様がこれ程喜んでいるので水を差したくないけど、恐らく闇王様ご自身で調合したのはメグが貰ったのだけだと思うよ。
私たちが貰ったのは、即売会二日目に寄こした使用人とかが作ったのかもしれないよ。
どっちにしても女性用の香水は闇王様とセシリオ様で1つづつしか作ってなかったしね、アドリエンヌ様と私に渡された香水瓶は、お二人が購入した物と違うんだよね~。
「それにしても即売会って面白いのな。次回の時にはあややクラブでも何か作ってみるか?」と、闇王様は乗り気だったが、「それって、錬金術クラブの即売会に4人が行った後に、残った僕たち4人で即売会をするってこと?う~ん、つまり僕たちで客の対応をするって事だよ、アディ」とセシリオ様に言われ、「無いな!」と即答していた闇王様。残念そうである。
もしかして、なんだかんだ言いながらもイベント好き?
そう思ったのは私だけじゃなくって、フェリーペもだったみたいで、「夏休み前か休み明け学年が変わってから、何か新しいイベントでもしますか?」なんて言ったもんだから、闇王様の目がランランと輝いてしまった・・・・。
そうなるともちろんアイデアを出せという皆からの無言の圧は私に集中するわけで・・・・。
「そうですね、前に言ってた巨大迷路とか暑い時期だから水のある所で鳥人コンテストとか?」
「鳥人って何?」メグの素朴な疑問、分かるよ。
前世のTV番組でやってた仮装して飛んでたり、飛距離を競うアレを見た事のある私以外では想像もつかないだろう。
「仮装をして鳥の様に飛んで、その飛行距離を競ったり、奇想天外な仮装の完成度を競う・・・・かな」
「何それ!めっちゃおもしろそうじゃん」
フェリーペが闇王様より先に食いついて来たよ。
そこへいつも冷静なセシリオ様が「で、どうして水がある所が良いのですか?」と割り込んで来た。
「飛距離を競うんですが、人間ですからどうしても着地しちゃうじゃないですか。その時怪我をしない様に、水辺から飛び立ち、水の中に落ちるという動線になるからです」
「風魔法スキル持ちの方が有利じゃないかな?」なんてセシリオ様。
それまで黙っていたボブも「錬金術で作った道具を使えば可成りの距離飛べるかも?道具は使っていいの?」なんて食いついて来た。
「魔法あり、道具あり、仮装ありが面白いと思います!」なんてメグもノって来た。
アドリエンヌ様は未だに闇王様からの香水プレゼントで石化中だ。
ヘルマン様はにこやかに頷いている。
「それをするとして、王都の近くの湖が会場。仮装の準備や飛行の準備も早い内に告知しないとだな。まぁ、夏休み前と言うか、学年が上がる前に開催したいので、今からなら2か月半あるし準備できない訳ではないと思うが・・・・。これは個人参加のみなのか?それともグループ?」
闇王様も乗り気の様だ。
「どちらでも参加OKで良いと思います。道具を使って複数人で飛んでも、一人で飛んでも評価点は2つの側面からのみ。飛距離と仮装の完成度です」
ヘルマン様が怪訝な顔をした。
「飛距離の方は良いとして、仮装の完成度ってどうやって評価するの?」
「複数の審査員の評価点合計です。美しい仮装を好む審査員もいるかもしれないし、おもしろい仮装を好む審査員もいるかもしれません。それでいいんです。例えば5人いる審査員のバラバラの評価を楽しむので良いのではないでしょうか?」
「でも、それだと選ばれなかった人たちは納得しないんじゃないのでは?」
「ヘルマン様。この前のドッジボール大会の時は解説をありがとうございました」
「え?・・・・いや・・・・」
「今回も、解説を入れます」
立ち上がって抗議しそうになったヘルマン様を見て、「あ、いえ、解説役を誰にするかっていうのはまだ決めてなくって、まず、解説を入れる事だけを決めてはどうでしょうか?で、解説役の役目というのは、各審査員が提出した仮装に対する評価を公表するというのが一つ。各選手がどうして長く飛べたのか、そうでなかったのかを技術的な面から解説するのが一つです」
「へぇ。君も色々と考えているんだね。イベントの話を振っただけで、即座にこれだけの事を考え付き、システムとして纏める事ができる才能ってすごいよね」とヘルマン様が意味ありげにこちらに目を向けた。
「うん。お前は役に立つな」と闇王様もご満悦だ。
「とりあえず、この鳥人コンテストやってみたいですね」とメグも身を乗り出す様に賛成の意を示した。
「ということは、僕たちの意向を分かったサクラが数人必要になる気がしますね」と大人なヘルマン様の一言にみんなが「「「ん?」」」となった。
「今までやった事のない、発想すらないイベントです。道具にしても魔法にしても、どんな物があるのかをある程度示さないとあまりにレベルの低い競争ばかりになるかもしれません。そうなるとイベントを見てる人には飽きられると思いますよ。もちろん仮装だってそうです。どんな趣旨でどれくらいのレベルを望んでいるのか、こちらから示す必要があると思います」
一番年上のヘルマン様の意見にみんながなる程~と納得した。
「で、イベントの主催者が見本として作った物を公開するよりも、サクラを用意して我々の意見も交えて、彼らに色々考えてもらう。そして出来た物を他の人たちに見せて、君たちはどうするの?みたいな感じで周りを先導してくれる人達が居れば話が早いと言う事です」
「おおお!ヘルマンが言いたいのは、最低限のレベルを確保するために、予めこちらが出場者の一部を選んでしまおうって事か。お前、やるな~」と闇王様も納得の様だ。
まぁ、鳥人コンテストはやるのは決定みたいだしね。
さて、どんな人選になるんだろう?